Ch.63 アブナイ新天地 その三
「あぁ、すまないね。ついつい見惚れていた」
克己は平安貴族と見間違うような衣服で身を包んだ人たちに微笑んだ。
克己が奥の間へ戻ると挨拶という名の売名活動が始まった。
「ご着任のお祝いに参りました。我が名雲家は六十一代にわたりこの領主邸で文庫の管理官をしておりました。このイズモで最も文学を知る一族といえば名雲家と褒められることも多々」
「ご着任のお祝いに参りました。我が月島家は四十三代にわたりこの領主邸で武具の管理官をしておりました。このイズモで最も武に長けた一族と豪語しております!」
「武なら四十六代にわたりこの領主邸で武具の管理官をしておりました我が南川家の方が長けております!」
「何を申すか!」
「大領主様の前で騒ぐな!不敬であるぞ!」
平安貴族と見間違うような衣服で身を包んだ人たちはケンカを始めた。
「一つ聞いていいか?」
克己は平安貴族と見間違うような衣服で身を包んだ人たちに問う。
「はい、何なりと」
名雲家の当主が少し前に出た。
「ここでも髭はあった方が良いんだろうか。なくてもいいなら剃りたいんだ」
克己は整えられた髭に触れる。
「はっ!髭などいりません!身だしなみのことなら五百八代にわたって大領主様の身だしなみを整えて来た我が一島家にお任せを!」
一島家の当主は前に出た。
「そうか。早速やってみてくれないか?」
克己は一島家の当主に笑む。
「はい!!」
他の当主たちが悔しそうに歯ぎしりする中、一島家当主、一島 勝臣は立ち上がった。
勝臣は自慢の道具で克己の髭を剃っていく。
鋭く研ぎ澄まされた剃刀を自分の手足のように操りあっという間に克己の髭を全て剃った。
「・・・すごいな!」
克己は自分の顔に触れて笑んだ。
「ありがとうございます」
勝臣は克己に深々とお辞儀する。
「そうだ、この中に料理人はいないか?」
克己が各家の当主たちを見た瞬間、二十人近くが手を上げた。
「近々、セルグニーナ・セーヴェルナヤからむちゃくちゃ大きいエビが届くんだ。それを美味しく調理できる自信がある人だけ手を上げて欲しい」
克己の言葉を聞いて手を下ろす者はいない。
手を上げている者たちはみんな自信満々だ。
(これは・・・困ったな・・・)
克己は各家の当主たちを見る。




