僕の言うことを聞けますね?
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本部に戻った捷は全員が揃ったスタッフルームで今回の経緯を話し始めた。
「廃墟ビルの件はお疲れさまでした。詳しいことは将護と陽絽から聞いています。君たちが廃墟ビルに向かっている間、僕は『本家』に呼ばれてそちらへ行っていたわけですが」
そこで捷は一旦言葉を切り、全員を見渡す。そして言葉を繋ぐ。
「要件は『術者狩り』が起きているというものでした」
一同の顔に緊張が走る。常に『狩る』立場だった自分達が逆に『狩られる』立場になっているというのか。
「この数か月で『神影』の術者が数名、襲われています」
事実のみを伝える。
「……崇王の仕業ですか」
低い声で口を開いたのは悠夜だった。捷が視線を向ける。
「そうですね。今回の廃墟ビルの一件と同様に、この『術者狩り』も崇王が絡んでいる可能性が高いと思います」
「それで? 『神景一族』の皆さんはどんな結論を出したの?」
多少トゲのある表現で志織が先を促した。捷は苦笑する。
「はい。『本家』で出た結論としましては、『神影』同士が組むことになりました」
途端にスタッフルームの空気が重くなる。とても嫌な空気だ。
「ほらみろ。どうすんだよ、捷」
想像していた展開に、テーブルに片肘をつきながら陽絽は捷を見る。
「うーん。そうですねー」
捷は眉を下げながら言葉を紡ぐ。
「ですが、個々の組織で動くより、全体で情報の共有をした方が相手の狙いも早く分かるかもしれませんよ」
捷の言うことも一理ある。ある、が……。
「もう一つ。通常の仕事を投げ出すわけにはいきませんので、まずは各組織の代表に組んでもらって様子をみようということになりました」
代表。確かに妖影を封印する仕事もこなさなければならない。全員参加は無理だ。
「代表とは何名くらいでしょうか?」
由姫が必要な人員を確認する。
「そうですね。とりあえず、一人か二人くらいですね。事が進めば増える可能性もあります」
ケース・バイ・ケースということか。
「俺、行きたいです」
悠夜が一番に名乗りをあげた。捷は想定済みだったのか、にこりと笑顔を見せた。
「言うと思いました。いいですよ。――――誰か他にいますか?」
捷はゆっくり見渡すが、手を上げる者はいなかった。捷は頷く。
「わかりました。では今回、ウチからは悠夜を出します。他の人達は悠夜の分の仕事のフォローをお願いしますね」
今度は残りの術者達が了承の頷きをした。
「特に陽絽、忙しくなりますよ」
「まっかせろー」
悠夜に回ってくる仕事は危険なものが多い。必然的に同じ内容の仕事をこなす陽絽へ回ってくる事となる。しかし、当の陽絽はけろっとした顔だ。
「……ごめん。陽絽」
悠夜がすまなそうに謝った。
「謝んなって。他の術者と組むより、よっぽどラクだからな」
そう言って、にかっと笑う。
「悠夜、暫くは将護を本部に置いておきますから、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
ボスの言葉に、悠夜は幾分ほっとした表情になった。
「それでは、伝えたいことは以上です。今日はもう遅いので近くのホテルに泊まって下さい。これからは外を歩く時は少し周りに注意して下さいね。もし不安な人がいれば本部の近くの部屋を借りられるよう手配しますから、言って下さい」
捷の解散の合図に各々が動き始めた。陽絽は今後の打ち合わせを将護と話し出し、女性陣は出していたコーヒーカップを片づけ始めた。
「悠夜、仄」
ボスに呼ばれ、二人は彼を見る。
「少し、話をしましょうか」
そう言って笑顔を浮かべながら捷は二人を執務室へと促した――――。
執務室のソファに座ると捷は仄を見据えた。
「体調はどうですか、仄」
「……大丈夫です。あの、捷さん」
仄は言いにくそうに口ごもる。
「どうしました?」
「わたしの『護り』、解いてもらってもいいですか? その……うまく力が使えなくて……」
しどろもどろながらも懇願する仄。しかし、捷はあっさり却下した。
「駄目です」
「……」
「僕がかけた『護り』の力は君の防御力を上げることと、君の力が暴走しないように制御することの二つを担っています」
「……暴走」
仄は『暴走』の言葉に表情を強ばらせた。仄の隣に座る悠夜は黙ったまま視線だけ向ける。
「仄の力は限界が分からないんです。そして、強すぎる力は必ず術者の体に返ってくる。君にその力を受け止めるのはまだ無理です」
「……」
「僕の言うことを聞けますね?」
言い聞かせるように言われ、仄は何も言えなくなってしまった。自分を守るためだというのは分かってはいるのだ。……小さく頷いた。それを見て捷は穏やかに笑う。
「さて」
一呼吸置くと、次に悠夜を見る。
「悠夜、君には要さんの所へ行ってもらいます」
「要さん?」
悠夜はボスの言葉を反復した。




