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二章 6話 倶楽部

「今日からあなたの教育係になりました。キルディス・ブラウンです」


 そう言ってレナに挨拶をしたのは長身で黒髪のすらりとした男性だった。

 マスターにレナの強さを調べるからとカプセルのようなものに入ってから目覚めたら彼が挨拶をしてくれたのである。

 マスターはどこなのかときょろきょろしてみるが、レナを助けてくれたリアンはいない。


「今日から学校がはじまりましたので、マスターは不在です。

本来英霊は、術者の魔力を常時吸うため英霊石にしまうのが習わしのようですが、貴方のバフで常に魔力が回復するため、貴方を英霊石にしまう必要もないため、マスターが不在の間は私が貴方の教育をすることになりました」


 そう言ってにっこり笑う。


 ……教育ってなんだろう。

 そう思うが、マスターがレナのことをキルディスに預けたということは、キルディスの命がマスターの命といってもいい。ちゃんと言う事を聞かないと。


 レナがこくりと頷くと、キルディスは嬉しそうに笑い、レナの手をとり別室に案内する。


「まず一番大切な事は、貴方の好みの食べ物を教えてください」


 そう言ってにっこりと笑って指さした先にあったのは、広い机の上に所狭しとおかれたお菓子だった。



★★★


「おい、これどういうことだよ」


 教室で、有力貴族の生徒たちにワイワイ囲まれている弟を眺めつつ、俺が隣の席のカルナに問う。俺も弟のファティスもカルナも成績上位のSクラスなのだが、なぜか教室につくと、貴族に「僕たちの倶楽部に入らないか」とモテモテだった。弟のファティスが。この世界の倶楽部とは、倶楽部とは名ばかりで活動はほとんどしておらず、ぶっちゃけ貴族の派閥グループと言っていい。

 グルドを倒したことで双子はグルドを凌ぐダンジョン攻略の期待の新人という期待値が爆上がりしたらしい。けれどなぜか爆上がりしたのは弟だった。俺はC級英霊をもってしまったおバカキャラとして見向きもされないのだ。


「え、俺と弟、同じ成績なのにひどくね?」


 学生のうちから貴族の派閥グループに入れておこうという動きがあるのは知っていた。

 もちろん優秀な人材を若いうちから確保しておくのは全く問題ない。

 問題は俺が無視される事だ。

 もちろん誘われても入る気はないが、声をかけられないというのもそれはそれでムカつくものがある。


「永劫のダンジョンは物理攻撃無効、英霊の力しか通じないエリアある。それ考えると打倒」


 俺がふてくされて自分の机に肘をつきながら言うと、隣の席のカルナがすかさず突っ込む。


「確かに硬質化の物体をあてただけじゃ物理判定だけどさ。そんなの工夫次第でなんとかなるし、硬質化で通路をふさいで敵を一匹ずつ各戸撃破とかできるぞ!?要塞とかも作れるぞ!?パーティーにいれておけばメリットしかない。可能性は無限大なのにこの扱いは納得できない」


「皆が皆、兄さんがそのレベルの戦いが出来る事を想定してないのですよ。兄さんは自分が規格外だということを考慮にいれるべきです」


 チャイムが鳴り、ファティスの周りにいる生徒たちが散ったあと、ファティスが自分の席に戻ってきて俺に言う。


「いや、でも普通に想像つくだろ!?俺、超有能なのに無視とあるか!?」


 俺が右隣のファティスに言うと、左隣のカルナがやれやれとノートを広げながら


「純粋に性格の問題。リオン話通じる相手だと思われてない」


 と、核心をついた事を言ってくる。


 ぐっ。やばいそこは反論できないのがきつい。


「なるほど。それを言われたら反論はできないな」


 教師が教壇に立ったのを見ながら俺が言うと「自覚はちゃんとあるんですね」とファティスが睨んでくる。


「ふ。自覚はある。治す気がないだけだ」


 俺が言うと隣の弟がペンを持つ手に力を入れすぎて、ベキッとペンを真っ二つに割っているが、気づかないふりをする。

 俺は知っている。これはわりとマジで怒る二段階前だ。

 こういうとき突っ込むと火に油をそそぐだけなので無視にかぎる。


「ファティス、純粋。12年たってもリオンわかってない。心、無にして接する。これが正解」


 カルナがさらっと髪をかき上げて言う。


「……善処します」

 

 むぐぐと、震えながらいうファティス。

 心の中で「おぅ、がんばれ!」と声をかけて、俺はスルーした。




「レナの奴大丈夫かな?」


 俺が授業中、ぽつりとつぶやくと隣にいた弟がノートを書く手をとめ、俺をジト目で睨んでくる。


「彼女はキルディスが見ているから心配ありません。それよりも兄さんは自分の心配をしてください。もう少しで昼休みなりますよ。誰かさんのせいでまた勧誘の生徒が多数おしかけてきます」


 小声で弟が俺につぶやいた。


「……チャイムが鳴ったら、そのまま校庭裏に避難。そこでお弁当」


 カルナがパタンと教科書を閉じる。


「おう!ダッシュだな!任せろ!」


 俺が教科書に顔を隠しながらにんまりして言うと、


「そこの三人。授業が終わったらちょっといいかしら?」


 と、魔道具担当に教員。この間の勝負に立ち会った女教師セテリアに教科書を奪われにっこりと呼び止められた。


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