プロローグ
僕はカワイイものが好き。例えば熊のぬいぐるみ、オーバーサイズのセーター、カフェのプリンとか。
僕の家は、親が二人とも格闘技をしていたから僕にもさせようとしてきて、それから反発するようにカワイイものを集め始めた。そうしたら気が付いたんだよ。カワイイは正義ってね。いつの間にか趣味になってたんだ。
お母さんは僕がカワイイものを集め始めたら、身長も顔も中性ぽかったからかわいいねっていってくれてたんだけど、夜僕のことで両親がけんかしていた。お父さんは女の子っぽいのが許せないんだって。
反発して始めた僕のこの趣味はある意味生きがいで生きる意味、親の目を逃れる武器なんだ。だからやめられないし、やめたくないんだ。
今日の僕はカワイイを探して、ビレッジBANガードに来ている。
「はあ、家族がいない世界でカワイイものに囲まれて生きていきたい。」
『じゃあ、わしの世界に来るか?ぬいぐるみがいっぱいじゃぞ?』
「えっ行きたい!!」
周りからすごい目で見られた。空耳だったか?まあいいや。小物とか買うお金もないし両親もさすがに仲直りしてくれてるよね。
そうだ、家に帰ったら実験してみよう。ピンクのカラコンにピンクと水色のウィッグ、後はフリフリのパジャマを着てご飯を食べよう。お父さんも仲直りしたならかわいいっていってくれるよね?
「なんじゃその目は、その髪は、もっと男らしくしてくれ!!本当にわしの子供なんか?」
「勝手にせい。もう知らん。」
さすがに泣いちゃった。カワイイじゃなくても、ご飯中はやめろとか、カラコンはやめろとか許容して欲しかった。拒絶しないで欲しかった。認めて欲しかった。
「もう知らない。カワイイは理解出来ない人は出来ないんだ。認めてもらえる世界がいい。もうやだ生きにくい。ほんとは気付いてた他の人とは違うって、女の子じゃないのに女の子っぽいって周りの目が窮屈なんだ。認めてもらいたいわけじゃない、拒絶しないで許容して欲しい。」
もう知らないっ、熊のぬいぐるみを抱いてベットでふて寝した。
『わしの世界に来るか?この世界よりは認めてもらえるかもしれんぞ?もっとカワイイ姿にも作り直してあげられる。ぬいぐるみが動く世界じゃ。かわいかろう?』
「カワイイね。そっちの世界に行きたい。分かってくれてありがとう。大好き。」
『わしの世界にはちょっと使命があるんじゃ、わしの世界も大変じゃぞ?わしもお前さんが大好きじゃからちょっと心配。でも見ておれん。認めてくれる人が欲しいならわしが認める。お前さんはカワイイ。カワイイで世界を救えるんじゃ。』
「ありがとう。認めてくれて。ずっと見ていてくれて。僕はおじいちゃんの言葉に救われたよ。」
目を開くと手が透け始めた。瞬きの間の一瞬、世界が変わった。ここは僕の部屋じゃない、手紙を持っていた。
その手紙には、
『わしの力ではこの世界にしか飛ばせなかったのじゃ。大好きなお前さんのためにピンクと水色の髪、ピンクの目、キュワなんとか?の姿にしておいた。←おじいちゃん名前覚えられんかった。
可愛かろう?小さい頃から見守ってきたお前さんがこっちに来てくれて助かった。
やるべき使命は杖の中に入れておる。触ったら全部を思い出す。頑張れ負けるな、カワイイは正義じゃ!あっちの世界で頑張ってくれてありがとう。
君の大好きなおじいちゃん神より』
手紙を読み終わった。手紙が役目を終えたように消え、次第に覚えていた前の世界の記憶が消えていった。自分の名前も思い出せない。でもかすかに覚えてる、家族がいたんだ。おじいちゃん一人だったけど。
じゃあ名前がないのか?いやある!おじいちゃんにこう呼ばれていた気がするんだ。
スピカって。
自分よりも大きいハートの杖を拾って、やらないといけない使命、自分の魔法の力、この世界のことを思い出した。
「この世界の真ん中に行かないと。」
「つれてってクマさん!」
そう言って出てきた大きいクマのぬいぐるみに運ばれてスピカはどこかへ飛んでいった。




