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【100話達成ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど魔王の遺した無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-4章 龍界地底砲塔マナタン:リトルポイント編

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103話 私の大好きな勇者様

ミークを見守ってあげてください


「あ、ここにあったのね」


 アイザック、シオン、ミークの3人を前にエウロペは表情を変えず実験台の上のなにかを拾い上げた。


「これがないと家事が面倒になるのよね!」


 糸のような物質を頭に埋め込んだ。


「.....『愛着縫合(オーメン)』」


 シオンが小さく呟く。


「何!?」


「あいつがいま着けた武装の名称よ...本来は上級魔法なんだけど...あいつは道具化に成功し、装着すれば誰でも使えるようにした」


「何、何がなんだ?いまの糸か!?」


「えい!」


 ーーーバゴッッ!!


「ッ!!」


 エウロペの髪が動いた。

 その髪は鞭のようにしなり、実験台を叩き壊したのだ。


「ちょうどよかった、今日から色々動かないといけないから、準備運動に付き合ってくれるかしら!」


「ッーー!ミークッ!!」


「はい!!」


 示し合わせたように頷くミーク、一体何のことかを聞く前にアイザックはミークの脇に抱えられる。


「ミークッ!?」


「行きますよ!!」


 ーーーダンッ!!


 ミークは部屋を飛び出し走り出した。


「ミーク!!待て、なにをーーー!!!」


「戦略的撤退です!!」


 ーーーボンッッ!!


 『火炎尖弾(フレイズレイ)』で壁に穴を開けて飛び出す、身体が軽く開くと同時に突風が襲う。


「うぉぉおおおッ!?」


 ーーーダンッ!!


 堕ちた先は資材置き場、あらゆる廃材と瓦礫が積み上がっており、錆の匂いが嗅覚を刺激する。


「そこは危ないわよ〜〜!」


 ーーードォオオオンッ!!


 激しい轟音と共にエウロペは追いついた。


「ぐ...!!」


「それ〜!!」


 ーーードンッ!!


 触手のように蠢く髪は近くの瓦礫を次々と投げ飛ばす。

 その瓦礫は弾丸のような速度と威力でアイザックとミークを襲う。


 ーーードンッ!!ドンッ!ドンッッ!!


「は、はあ!!はぁ!!」


 アイザックを担いでいるせいか息が上がるミーク、そして次の瞬間ーーー。


 ーーードォオオオンッッ!


「きゃぁああ!?」

「うぎゃぁ!?」


 瓦礫は足元を捉え、爆風と共に2人は投げ出され、地面に叩きつけられた。

 地面にうずくまる2人の前にエウロペは降り立つ。


「楽しい鬼ごっこね!」


「て、てめぇ!!シオンはどうした!」


「別にどうもしてないわよ〜、無視しただけ」


「ぐ...!」


「な、なんで...!!」


 次に口を開いたのはミークだった。


「なんで私達を追うんですか...『魔王刻印』はすでに貴方の手中にある...もうアイザック君を追いかける必要なんてないはず!」


「え?」


 きょとんと、エウロペは首を傾げる。


「ほら、背中、あれじゃあ危ないでしょう?ちゃんと処置してあげないと」


 まるで転んだ子供を見るような目だった。

 アイザックの背中は皮ごと剥ぎ取られており、簡単な応急処置程度しか施されていない。


「ご遠慮します、アイザック君は背中かっぴらかれた程度で死にません」


「え、ミーク?さすがに死ぬって」


「さぁ、アイザック君、こっちにいらっしゃい」


 ーーービュッッ!!!


「!!」


 迫り来る触手のような髪。

 瞬間、ミークはアイザックを担いで跳躍、急拡大する髪を回避する。


 ーーードンッ!!


「ーーー...」


 回避を続けるミーク、担がれてるアイザックはただされるがまま。


「...!」


 情けない、なんとも、情けなかった。

 『魔王刻印』がない自分はここまで無力なのか、と。

 四方から瓦礫が襲いかかる。


「くっ……!」


 ミークは着地のたびに軸を変え、最小の動きでかわす。

 だが、担いだままでは限界が近い、だがミークは自身よりもアイザックを見て口を開いた。


「ミーーー

「アイザック君」


「?」


「だめです」


「聞けって――」


 ――バゴォンッ!!


 言い終わる前に走る衝撃。

 足元が抉れ、体勢が崩れる。ミークは咄嗟に膝をつき、アイザックを庇った。


「っ……!」


 土煙の向こうで、髪が“檻”の形に組み上がっていく。

 完全に囲まれ逃げ道が閉じる。


「ほら、危ないって言ったでしょう?」


 エウロペの穏やかに言った。


「動くと余計に傷が開くわ。大人しくしていれば、すぐ終わるのに」


 細い糸の束が、蛇のように地を這う。

 一本、二本――いや、数えきれない、すべてがこちらを捕らえんと狙っているのがわかる。

 檻の中で、じわじわとすり寄る脅威、もはや逃げ道はどこにもなかった。


 ――ギチ、ギチ、と。


 髪の檻がさらに狭まる、じわじわと、確実に距離が詰められていく。


「ーーー『無作為転移(トラベルダイス)』!!」

「!」


 2人は光に包まれる。


 ーーーバシュッ!


「あら!」


 そしてエウロペの前から消失、流れ星のように飛んでいく。


 ーーーバシュッ!


「アイザック君、怪我は」


「大丈夫だーーー」


 離れた雑木林の中、2人は降り立つ。

 完全に振り切ったと思った、その時だった。


 ーーーバシュッ!


「あらあらあらお久しぶり!!」


「え!?」

「ッッ!!!」


 エウロペがミークと同じ光を纏って現れたのだ。


「な、なんで!?」


「『因果転移(カウザルダイス)』、アイザック君は知らないかしら?」


 聞いた事のない名前の魔法だ、だがしかしミークは険しい目でエウロペを見つめていた。


「『無作為転移(トラベルダイス)』は近くのランダムな場所に転移する魔法...それに対して『因果転移(カウザルダイス)』は、その術式につけ込み転移した場所に追跡する形で転移する」


「ッッ!!」


「さすがミークさん!とっても博識ね!」


「私の知ってる限り実現不可能と言われてた魔法のはず」


「今はもう違うわ!」


「ーーー『無作為転移(トラベルダイス)』!」


 ーーーバシュッ!


「『因果転移(カウザルダイス)』」


 ーーーバシュッ!


 そしてまた鉢合わせる。


「『無作為転移(トラベルダイス)』!!」

「『因果転移(カウザルダイス)』」


 ーーーバシュッ!

 ーーーバシュッ!


 逃げても逃げても追い付いてくるエウロペ、消耗戦をしかけようとも彼女の魔力量はそこが知れない。

 『魔王刻印』を今持っていないにもかかわからず、だ。


「大丈夫よ」


 エウロペは、まるで子供をあやすように微笑んだ。


「怖くないわ、少し縫うだけだから」


「……ッ」


「少し貴方の身体を色々調べたりはするかもね、だって魔力のない身体なんてなかなかレアだもの」


 アイザックが歯を食いしばる。

 絶対それだけでは終わらない、そう確信できるほどのエウロペの禍々しい気配。

 まるで悪魔が覗くような赫い魔力を帯びて歩み寄る。


 動けば終わる、だが、動かなくても終わる。


 もはや逃げ場は無い。


「ほら、こっちに――」


 髪が一斉にうねった。

 ――その瞬間。


「……アイザック君」


 ミークが、静かに呟いた。

 その顔は状況に似合わず穏やかだった。


「なに――」


 振り向いた瞬間、ミークはアイザックの眼前に迫る。


「ミーク?」


 次の瞬間。


「ごめんなさい」


 小さく、そう言った。


「もう、これしか思いつかないんです」


「な、に言って――」


 その言葉を遮るように、ミークは小さく唱える。


「『無作為転移(トラベルダイス)』」


 アイザックの視界が、空間が歪む。


「ミーク!?お前なにやってんだよッッ!おいッ!!」


「言ったじゃないですか、私は私の勇者様を守りますって」


 光に包まれるアイザック、その目には優しく微笑むミークの姿。


「アイザック君、もしもの時のために先に言います」


「ミーク...?」


 どうして、そんな顔をするんだ。


 まるで諦めたみたいに。


 まるで満足したみたいに。


 胸の奥が、ざわつく。

 言葉にできない何かが、喉を塞ぐ。


 ミークが、一歩踏み出した。


 迷いのない動きだった。






挿絵(By みてみん)





 ーーー触れる唇、そして。



「愛してます」







 それが、最後だった。


「ミィッッーーーー!!!」


 ――バシュッッ!!


 乾いた音と共に、アイザックの姿が掻き消える。


 ...


 ..


 取り残された2人の女。


「なんて、なんて美しいの!ミークさん!」


 感涙の涙を流すエウロペ、その瞳は嘘偽りなく、本気で彼女の行動に涙していた。


「自分を犠牲にアイザック君を逃がすなんて...私はとても感動したわ!愛!愛って良いわよね!」


「言っててください」


 ーーードッッ!!


 その時、ミークの身体から激しい魔力が溢れ出す、光の粒子が舞い、彼女の決意を彩っているようでもあった。


「あら、それって!」


 エウロペは見た事があった、その姿を。

 『獣冠祭』でアイザックが見せた技、『螺旋起動(スパイラルギア)』に非常によく似ていた。


「勘違いしないでください、元々()()()()()()()()()、それをレーチェ様がアイザック君に教えただけのこと」


「あ...あらあらあら!」


 ミークは杖を握りしめ、エウロペに宣言する。


「エウロペ、あなた()()()()()()()()()()()


「あら?」


 その言葉は、全てを知っているかのように、淡々と告げられた。

 その言葉の意味をエウロペは遅れて理解した。


「あらあらあらあらあらあら!!ミークさん、貴方知ってしまったのね!まだお披露目する前だったのに!びっくりさせようと思ったのに!」


「...」


 ミークの目はさらに鋭く、ため息をつきナイフのような殺意を突き刺す。


「私と貴方の"愛"は違います、だからこそ、一緒に語る貴方が許せないーーーそれ故に一歩も通しません、アイザック君はあなたには渡さない、それにーーー」


「それに?」


「今の私は最強です」


 ミークは微笑む。


「だって、アイザック君の()()()()ですから!!」


 その場に立つのは、同じ“愛”を語る二人。

 だがその在り方は、決して交わることはない。





 








 唇に残る温度は消えない。

 その温もりをかかえて、ミークは一歩踏み出した。

次回投稿は5/9 7:10!!


ミークいい女だと思ったら高評価⭐︎お願いします!


皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます〜!!


高評価、ブックマークを押していただければ作者のモチベーションに繋がります!!

よろしくお願いします!!

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