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雨上がりの空へ  作者: トランクス
1st STORY
30/129

9 積極的と消極的ー1

「体調はどう? もう治った?」


「あ、はい。昨日も一昨日も休んでしまってすいませんでした」


 朝のホームルーム前の自由時間、1人で席に座っていた人物に話しかける。3日ぶりに登校してきた友人に。


「風邪引いたの? それか違う病気とか」


「昔から体が弱くて学校を休みがちでして……だから風邪を引いたとかそういう訳ではないんです」


「ふ~ん、そうなんだ。重たい病気?」


「ち、違います。もしそうなら学校に来てないですし」


「そうだよね。命に関わる病気なら今頃ベッドの上にいるハズだもん」


「あはは…」


 まだ登校してきている生徒は少ない。自分達を含めても一桁しかいなかった。


「もう大丈夫なんだよね? 完全復活って事?」


「それは分からないです。自分でも体調が悪くなるタイミングが把握出来なくて」


「なら早退する可能性もあるわけか。気分悪くなったら先生でも周りの奴でも良いからすぐに言いなよ」


「はい、ありがとうございます」


「あ~あ、愛莉が帰るなら俺も帰っちゃおうかなぁ。保健室に連れて行くフリしてそのままバックれるかも」


「えぇ…」


 すぐ隣の窓から暖かい風が流れ込んでくる。春を感じさせるどこか懐かしい匂いが。


 不快感が無い過ごしやすい気候。花粉さえ飛んでいなければ最高の散歩日和だった。


「やほやほ~」


「ん?」


 リラックスしていると背後から声が飛んでくる。陽気で遠慮のない甲高い声が。


「何してんの?」


「春を感じながら黄昏てる。分かりやすく言うと何もしてない」


「どんな趣味? 水瀬くん、お爺ちゃんみたい」


「お前より年上なんだから仕方ないじゃん。お年寄りは大切に扱えよ」


「1個違いのクセに何言ってんだか」


 その正体は親しくなったばかりの女子生徒。彼女は相変わらず謙遜という言葉を知らなかった。


「……あ」


「お?」


 会話中に場の空気が変化する。人数が1人追加された事によって。


「こいつ、知ってる?」


「え?」


「このクラスの奴。土乃っていうらしいんだけど」


「それはもちろん存じ上げてます。同じ教室で過ごしているクラスメートですし」


 互いの存在に気付いた女子2人がそれぞれ相手を凝視。微妙な緊張感が生まれていた。


「そかそか。愛莉が欠席してる間、ずっとこのツチノコにオモチャにされててよ」


「ちょ、ちょっと」


「昼休みも放課後もストーカーみたいに付きまとってきてさ。大変だったんだぜ」


「変な呼び方しないでよ!」


「きっと尾行癖とかあるんだろうな。危ない奴だ」


 紹介しなからネタでからかう。本人から飛んでくる苦情は無視して。


「ツチノコってのはコイツのアダ名ね。名字と名前をくっつけて読むとそうなるんだよ」


「は、はぁ…」


「本人が是非そう呼んでくださいって頭下げてくるから仕方なく乗っかってあげてるんだよね」


「……そうなんですか」


「うむ」


 知り合いが増えた事で気分はハイに。夜更かしの影響で発生していた眠気なんかどこかへと吹き飛んでいた。


「くっ…」


「あっ、おい」


 今度は逆の紹介をしようとするがその前に土乃が立ち去ってしまう。歩いてきたばかりの廊下へと。


「……いけね。やりすぎたか」


 どうやら調子に乗ってしまったらしい。眉を吊り上げ明らかに怒っていた。


「で、出て行ってしまいましたね…」


「そだな」


 人数が減った事で再び2人きりの状況に逆戻り。当然の事ながら場の空気は気まずかった。


「まぁ変な性格だけど基本いい奴だとは思うんだ。知り合って2日しか経ってないけど」


「お知り合いになったんですか? 土乃さんと」


「愛莉が学校来てない間にね。教室で1人で暇そうにしてたらアイツが声かけてきてくれたんだ」


「そうなんですか。優しい方なんですね、土乃さん」


「最初、絶対からかわれてると思ってさ。だって嫌われ者の俺に進んで近付いてくるんだもん。怪しすぎじゃん」


「じ、自分で自分を嫌われ者というのはやめた方が…」


 口には出さないが彼女にはそれなりに感謝していた。周りから避けられる疎外感を軽減させてくれたので。


 あるか無いかでは大きく違う。人の繋がりの大切さを改めて噛み締める事が出来た。

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