夏の風物詩
もうただの日記のように砕けた表現で書こうそうしよう。
というわけで、今回は『小説』としての形はなさせないつもりなのでご了承ください。
はい、冗談ですちゃんと書きますか着ますから許してください。こんな底辺野郎の砕けた書き方を見て誰も喜ぶわけないですよね、ほんとすみません調子乗りました。
走る。
ただひたすらに走る。
どこからかの強い光で堤防に止まった車や人々が照らされる。少し遅れて腹の底に響くような低い音が鳴り響く。
そして、少し遠くから歓声が上がる。
「よし、もうすぐだ!」
そう言いながら、俺は人ごみの中を避けながら走る。
流れる汗を気にせず、自分の鞄が後ろで暴れまわっているのも無視して、俺は走る。
そして、視界が開けたそこは、夜の海。
時間は8時3分を指していた。
どこからか、『何か』を打ち上げる音が聞こえる。空を見ると、赤い小さな点が空高くに昇っていくのが見えた。
そして、その赤い点は減速して……
「ほぅ……」
大きな、とても大きな花を咲かせた。
そして、さっきよりも早い間隔で音が鳴る。
そう、夏の風物詩、花火だ。
今日は地元で花火大会をしているので、見に来たわけだ。
が、地元といっても、自宅から30分ほど自転車を漕いでいかなければならないが。
そんな場所に、俺はひとりで来ていた。
友達は、誘える人は全員誘ったが、返信がなかったり、『今日は無理』とのことだ。
が、どうせ家にいてもやることがないと、遠路はるばる自転車を漕いで、さらに自転車置き場からこうやって走ってきたのだ。
走る速さを次第に遅くし、早歩き程度に落とす。
それと共に、一時的な疲労がきて、俺は肩で息をする。
空では絶え間なく花火が上がり続けている。
それを見上げながら、俺は人ごみの中を歩く。
周りにはカップルや女性グループ、男性グループ、家族連れなどいろいろ来ているが、みんな揃って空を見ていた。
ただ、屋台のおじさんやお兄さん、売り子さん、だけは声を張り上げて客寄せをしていたが、それについては仕方がないと思っておこう。だって、商売だもの。うん、商売だもの。
そんな屋台の一つ、ジュース売り場で、ラムネを見つけたので、買おうと財布を開ける。
そして、ある文字が目に入る。
『ラムネ 200円』
「……お祭りだから、仕方ない」
お祭りは、割り切るべきことが多い。
普通は98円で買えるなんて、ツッコミを入れてはいけない。いけないのだ。
そう思いながらも、俺は渋々100円玉を2枚出した。
さて、田舎の花火大会は、大抵時間が短かったり、ショボかったりする。ここの場合、両方共だったりする。
よって、1時間ほどでお開きになるし、上がる花火の数も、さほど多くはない。
なので、俺はラムネを買って、走ってきた道を横目に花火を見ながらトボトボと戻る。
そして、自転車置き場に戻った時には、時間は8時57分を指していた。
そろそろ終わりかと、遠くでラッシュのように撃ち上がる花火を見て思った。
が、
「『枝垂れ』がないな……」
俺の好きな花火『枝垂れ桜』。
あの黄金色の枝垂れを見ないと、花火大会に来た気がしない。それほどに好きな花火なのだ。
ラッシュが終わり、人が動き出す。
なんか拍子抜けだな……もう少しだけ、待ってみるか?
そんなことを思い、自転車にまたがりながら、花火の上がっていた方を見つめ続ける。
すると、空にまた赤い点が昇っていく。さほど大きくなく、すぐに見失ってしまいそうなほどに小さな点。
その小さな点が点が空に、金色の枝垂れ桜を、満開の枝垂れ桜を空に咲かせた。
それに続くように、闇空には枝垂れ桜が咲き乱れ、周りは夜とは思えないほどに明るくなる。
花火の爆ぜる音がこれまでにないほど連続で響き、闇空のほんの一部が黄金色で塗りつぶされる。
が、そんな時間はいつまでも続くことはなく、最後には、その全てが金色の尾を引きながらゆっくりと落ちて、そしてそのまま消えていった。
時間にすると、ほんの十数秒程度だろう。それでも、俺は満足して、自転車のスタンドを倒した。




