紫×桃 秘匿
寂しい 。
珍しく 、今日は 、看護師さんや担当医さん以外 、誰とも会わなかった 。
俺らしく 、話せなかった 。
いつもなら 、誰かが会いに来てくれるのに 。
見舞いに来て 、くれるのに 。
夏休みが終わり 、まだ退院まで時間がかかることから 、休学することを選んだ 。
とはいえ 、夏休みが終わってから 、1 週間しか経っていないけれど 。
俺は 、去年から学級委員長を勤めるほど 、結構学校が好きそうなキャラだったから 、
皆 、俺が休学することに驚いて 、そこまで仲良くない奴でも 、見舞いに来る 。
病院は 、通っている学校からだとすごく遠く 、
毎日来る親友は電車を使って来てくれているため 、頭が上がらない 。
一応 、無理して来なくて良い 、と伝えたんだけどな 。
だが 、そいつも 、今日は来ない 。
塾のテストがあるそうだ 。
今は 、もう夕方 。
9 月になり 、日が落ちるのが 、前に比べて早くなったとはいえ 、
ずっとベッドに居るから 、全然長く感じる 。
もうこんな時間だし 、誰も来ねぇよな 。
期待を諦めて 、本日数えきれないくらいに触ったスマホを手にする 。
仕方ない 。
知らん人の配信でコメントでもして 、話しかけてもらうか 。
有名なアプリを開き 、視聴者が少なそうな配信を探す 。
歌が好きだから 、歌枠をやっているところが良いな 。
いや 、話しかけてもらうなら 、雑談の方が良いのかもしれない 。
... 部屋の外から 、足音が聞こえる 。
その音は 、俺がいる部屋の前で止まった 。
夜御飯にはまだ早いし 、今日は検査も作業療法もない 。
夜御飯代わりの点滴を刺すとしても 、まだまだ早い 。
一体 、誰だろうか 。
「 失礼します 、... 」
入ってきたのは 、全く見たことのない 、少し高めの声をした男性 。
女性らしい顔立ちで 、福岡出身かのような美人 。
右肩には 、俺が通っている学校の指定スクバを持っていて 、
桃色のキーホルダーをじゃらじゃらとつけている 。
制服のリボンが赤色で 、きっとこいつは 2 年生 。
俺と 、同級生じゃないか 。
でも 、本当に見たことない人だ 。
俺の学校は 1 学年 100 人程だから 、1 年のうちに全員覚えたはずだ 。
全員話したこともある 。
珍しく 、不登校の奴は居ないから 、絶対こいつとも話したことがある 。
じゃあ 、なぜ知らない ?
「 すみません、何方でしょうか 、? 」
「 あぁっ ! 初めてですもんね 。福岡から転校してきました 、桃里と申します ! 」
初対面で 、こんなに話せるだと ⁉
陽キャオーラが漂っている 。
やっぱり 、福岡は都会だから 、全員こんな感じなんかな 。
転校生 、この学校で初めてだよな ?
そりゃ 、気づかなくてもしゃーない 。
陽キャオーラが漂っているのはそうだが 、何か本当の奴らとは違うような気がする 。
この笑顔も 、声も 。
全部 、偽っているかのように聞こえる 。
やっぱ 、最初だから緊張してんのかな 。
ほら 、俺だって 、ヤクザみたいな見た目してるし 。
「 紫陽っす 。んで 、今日はなんかあったんすか ? こんな遠いとこまで 。 」
「 あの 、いろいろ紫陽 ? さんに聞きたいことがあって … 」
*****
俺達が話し始めてから 、10 分程経っただろうか 。
まだまだ 、他愛のない話は続く 。
さっき会ったはずなのに 、いつの間にかタメで話してるし 、
名前は呼び捨てで呼んでるし 、家まで教えちゃった 。
ちなみに 、家めっちゃ近かった 。
今度 、遊びに行こうと思う 。
なんでここへ来たかというと 、学級委員長を引き継いだからだそうだ 。
しかも 、合唱コンクールや修学旅行の実行委員まで代わりにしてくれてるらしい 。
… 転校してすぐこんな大活躍するなんて 、前の学校の成績すげぇ良かったんだろうな 。
確かに 、他にリーダーシップのある男 、クラスにいないからな 。
あいつらノリいいから 、別に無理やりやらせてもよかっただろうに 。
このこともだが 、もっと気になることがある 。
あいつ 、俺が面白いこと言っても 、全く笑わねぇ 。
口角は上がってるけど 、目が笑ってない 。
本人は 、笑ってると認識してそう 。
絶対なんか隠してるよな ?
「 そういえばさ 、今日薬物乱用防止教室があって~ 」
「 うわ 、めっちゃ気まずい奴やん 。 」
誰もが気まずい 。
こんな真面目な講話 。
まぁ 、俺の気まずいは 、皆と違う意味だと思うが 。
そう 、そんな講話を受けても何も変わらない 。
なぜなら 、既にしてしまっているから 。
オーバードーズ 。
市販薬の乱用 。
防止教室を受けても意味はない 。
辞めるなんて 、全く考えたことはない 。
これが生き甲斐だから 。
なんなら 、これが原因で入院しているまである 。
拒食と不眠と鬱とこれ 。
1 番酷い時は 、指先すら動かなかったな 、笑
「 真面目な話ってのもあるけどさ 、やっぱやってる側の人間だから ... 」
「 ... は 、? 」
何言ってんだ 。
まさか 、俺と同じ ... !?
嘘だろ 、こんなに陽キャっぽい奴なのに !?
... 俺も言えないかも 。
人を見た目で判断するのって 、良くないよな 。
「 ... ごめん 、ちょっと引いちゃったよね 。 」
引くわけねぇだろ 。
というか 、俺もやってる存在だし 。
どうなんだろう 。
このまま 、ノリにのって 、俺のこともバラすか 。
いや 、初対面でこれは 、さすがにおかしいよな 。
「 よかったぁ 。引かれてなくて 。
というか 、そんなに悩まなくていいよ ?
気づいてないかもしれないけど 、結構声に出てるから 笑」
いつの間にか 、声に出てしまっていたようだ 。
なんか 、恥ずい …
でも 、仲間ができた感じがして 、嬉しいな 。
誰にも話せなかったけど 、共感してもらえたから 。
いつも決まった友達とずっといるわけじゃないけど 、こいつとならいいかも 。
学校の話 。
すごく楽しそうに 、話してくれたんだよな 。
… 退院して 、学校に戻ったらさ 、俺もお前みたいに楽しめるんかな 。
変な目で見られないか ?
夏休み前まで普通に学級委員長してた奴がさ 、急に休学したんだから 。
裏あるに決まってんだろ 。
前みたいに 、皆の役に立てんのかな 。
生徒会の仕事も 、できるんかな 。
部活も 、一生懸命練習できるんかな 。
ずっとベッドの上にいる今 、前の元気な頃の俺を思い出すだけで 、不安が渦巻いてしまう 。
学校に戻りたいのはもちろん思っているけど 、期待に応えられなかったらと考えると 、一気に怖くなる 。
なんでこんな気持ちになってしまうのだろうか 。
もう普通の人間じゃない 。
「 なぁ 、OD しねぇか ? 」
つい 、口に出してしまった 。
だけれど 、今のこの気持ちを抑えるためには 、すぐに OD するしかない 。
勝手に 、し始めるのもなんか可哀想だし 、勢いで誘ってしまった 。
実は 、入院中も 、こっそり抜け出して隣の薬局で買うことで 、OD を続けている 。
買ったばかりだから 、もしこいつが持っていなくても 、俺から差し出すことはできる 。
「 待ってた 、今俺もやりたいんだよね 笑 」
「 それは良かった 。 」
「 薬ある ? 俺 2 瓶あるから何粒でもあげれるけど 。 」
「 俺もある 。この前抜け出して買った 。 」
「 ... 病院って 、そういうとこ 、結構緩いんだねぇ 笑 」
そういって 、一緒に薬を呑み込んだ 。
なんと、持っていた薬は 、全く同じものだった。
運命ですか ?
初めて人と一緒にオーバードーズしたけど 、相手も幸せそうだし 、誘って良かったなと心から思う 。
しちゃいけないことだってわかってる 。
だけど 、今までで 1 番楽しかった 。
またしてぇな ...
学校でも 、仲良くできるといいな 。
俺の中で 1 番話せる奴かも 。
素直に話せる 、そんな存在 。
これからも一緒に居られたら 、俺の心は 、少しでも救われるだろうな 。
その過程で 、桃里の心も 、救えるように 。




