82話 ダイコー=オーディンの沈黙(1/3)
Q.ちょっとまって『適合者』の条件って100人喰い◯して尚且つ目的があったら移行できるならなんでドリンク=バァやマンダカミアはなってないの!!?9話で100人殺した記述あったよね!?
A.おぉぉぉっっとーーー...言えないねぇ〜〜〜
ーーーザワザワ
ざわめく会場、ミカードはワインを嗜みながら戦闘を静かに見届けていた。
「...?」
チクアーノは首を傾げる。
「どうしたのかな?」
「ダイコーさんはどうしてあそこまで『獣』に...いえ、オルゼに対して怒りを覚えているのですか?」
「そう見えるかね?」
「ダイコーさんのバイタルが上昇しています」
「...そうだね、君は...」
その時、ミカードはすこし口籠った後応える。
「君は『五耀星』No.2に着任したのはつい最近だったね?」
「着任して3ヶ月です、作られたのは1年前です」
「あ結構最近だね、実は君の前任者がいたのは知ってるかな?」
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ーーードォォォォオオオオオン!!!
「...ただいま」
受付嬢が振り向く、そして固まった。
そこには見上げるほど巨大な竜種の死骸が転がっていた。
「おかえりなさーーーふぁああ!?」
当時のダイコーの装備は白銀に包まれていた、装備においては特に拘らず機能性のみで選んだ味気ないもの。
少なくともこの頃のダイコーは、今のように意味なくポーズを決めたりはしゃいだりする女ではなかった。
「すげぇ...さすが『五耀星』だ」
「何日ぶんの...いや、何人分養えるんだ?」
「知るかよ」
ある疫病が流行り始めていた、なんでも人が人を喰らい、さらにそれは伝染する感染症とのこと。
帝国はシャクシ島以外の他の小国との国交を全て断った、防衛体制が整うまでは食糧と人員の調達を急がねばならない。
「ダイコー様!」
「...」
呼びかけられ振り向くとそこには誰もいない、下を向くと歯車を模した髪飾りが似合う少女。
ツミレ、それが彼女の名前だった。
「見てください!ダイコー様の空中戦における機動力を上げるために魔導モーター出力増強パッチを作ってみました!」
「…出力安定?」
「は、はい!ダイコー様の魔力波形に合わせて調整しました!」
「…」
「あぅ...」
彼女の両親は競技場で死亡した、元々奴隷として売られていた少女。
家事が面倒になったので適当に購入しただけにすぎないが、ダイコーが開発した技術に興味を示したので自由行動を許してみた。
今では才能が開花したのか、実質的にダイコーの専属技師となっている。
ただ、それ以上はない、それだけ。
髪飾りも装備開発の際に余ったものを渡しただけだ、ダイコーにとっては、ただの廃材に過ぎない。
ダイコーはこの少女に微塵も興味を示してなどいなかった。
ーーーガシャンッ!ガチャ!バキッ!!
「!」
突然、ダイコーの腕から何かが吹っ飛ぶ、煙を上げて転がる缶のようなもの。
「寿命か」
空中機動を可能とするバッテリー、長時間の酷使により寿命が来たのだ。
「は!!」
一瞥されたツミレは大急ぎでバッグの中身を漁り出す、こぼれ落ちる工具とパーツ、見るに耐えない。
「はい!」
そして数分後、ようやく予備のバッテリーを装着、以前は持ってくるのすら忘れる程の有様だったがようやくマシになってきた。
「...」
「...」
「ダイコーだ...」
「なんだよあの眼...」
「人じゃねぇよありゃ」
「...」
街を歩くと向けられる周囲の畏怖の眼差し、勇者でもない今にも人を殺しそうな目つきはおおよそ人ではない、魔族の類だ。
「...あの人たち...!!」
「やめろ」
食ってかかりそうなツミレを制止する、ダイコーは勇者ではない、勇者と共に旅をしたわけでもない。
「でもあの人たち!ダイコー様がどれだけ働いてるか知らないんですよ!?」
「...」
「一日に竜三体ですよ!?...その功績がどれだけこの国やあの人達の助けになっているか!」
「...」
「防衛機構の開発だってダイコー様が――」
「言うなと言っている」
「むぐ...」
ダイコーは居住区の離れにある設備の整った拠点を構え、悠々自適な暮らしを許されている。
「すぐ夕食を用意します!」
「あぁ」
ただそれだけの、最低限の会話。
運ばれて来た料理を黙々と口に運び、腹を満たす。
「あの...」
「?」
「実は、相談したい事がありまして...」
そういうとツミレは倉庫から巨大な大砲を持ち出して来た、清掃の行き届いた室内に似合わない光景だ。
「なんだそれは?」
「実は...界帝様から空席となってる『五耀星』のNo.2に入らないかと言われまして」
「!?」
『五耀星』、ダイコーが隊長を務める帝国内の精鋭部隊。
No.2は参謀や部隊のサポートを担う立ち位置であり、彼女の場合は専属技師と同様の意味を持つ。
そしてその部隊に入る事は国民の、正確には戦闘者達の誉であり、一生の安泰を約束される。
「...」
「...私、入りたいんです、もっとダイコー様のお役に立ちたいんです!どうか許可をしてください!」
それは、彼女の初めての我儘だった。
「...」
ダイコーは数秒だけ沈黙した。
目の前の少女は、期待に満ちた目でこちらを見ている、その視線から目を逸らすように、ダイコーはワインを一口飲んだ。
「好きにしろ」
「...!!」
ツミレはこの日1番の笑顔を見せたのだ。
「でも...でも私はダイコー様の技術士です!」
「ふん」
こうして、奴隷として買われた少女は
帝国最高峰の技術士になる権利を得た。
誰もが羨む、一生の安泰だった。
...
「ーーーあ、新しく皆様のサポートをさせていただきます、ツミレです!!」
『五耀星』の面々への顔合わせ。
「あ、す、すごく、すごくちゃんと...した子...へ、へへ、うへへ」
「なんと弱々しい魂かッ!!しかし多様こそがこの部隊の特徴、歓迎しよう!!もしよろしければ味見だけさせていただけるかな?」
その健気さは部隊にすんなりと受け入れられた、ダイコーはその背中を静かに見ていた。
「あいつ、ダイコーさんの奴隷...いえ、専属技師だったんですって?」
一人見守るダイコーを後ろから声をかける、今は亡きハン=ペンバーだ。
「技師らしい事はほとんどしてこなかったけどな」
「何してたんです?」
「バッテリーの生産と私の装備のメンテナンスだ」
「技師じゃないですか」
「そんなものは私でもできる」
ハン=ペンバーは小さく肩をすくめる。
「……実は、あいつが声をかけられた理由、知ってます?」
「?」
「アイツ……貴方が考案したけど断念した武器や道具を、実用可能なレベルまで開発して売っていたんですよ」
ダイコーは黙って聞いている。
「少しでも、貴方のイメージを回復させるために、寝る間を惜しんでね」
「……」
ダイコーは視線を前へ戻した。
五耀星の面々に囲まれながら、必死に頭を下げている小さな背中。
歯車の髪飾りが、わずかに揺れていた。
...
数日後、五耀星の訓練場。
ダイコーは空中機動装置を展開し、空へと飛び上がった、白銀の装備が光を反射しながら鋭く旋回する。
その動きを、ツミレは地上から食い入るように見つめていた。
「ど、どうですか!? 推進補助の魔導モーター、出力を少しだけ上げてみたんです!」
ダイコーは空中で一度停止し、軽く機体を傾ける、そして地面へと降り立った。
竜の外郭を使った黒い装甲が眩しく輝く。
「……悪くない」
「!!」
ツミレの顔が一瞬で輝いた。
「ほ、本当ですか!? あ、あの、もしよければもう少し――」
「調子に乗るな」
「は、はい!!」
ツミレは慌てて頭を下げる、だがその顔は抑えきれないほど嬉しそうだった。
ダイコーはそれを一瞥する。
そして何も言わず、再び空へと飛び上がった。
「ダイコー!!ダイコー!!」
「?」
響く轟音、『五耀星』の一人、ギュージが呼んでいる。
「そろそろポーズを!!ポーズを決めよう!輝く魂を敵に見せつけるためのポォォズを!!」
「またそれか」
「なんの話です?」
ギュージの戯言だ、モチベーションとイメージの向上のために部隊見参の際の決めポーズを決めようと言い出したのだ。
無論却下だ、そんな隙だらけなことやるだけ無駄。
「え、やりましょうよダイコー様!」
目を輝かせて飛び跳ねるツミレ、彼女はまだ20もいかない、年相応の反応を見せる。
「お前最近生意気だぞ」
「あ、ご、ごめんなさいーー!」
「だ、ダイコーさん...最近顔が柔らかい、へへ」
口を挟むNo.4、キンチャク。
「五月蝿いぞ」
その日、ツミレは遅くまで整備を続けていた。
ダイコーの戦闘を、少しでも支えるために、それが彼女にとって何より誇らしい仕事だった。
誰もが羨む未来。
誰もが約束された安泰。
...
..
.
防護壁の聳え立つ、城壁の一角、それが何者かに破られた。
「まずいまずいまずい!!せっかく完成しかけたのに!!」
「おい入ってくるぞ!!『五耀星』呼べ!!」
「やべやべやべッ!!おい崩れるぞぉぉぉおおお!!」
ツミレが無惨な死を遂げるのは、それから間もなくのことだった。
次回投稿日は3/26 7:10!!
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