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幻葬記  作者: ことは
第12話:影を操る者
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47/74

あんな生意気そうなガキ知るかよ

※※

 

 外はまもなく日が暮れようとしていた。


 陽絽と由姫は廃墟ビルの出入口で待機していた。

「時間がかかっていますね」

 由姫は腕時計を見やる。陽絽は腕組みをし、壁にもたれながら出入口の方へと視線を向ける。

「大丈夫ですか?」

「何がだよ?」

 由姫の問いに陽絽はぶっきらぼうに答える。

「置いてきぼりの子犬のような目をしてますよ」

「おまえなー」

 変な例えをされ、眉をしかめた。しかし、時間がかかっているのは確かだ。将護と悠夜がいるので心配はあまりしてなかったのだが……。


「おいっ!」


 その時、大きな声で呼ばれ陽絽と由姫は鋭く声のした方を見る。

 二人のいる廃墟ビルの正面にある古びた建物の屋上で少年が一人、仁王立ちになって立っていた。

 11、12歳くらいだろうか。少年は尚も大きな声をあげる。

「おまえら、ここで何してる!!」

 ついでに態度もでかそうだ。

相模(さがみ)さん、お友達ですか?」

「バカ言え。あんな生意気そうなガキ知るかよ」

「気が合いそうですよ」

「ふざけんなー」

 陽絽はうんざりした顔になる。目の前の当人をほったらかしで会話をする二人に少年は癇癪を起こしたようだ。

「俺の話を聞けっ!! わかってんだぞ!! おまえら『神影(みかげ)』の奴らだろ!!」

『神影』の名に陽絽と由姫の顔つきが変わる。……何なんだ、この少年は。由姫が陽絽に確認する。

「どうします?」

「とっ捕まえて、色々吐かす」

 陽絽の決断は早かった。指の関節を鳴らしながら壁から背を離す。少年が陽絽の動きに警戒した体勢を取ったがその威勢は変わらなかった。

「バーカ! 俺はおまえらなんかに捕まんねーよ!!」

 勝ち気な少年はそう言うと、手に持っていた何かをこちらへ向かって放り投げてきた。

 それは――――石?

 投げられたモノが数個の石と認識した瞬間、石から黒い影が姿を現した。


「!?」


 陽絽と由姫は妖影の出現に目を見張る。妖影が二人目がけて襲いかかってきた。

 舌打ちしながら陽絽は妖影達を消してゆき由姫も自分の所へ向かってきた妖影を一匹消すと少年を仰ぎ見る。

 ……すでに少年の姿はそこにはなかった。


「何なの……」

 由姫は眉を潜めたまま呟く。

「あのガキ許さねぇ」

 妖影を全て始末した陽絽が忌々しそうに唸った。今にも追いかけて行きそうだ。

「駄目ですよ、相模さん」

 由姫が諫める。持ち場を離れるわけにはいかない。

「っくそ!」

 陽絽は苛つきながら頭をガシガシとかく。この訳のわからない状況と、四人が戻らないことに苛立ちと心配が募る。

 由姫は再び出入口へと視線を向ける。


 内部の者たちが廃墟ビルから姿を見せたのは、その数分後のことだった。


***


 携帯の着信音が鳴った。

 鳴り響くこと数コール。神景捷は通話ボタンを押し電話に出る。


「お疲れさまでした。将護」


 電話をかけてきた側近に労いの言葉を掛ける。

 それから暫くの間、側近の報告に耳を傾ける。一通りの内容を聞き終わると、捷はいつもと変わりのない落ち着いた声で指示を出した。


「わかりました。まずは無事で良かったです。本部に戻り待機していて下さい。――――僕は今、本家にいるので。……大丈夫。君も本部で待っていて下さい」


 それだけ伝えると捷は通話を切る。


 捷は今、神影一門総本家の前にいた。

 端正な顔が静かに重苦しい門を一瞥する。


 彼の闇色の瞳は何を映しているのか……。


 そしてそのままゆっくりとした足取りで門をくぐり抜けて行く――――……。



 ――――空はすっかり夜の月が輝いていた……。



影を操る者 end.

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