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幻葬記  作者: ことは
第16話:神影の者
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神影の者 ~こぼれ話~

 神景要の屋敷に訪れたその日の夜、客間では宴が開かれていた。

 参加者は屋敷の主、要、彼の側近である紗也夏。そして……。


「さ、悠夜。この日本酒もとても美味しいので遠慮せず飲んでください」

 

 そう言って紗也夏は切子のグラスになみなみと満タンに酒を注ぐ。悠夜の顔が引きつる。

「……お二人とも、なかなかのハイペースですね」

 もっとゆっくり飲めないのか、と暗に言ってみる。すでにビール、焼酎、ウイスキーを飲み、ただ今日本酒の一升瓶を開けたところだ。畳の上は空になった酒ビンの無法地帯となっている。

「トモはまだ酒の味が分からないし、いつもは紗也夏と飲んでいるんだが、たまに客と飲むと進むものだな」

 要は機嫌よく、紗也夏もにこにこ笑っている。そして二人ともよく飲む。要もそして悠夜も胡坐(あぐら)をかいて座っているが、紗也夏は着物を着崩すことなく綺麗に正座して座っている。

酒を大量に接収していてもその気品を失うことはない。なので一緒に飲む方が、まだそんなに飲んでいないのだろうか? と一瞬錯覚してしまいそうになる。

「仄も寝てしまいましたしね」

「そういえば飲めるのか? 仄は」

「……いえ、全く」

 グラスを煽りながら尋ねる要に悠夜は首を横に振る。未成年に勧めないでほしい。悪い大人がいるものだ。悠夜はやれやれと、紗也夏に注いでもらった日本酒を一口飲む。

「あ……」

 美味い。そう思った。

「美味しいですか?」

 悠夜の反応に紗也夏がすぐに気づく。悠夜は「はい」と頷いた。

「辛口で飲みやすいな」

 要も気に入ったようだ。

「では捷様のところへ差し入れをしましょう。きっと志織も喜んでくれます」

「すみません。ありがとうございます」

 志織と紗也夏は仲が良く、よく連絡を取り合っているそうだ。捷も志織も酒は好きなので喜ぶだろう。悠夜は礼儀正しく礼を言うと、紗也夏が小首を傾げる。

「悠夜はどこまでも真面目ですね。酔うことはないのですか?」

「おまえは強そうだな」

 素面(しらふ)なままの二人に言われてもと悠夜は苦笑する。

「けっこう酔ってますよ」

「そうか? いつもと変わらないぞ」

「ええ、本当に」

 いつもと変わらないのはあなた達の方だ。と言いたいが、本当に酔いが回ってきている。気を抜くと一気に潰れそうだ。

「もっと酔ったら変わるでしょうか」

「試してみるか」

 ……大人たちが良くない話をし始めた。まだ飲むのか。そろそろ勘弁してほしい。悠夜は自分の体と頭が熱くなってきたのを感じる。さすがに断ろうとした時、


「悠夜、私に勝てたら捷の秘密を教えてやる」


 要の言葉に意識が堕ちかけた悠夜の目が光った。捷の秘密? なんだ、それは? ……ものすごく気になる。

「どうする?」

 挑むような笑みを浮かべる要に悠夜の闘争心に火がついた。

「やります」

 すでに目は座っている悠夜は意気込みよろしく要からの勝負を受け入れた。望むところだ。やってやる。 アルコールが回った悠夜はすでに正常な判断ができなくなっていた。

「では取りあえず、この一升瓶を開けた後は、ワインにしましょう。いいものを取り寄せたんです。わたしもつき合います」

 語尾にハートマークをつけているように言いながら紗也夏も参戦してきた。

 悠夜はすでに本気だが、要と紗也夏は余裕の笑みを浮かべてまだまだ余裕のようだ。

 

 こうして捷の秘密をかけた勝負は深夜まで及んだ――――……。


end.


☆お酒はハタチになってから☆

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