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それが日常  作者: 浜野 雪
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1月23日(月) 雪

風に揺られ、時に強く激しく。時に弱く脆く、降る雪。

それは、積もることもないような雪だった。


「雪降ってるよ! 積もるかな? 何年ぶりかな? 」


私の友達、キララが言う。


「ほんとだ! うーん。積もんないみたいだよ。溶けてるもん。というか今年二回目だよー? 」


「でもさ、でもさ、こんだけ降ったのは4年ぶりじゃなーい? 」


そう、四年前。雪の降ることの珍しい、ここらで、約50センチ積もった。

楽しかったな。雪だるま作ったり、雪ウサギ作ったり。雪合戦もした。

隣の家の友達……キララとソリで遊んだり。


それは小学五年生。

私が今の家に引っ越した年だった。

今は中学二年生。部活で後輩もできた。


「あ、もうすぐ授業始まるや」


そして、四限目が始まった。


「雪すごいな」


先生も気になっているようだ。


「まあ、授業始めるでな」


そう言って、授業が始まる。 授業中。今日は23日で出席番号23番な私が当てられたこと以外変わったことはなかった。雪は少し弱まっていた。


「雪よふれー! 」


「そんなんで降るわけないやん」


「そんな事ないって! ほら! 」


「まじで降りやがった……」


しかし、強くなったのも一瞬。すぐ弱くなってしまった。


「えー! もっと降ってよー! 」


「ほら、雪だけにクールに応援しやな。雪よ降って下さいお願いするっていってんだろ! 」


「なにそれ、キレてるやん」


そうやって笑って昼休みは過ぎる。5限目の始まりだ。


「皆外が気になるのは仕方ないけどこれじゃ授業にならんでな」


先生はカーテンを閉める。皆からブーイングが上がるが、誰かの一言で書き消される。


「次カーテン開けたら、積もっとるかもしれんでー」


「そうだな」


誰が言ったのかは謎だ。とりあえず私ではない。


「さ、授業授業」


集中できないのではないかと思われた授業も案外集中して受けることができた。

まあ、人権の授業なので、集中してなくともなんとかなるのだが。


「うわぁ」


「すごっ! 」


「ヤバイな」


誰が何を言ったのか、わからないほどに教室は歓声で溢れた。

雪が積もっていたのだ! 東北地方の方々には全くわからないかも知れないが、私達にとって雪はそれほどまでに特別なのだ。

雪を見るだけなら、県内の山間部に行けば好きなだけ見られるだろう。だけど、此処での雪は特別なのだ。


「真っ白や~! 」


「そうでもないけど……」


誰かの否定的な声は、すぐに書き消される。


「真っ白って言ったら真っ白! 」


あ、というか、六限目もうすぐはじまっちゃうよ!


「もう一回カーテン閉めようぜ! 」


「カーテンを開けたときには溶けとったりして……」


皆がカーテンを閉めることに賛成した。


「ほな、六限目の授業はこの前の続きで、この写真を……」


先生がなにかを話している。まあ、授業なので当たり前なのだが、今の私はそれ以上に浮かれてしまっていたのかもしれない。だって、雪が積もったのは四年ぶりだからね!


「嘘……だろ」


「えー! 」


「マジかよ」


そう、雪は溶けてなくなっていた。それは綺麗さっぱりと。


「こいつの言うとおりになったし」


浜が言う。浜は野球部の男子だ。


「なんでうちのせいなん? 天気予報が言うてたんやし」


「マジかー。ないわ」


皆、意気消沈。火の消えた蝋燭のようだ。先生の言葉を借りるなら、お通夜状態だ。

まあ、それは私も同じなのだけど。

窓に額を付けて、外を眺める。そんな私のもとにキララがやって来た。


「なあ、ユキ~」


ユキは私のことだ。


「何? キララ」


「次はいつ、積もるかな? 」


私は窓ガラスから顔を離し、キララの顔を見たあと、外を、空を見て言う。


「うち、天気予報師ちゃうからわからんし」


次はいつ雪降るかな? ずっと楽しみにして待っている。

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