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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第2章 キセトの町

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2-3 キセトの町へ・後編

「……」

「…………」

「………………」

「……あぁ~暇~」


俺はついに声に出してテーブルに突っ伏した。

だって仕方ないじゃないか。

遅めの昼飯を食ってから、何もすることがないのだから。


もちろん俺がやらなければならないことは山ほどあるのだが、誰が見ているか分からない酒場にいるがために何もできないのだ。

例えるならば、久しぶりの仕事休みであるにも関わらず、金策もレベリングもせずログインしたままボーっと呆けている感じ。

全く持って無駄である。


「オウキ様。そう言えばあれは設置しないので?」

「うん?あれって何だ」

「ほらあれですよ。村の地下に置くと言ってたやつ」


村の地下に置くって何か言ってたっけ?

村はランドに任せてて、何か頼んだことって……あぁテレポーターのことね。


「現状まだ何とも言えないから置かない。じゃないと破壊される可能性と移動後の硬直を狙われる可能性がある」


テレポーターは便利なものではあるが、テレポート直後は周りの景色が見えない上に動けない硬直がある。

ゲームの世界ならテレポーターの周囲は安全が確保されているが、ここはゲームの世界でもない現実なのだ。

ゲームみたいにこちらが準備万端になるまで待ってくれるはずもない。


「承知しました。それでお暇ということですが……」


そう言いかけたシーラの声は、酒場に響き渡った奇声にかき消されるのであった。




「ハーハッハッハッ!うぅむ、ここが酒場か。何と素晴らしい場所だ!エェクセレントゥ!!」


馬鹿みたいな高笑いを浮かべた長身の男が、酒場の中へズカズカと歩を進めた。

なんじゃあの変人。

俺は無視してシーラとの会話に戻ろうとしたのだが、周囲の空気が一変したことに気付く。


「ど、どうして人間が……!」

「この野郎……ついに俺たちを殺しにきやがったのか!」


その言葉を聞いた瞬間、俺は自分の耳を触るがちゃんと細長くてエルフの耳だ。

となるともちろん、殺意が向けられている先は……。


「う~む、一気に濃厚になったな!素晴らしいぃ!素晴らしいぃぃぃぃ!!マァァァァベラァァァス!!」


酒場に入ってきた人間の男は、全身で歓喜を表すかのように両手を広げて天井を仰ぎ見ていた。

う~んやっぱり変人。

動作にキレがあって毎回バッ!バッ!みたいに動いているのが、より変人さを増している。


あぁ~ああいう馬鹿ってどこにでもいるよなぁと嘲笑じみた感情が湧き上がっていたが、そんな俺の視界に突然オルクスが割って入ってきた。


「どうしたんだオルクス?水か?」

「我が主、危険」


俺の笑い声交じりの質問を、オルクスは闘志を滲ませた低い声で返してきた。

危険?俺が?

全く状況が分かず反対側に座っていたシーラを見てみると、彼女もいつの間にか武器を持って立っていた。


「シーラ?」

「オウキ様。戦闘準備を」


いつもの無駄に色気を振りまく表情ではなく、真剣に獲物をしとめるときの目線を見て、俺は再び思い出した。

そう、ここはゲームの世界ではない。

戦闘が起こらないように設定されたセーフポイントの酒場など存在しないのだと。


「済まない油断していた。オルクスそのまま警戒を維持。シーラは腰を下ろせ、目立ちすぎるな」

「承知」

「承知しました」


俺は腰に佩いていた剣柄に手を掛けつつ、指示を出す。

向かいには未だに入ってきた人間に目を見開くスーラーが座っていた。




「んっ!貴方がこの店の店主ですかな?」

「……あぁそうだ。だったら何だ?」

「いえいえ、なんでもございませんともっ!ただ貴方は美しいぃ!!エェクセレントォ!願わくばもっと美しい普段の貴方を見たかったっ!!」

「……そりゃどうも」


さっき俺と話していた豚の店主が鋭い目つきで変人に言い返すが、それを意にも返さず変人は店を練り歩き始める。


「うぅむ、ここに来れば良質な方に会えるかと思いましたが……ダァミットゥ!」


うざいくらい途中途中で英語を挟む人間の男だが、見た目は俺と同じ三十路くらい。

モノクルをかけて七三に分けられた髪、マント付きで綺麗に整った青色の服と、見た目だけならば紳士と呼べる。

だが1つ1つの動作がとてもうるさく、全身で何かを表現しながら何かを叫んでいる。


そして最後にこの変人、かなり強い。

オルクスやシーラが臨戦態勢を取っているのもあるが、俺たちを含む酒場の亜人たちに殺意を向けられても一切動じていないのが証左だろう。

特にオルクスの殺気は盾職に相応しい注意を引くことに特化しているのだが、変人は一切こちらを見ない。


まるで散歩するかの如く変人が悠々と酒場を練り歩き、店内にいた亜人種たちを観察していく。

そしてついに俺たちのテーブルに近づくと、顔を除けらせ


「他には……おぉ!素晴らしいぃ!すぅばらすいぃぃぃっぃ!!エェェェクセレントゥ!」


とオルクスを見て叫んだ。




オルクスは身動(みじろ)ぎ1つせず止まったままだが、変人はさらに俺の隣に座るマーメイドにも声をかけた。


「そちらのお嬢さんも素晴らしいぃ!素晴らしいぃぃぃぃぃ!!マァァァベラァァス!」

「あら、それはありがとうございます。しかし、殿方とお茶を嗜んでいる時に声をかけるのは不作法ではなくって?」


シーラは笑いながら感謝を述べているが、目は一切動いていない。

そして変人はオルクスとシーラの間にいた俺には目もくれず、シーラを見て会話を続ける。


「おぉ、それは貴女の言う通りっ!エグザクトリィ!!それでは私は隣の方から不興を買う前に退散するとしましょう。アァディオス!!」


綺麗なお辞儀をすると、そのまま背を向けた。

さっさとこんな変人、視界から退いて欲しいところだが俺にもやらなければならないことがある。


「おい、そこの変人」


俺はつい立ち去る変人を呼び止めてしまった。


「そこの変人。お前のことだ」

「おっと、私は変人ではございませんっ?貴人ですぞ、お間違いなくっ」

「そうか、変人。それよりも、お前は()()から来た?」


ジリト王国から来たなんて下らない答えを求めてなんていない。

もし仮に俺と同じ状況なら、分からないか遠い場所、それかNRGの地名が返ってくるはずだ。

少しばかりの間を開けると、変人は肩を透かして振り向いた。


「教えたくありませんな。なぜなら貴方はつまらない。本当につまらない!!ソゥアグリィ!!」

「……」

「おっと怒らせてしまいましたかな。ですが、ですが本当のことなのですっ!!しかし、しかぁし!!止めて頂いたことには感謝しますぞっ!!サァンキュゥゥ!」


変人の視線がオルクスの鎧とシーラの杖を押さえつけていた俺の手に移る。


「ふん、俺からすれば怒らせた自覚があるって方が驚きだな。普通は怒らせないか、怒らせたと思ったらすぐに尻尾を巻いて逃げ出すだろ」

「ふぅむ。それは貴方の言う通り。言う通りっ!エェグザクトリィィ!!ですが今の私ならば、逃げるだけならば容易い。容易いのですっ!!ソゥイィジィィ!!ですから私を追いかけるような無粋なマネは……」


そう言いかけた変人だったが、変人が入ってきたのと同じくらい激しいドアの開閉音が鳴り響くと、今度は鉄の装備を着こんだ2人の衛兵が姿を現した。




「通報があって来たぞ!おう、お前だな人間ってのは」


「おぉ何と無粋な!!ソォアグリィィ!!見るに堪えられません!!」


「何言ってんだこいつは!!」


同じ人間のはずだが、亜人種の衛兵さんの方に共感してしまうな。

ただこの変人を見るためにも、敢えて俺たちは何もせず見守る。


「ふむぅ。無粋な輩もやってきたことですし、私はここでお暇させていただきましょう。オーディエンスの方々ぁ!またお会いしましょう!!アディオォス!!」


そう言うと……手をヒラヒラと振って歩いて行った。

は……?おい、今のところは魔法で逃げるところだろ?

なんで歩いて外出ようとしてんだよ!?


「うるせぇ!!おめぇみてぇな奴は大人しくしとけ!!」


恐らくリザードマン種の衛兵が、治安維持では使わないような鋭い槍を変人に突き出した。


隣のスーラーは目をそらし、周囲の亜人達は盛り上がる中、その槍は変人の肌にぶつかると……穂先が砕け散った。


「は……?はぁぁ!?」


衛兵は砕けた穂先を見て悲鳴を上げ、もう1人の衛兵は鋭い剣を突き出したまま動けずにいる。

訓練された兵ならば、不足の事態が起きても動けるようになって欲しいのだが、それは俺の求めすぎなのかもしれない。


「おぉ!ソォォォウィィィク!!ソォォォォウィィィィィクゥゥ!!」


顔をブルブルと横に振りながら叫んだ変人は、何かを思い出したかのように止めていた歩を進めだす。


「と、止まれぇ!」


「貴方がソォビュゥゥティフルになったら止まりましょう。それではアディオォォスゥ!」


そしてまるで何事も起きていないかのように、悠々と正面入り口から変人は姿を消した。


◇◇◇◇◇◇


変人のインパクトが強すぎて忘れかけていたが、俺たちはこのキセトの町の領主に、人間が攻めてくることを伝えにきたのだ。


だがこちらは何のインパクトもなく、小役人が出てきたかと思うと適当にあしらわれて終わった。


攻めてきたことすら信じている様子はなく、攻められても撃退したらいいと話す小役人に失笑が止まらない。


この楽観的な考えは、待ち時間が数時間あったにもかかわらず面会時間はほんの数分で終わったことからも分かる。


「以前偵察らしき人間を撃退したこともあって……その時も同じ対応でして……」


何度も何度も頭を下げながら言うスーラーの言葉に、またしても失笑してしまう。


「ふ~ん、ということは準備期間があったにも関わらずこの状態、と。ここの領主が超絶無能なのか、それとも最強の隠し兵器を持っているのか、はたまた俺たちの知らない撃退法を持っているのか、どれだと思う?」

「そうね~。私は超絶無能に一票かしら」

「我も、きっと、思う」


ん~、俺も超絶無能に一票かな。

だからと言って放置したままにすると、間違いなく人間に占拠されてしまうだろう。




そうなってくると……。


「オルクス、シーラ、スーラー、守っておきたい場所はあるか?今日はもう夜遅いから泊まることは確定だ。だから、その間だけなら自由行動できるぞ」

「我、無い」

「ん~?無いかしら。あ、娼館をお願い!」

「え?じょ、城壁でしょうか?」

「シーラは娼館、ね。それじゃあ、これを置いてこい。スーラーは守りたい人と言えば分かりやすいか?」


俺はシーラに小さなトーテムを投げ渡すと、彼女は嬉しそうに夜の町へと消えていった。

そしてスーラーはまだ理解できていないようで、頭を傾げて考えている。


「いえ……ないと思います」

「そうか。じゃあ、ちょっと俺たちは酒場に戻るぞ」


俺はオルクスとスーラーを引き連れ、あの場末の酒場に戻るのだった。




「店主!まだやってるかぁ!」


夕食というには遅い時間だが、すでに帳の落ちたカウンターに向かって俺は叫ぶ。

すると食材にしか見えない豚が、心許なく灯る小さな燭台を引っ提げてやってきた。


「あんだ、兄ちゃんまた来たのか。今日はもう店じまいだよ」

「もう?早くない?」

「あぁ。ちょっと早いが人間が来てたってことで客足が遠のいたんだよ。それでもやってくる物好きはいるが、そのための蝋も馬鹿にならねぇしな。もう(かまど)の火も落としたから何も出せねぇよ」


豚の店主が顎でしゃくった先には、蝋のない燭台がテーブルに並んでいた。


「ふむ……まぁそれはいいとして、ここってもしかして宿もやってる?」

「おう、一応やってるぞ。けどこんな辺鄙(へんぴ)なところに来る奴もいねぇから、掃除してねぇんだよ」

「それで大丈夫だから泊めてくれよ、店主」


そう頼むが店主としての意地なのか、頭を掻いて悩んでいる。


「それじゃあ店主。旅の途中で見つけた珍しいアイテムがあるから、これで泊めてくれよ」


俺はさっきシーラに渡した小さなトーテムを取り出す。

旅の途中って言うのはダンジョンの中であり、珍しいっていうのは異世界だから嘘の事ではない。


「あぁ~そうだな。じゃそれが代金ってことで。ただこの酒場に飾れる場所がなぁ……」

「自室でも大丈夫だぞ。ただ珍しいからって売るのだけは勘弁な」

「わぁってるよ。流石に俺もそこまでがめつくねぇやい」


豚ってがめついイメージがあるんだけどなぁ。

そんな言葉を飲み込み、俺たちは店主の渡してくれた鍵を持って2階へと上がった。


きっと今日の夜、シーラは帰ってこないだろうけど、一応仲間たちには泊まるって連絡をしておこう。


今は別々に行動している仲間たちの安全……いや暴れていないことを祈って、俺は各自に連絡を入れるのだった。

小さなトーテムや一つ屋根のお泊りの内容を入れたかったけど、変人の分量多くし過ぎたので割愛しました。

ただ小さなトーテムの効果は、後日必ず出すのでそれまでお楽しみに。


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