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雨上がりの空へ  作者: トランクス
1st STORY
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81/129

20 事件とキッカケー5

「……ったく、バカばっかりなんだから」


「うっ…」


「アンタ達、まだやんの? これ以上暴れるつもりなら、もう一発ずつ喰らわせてあげるけど」


「ど、どうして関係ないお前らが割り込んでくるんだよ。部外者なんだから引っ込んでろよな!」


「はぁ? アンタらが最初に言ったんじゃん。参加したくなったらいつでも参加してくれって」


「それは…」


 横たわる男子達を一瞥しながら土乃が呟く。怯える素振りを微塵も見せずに。


「まさか自分達には逆らう奴なんかいないとでも思ってたの? 自惚れすぎ」


「う、うっせ!」


「アンタ達なんか群れてなきゃ何にも出来ないチキンなんだから。どれだけ見た目や言動で威圧しようが、これっぽっちも怖くないっつうの!」


「調子乗ってんじゃねぇぞ、ブス!」


「あぁ!?」


 理性が飛んだ砂原が唐突に暴言を放出。その行動は火にガソリンを注いでしまった。


「今なんつった、コラァッ!」


「がっ!?」


「もういっぺん言ってみろ、このクズ男!」


「お、おい…」


 激昂した土乃が彼の元に近付く。躊躇いもせず足にローキックを喰らわせて。


「俺を止めに来た奴がどうして俺より暴れまくってんだよ」


「だってコイツがあたしの顔を見てブスって言うから!」


「んな単純な挑発に引っかかんなよ。粋がってるだけに決まってんだろ?」


「だとしても許さない。人に向かってブスとか言う奴は絶対に許さないんだから!」


「いっ、てぇ…」


 金坂が彼女を後ろから羽交い締めに。いつの間にか制止する側とされる側が入れ替わっていた。


「もういいや。今度はそっちが痛い目を見る番だし」


「……は?」


「これまでにアンタ達がしてきた事と全く同じ目に遭わせてあげる」


「な、何…」


「今、このやり取りを見てた皆に質問。火浦さんが教室にいて迷惑だと思った人」


 暴力事件に発展した場に再び空気の変化が訪れる。騒動の中枢にいる女子生徒が唐突な質問を口にした影響で。


「え、え…」


 クラスメート達には明らかな戸惑いが発生。蚊帳の外にいたハズなのに無理やり中に引きずり込まれてしまった。


「いないかな? なら次の質問。本当に悪いのはコイツらだと思う人」


 土乃が間を空けて再び手を上げる。問い掛けの内容を変えながら。


 同意だと思う人は手を上げろと主張したいらしい。それはどこからどう見ても多数決だった。


「ん…」


 何故こんな真似事を始めたのかは分からないが自分もすぐに挙手。少し意外だったが彼女の隣にいた金坂も。そして周りを見るともっと意外な人物がすぐ横で手を上げていた。


「……え」


 小柄の男子生徒が目を閉じて俯いている。体を僅かに震わせながら。


「や、やっぱりこんなのはおかしいよ。人の嫌がる事をして泣かせるとか」


「木島…」


「意見が食い違うなら話し合いで解決すれば良いのに」


「おい、チビ!」


「それに火浦さんは何も悪い事をしてないと思う。だったらこのクラスから追い出そうとするのは変だよ」


「なに勝手にベラベラ喋ってんだ。調子乗ってんじゃねぇぞ、キモオタ!」


 続けて掠れた声で喋り始めた。自らの意思を訴えかけるように。


「あと皆に言わなくちゃいけない事があって」


「あぁ!?」


「黒板にあんな酷い事を書いたのは僕です。砂原くんに命令されてやりました」


「おまっ…」


「そして火浦さんの生徒手帳を拾ったのも僕です。それを日向さんの机の中に入れました」


「お、おい!」


「彼女達は何も悪くありません、悪いのは僕です。本当にごめんなさい!」


 砂原が妨害しようと罵声を浴びせてくる。しかしその声を無視して発言を続行。椅子から立ち上がると謝罪の言葉と共に深く頭を下げた。


「んっ…」


 姿勢が不自然でぎこちない。態度も仕草も。それは人見知りの人間が精一杯の勇気を振り絞って取った行動だった。


「お前……どうしたんだよ、急に」


「いや、皆を見てたら僕も何かしなくちゃいけないと思って」


「それで自分のした事を暴露したの?」


「か、かな? ただずっと火浦さんと日向さんには謝らなくちゃとは思ってたから」


「そっか…」


 沈黙した場で彼に話しかける。どうやら以前にした説得が通じていたらしい。


「これで分かっただろ! 今回のトラブルの元凶はそこにいる大バカ野郎だよ!」


「あ?」


「コイツらが悪いと思ってる人は手を上げてくれ。今の行動を見て間違えてると感じたなら一緒に反論してやろう」


「おい、コラ!」


「怖くて行動出来ないかもしれないけど、その考え方をしてちゃダメだ。今のうちに何とかしないと次は誰かが同じような目に遭わされるかもしれないんだぞ?」


「テメェも調子乗んな、留年野郎!」


「全員で刃向かったらこんな奴ら怖くねーし。残りのクラスメートの方が何倍も人数いるんだからよ!」


 右手を頭上に移動。目立つように掲げながら熱弁を振るった。


 今ならこの状況を変えられるかもしれない。立て続けに援軍の現れた今なら。


「ほら、皆も手を上げて!」


 土乃が周りに目配せする。普段から親しくしている女子生徒達に向かって。


「オメェも上げろし!」


「いって!?」


 続けて金坂が1人の男子生徒の元に接近。後ろに回り込んで乱暴に椅子をキックした。


 それは彼と唯一仲の良いクラスメート。以前に佐原さんの情報を教えてくれたモブ男くんだった。


「分かったってば。まったく…」


 しぶしぶながら手を上げてくれる。どうやら微妙な上下関係が作られているらしい。


「……え」


 そこより少し前の席にいた女子生徒の存在を認識。今までの出来事を泣きそうな表情で見ていた日向さんと目が合った。


「んっ…」


 彼女にもアイコンタクトを送る。同じ行動をとるようにとのサインを。


 そのメッセージが届いたのか恐る恐る手を移動。震えながらも多数決に参加してくれた。


「お、おい…」


 更にその意志は別の人物達にも伝わる事に。クラス委員をはじめ、騒動を眺めていただけの生徒達が次々に挙手。


 立ち上がった砂原が声を出すが手遅れ。気付けばクラスの過半数が質問の肯定派になっていた。

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