最終章 四十二話 蘇った者。ありえない風景
食事を終え、横断歩道の先へ行き、都へと消えていく麓を見送ると快はジェネルズとグリードの方へと振り向く。
「にしても、二人とも。死者が生き返るなんてこと……ありえるの?」
「いや、極めて特殊な事象だ。大体、アイネスのような半人半霊状態でない限り、物理的に地上界に存在する事はできない。あのちはに渡した石……待て? あの軍人もどきが蘇ったなら、ギルバルトやあの子供達はどうなったのか気になるな」
グリードが言うと、ジェネルズが次いで反応を示す。
快は、ジェネルズの発言するであろう言葉を想像し、嫌な感触を覚えていた。
その嫌な感触に、答えるかのようにジェネルズは発言した。
「ワシがうっかり殺した輩がどうなったのかも、気になる」
「うっかりで殺すなジェネルズ。二度と――まぁ、そんな貧相な体じゃもう何もできないだろうが」
「くっ……まぁ、この情けない体を隠すのに一役買っている衣装を選んでくれたことには感謝しよう」
「昔から着ている黒い革ジャンに似た衣装に対して、白い皮のロングコート。紫のインナーに対して黄緑のインナー。逆の趣味逆の考え方だけど服を買ってあげたり考え方を深く知ってるみたいだし仲が良いんだか悪いんだか……とにかく、あのグループホームへ行ってみようよ」
快の提案に、グリードが頷くと、ジェネルズは顎を擦り、考え込む。
快がその様子を見て、ある事に気付く。
ジェネルズの存在は、一部を除いて知らない。
故に、正体を隠す必要があったに違いなく――それについて、考えていたのだ。
「グリードの双子の兄弟。それでいいだろう?」
快が言うと、ジェネルズは渋々頷く。
不本意ながらであろうことがわかる態度だった。
グリードはそれを見ると、快とジェネルズの服の裾を掴もうとする。
その瞬間。
「見つけたぞ……見つけた見つけた見つけた見つけた!」
何かが、飛来する。
快の頬を、飛来した物体がかすめ、頬に血が滴り始めると快は左側を見る。
そこには、道路の先で短剣を構える、どこかで見た少女の姿があった。
短剣を握りしめながら、行き交う車のバンパーを踏み台にするように飛び越え、襲い掛かってくる少女に、快は思わず地面を踏みしめ構える。
「愛魅さん!? 死んだ筈じゃ……!?」
「この復活も主のお導きによるものに違いない。だとしたら、あいつも生き返っている筈……まずは、お前の首を土産に持っていかなきゃ、仇討ちにならんでしょうが!」
「狂ってる……いや、元からか? 元以上になんか狂信者じみてるけど……逃げる他にないか!?」
快が後ろに全力疾走し、突進し、グリードとジェネルズの間をすり抜けていく愛魅。
愛魅と快の背後から、距離が僅か2㎝程度に迫って行くと。
愛魅の進撃が止まる。
愛魅が後ろを振り向くと、そこには白装束をつまむジェネルズの姿があった。
「信徒よ、愚かで愛おしきワシの信徒よ……もうよせ」




