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3年間

 履歴書の、志望動機を埋めるため、我が校では別途にプリントが渡される。

 そこには、自分の受ける会社の概要、自分のことについて。自分と会社の接点等々、記入箇所が何箇所もある。

 それを、クーラーの効いたパソコン室で、求人票や自分の記憶を掘り起こして埋めていたとき、僕は不意に指を止める。


『3年間で、思い出深かったこと』


 思い出深かったこと。要するに、自分がどう感じたかは別として、考えたらふと思い出せることを書け。ということなんだろう。

 文化祭。その言葉が最初に浮かんだ。

 けれど、そこから先、何があったかは思い出せても、どれもこれも色あせて、何かして楽しかった。という記憶しかなかった。

 これといっていいほど、印象深いことがないのだ。

 次に、体育祭という言葉が思い浮かんだ。

 が、これについても同じように印象深いことなどなかった。

 修学旅行も、遠足も、大会で表彰されたことも、どれもこれも楽しくて嬉しくて、けれど印象深いとは言い難くて。

 指を止めていても仕方ないと次の記入欄に移り、また埋め始める。


 それから数分後、埋めれる箇所を埋めきって、また同じ場所を眺めている僕がいた。

「思い出深いこと……か」

 パソコン室には、すでに自分しか残っておらず、その呟きは誰に聞かれることもなく静寂に消えた。

 自分の高校生活の薄っぺらさがよくわかった。平坦さを痛いほど理解した。

 友達と話すことも、大会で表彰されることも、出店で何かを作るのも、どれもこれも等しく楽しかった。

 優劣をつけれない、優柔不断な僕の悪いところが、こんな時になって僕自身を苦しめる。

 頭を抱え、思い出そうとする。

 何かないのか、何もないのか。優劣は、本当にないのか。

 結局、答えなんて出るわけもなかった。

 記入欄に、シャープペンシルの先端を当て、何気なく滑らせる。

 滑らせた部分には線が引かれ、そして、文字を紡ぐ。

 文字が集まり、出来た言葉は、


 『何でもない日常』


 その言葉を書ききってから、僕は自分の顔がにやけるのがわかった。

「確かに、これが自分らしい答えだな……」

 そうやって1人で呟いて、ふぅと息を付く。

 ほんの少し前まで頭を抱えて考え込んでいた自分がひどく滑稽に見えた。

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