十九話 幼馴染と合宿の準備
それから琴葉と一緒に登校し、一時間目。
「はい!じゃあこれから合宿の班決めを行います!」
始まったのは林間合宿の班決めである。
一年生の4月に行われる林間合宿。これは、俺と琴葉が所属する普通科特進コースやスポーツ科等、校内の全学科が共同で行うものだ。
何故共同で行うか、理由は簡単。他学科とも交流を深め、生徒の視野を広げるためである。しかし……。
……思うに、これだけの人数が参加する合宿。それは琴葉と一緒の班になれる確率が限りなく低くなるということではないだろうか。
これは班決めのルールにも左右されるから、俺には祈ることしか出来ない。
「何事もなく琴葉と一緒の班になれますように……何事もなく琴葉と一緒の班になれますように……何事もなく――――――――――――」
「もう!綴君、うるさいです!」
念じていると琴葉にピシャリと叱られてしまった。おっと、心の声が漏れていたようだ。一応謝罪を述べておく。
「……ごめん、悪かったよ。でもさ、琴葉は俺と一緒の班になりたくないわけ?」
俺がそう聞くと、琴葉は弱々しく答えた。
「う、確かに綴君が居てくれれば心強いですけど……」
琴葉は大の人見知りでもあり、知らない人への対応は非常に素っ気ないものだ。
だから、彼女一人となると上手くコミュニケーションが取れるか心配だし、もしかしたら周囲から批判を集めてしまうこともあるかもしれない。彼女自信も、それが不安なのだろう。
何より、自分のいないところに琴葉が行ってしまう事が心配だった。
俺がそんなことを考えていると、琴葉がムスッとした顔をする。
「……綴君、何ですかその小さな子どもを見守るような目は」
流石は琴葉である、俺が考えていることを目線だけで察してくれるとは。でも、俺がそう思うのも無理はないと思う。
だって彼女はどこか子供っぽい一面も持ち合わせているし、クールな雰囲気に反して打たれ弱いその姿は非常に庇護欲を掻き立てる。
それはともかく、これ以上琴葉の機嫌を損ねる訳にはいかない。そう思った俺は琴葉に優しく語り掛けた。
「いやー、やっぱり琴葉の事が心配でさ。だって滅茶苦茶美少女だし、出来る限り傍に居てくれた方が俺も安心っていうか落ち着くっていうか?」
そう言っても、なお彼女は不満げな表情をしている。
「むぅ……。それを子ども扱いだと言っているんですよ!」
俺達の押し問答は、先生から叱責されるまで続いた。
「では、これにて林間合宿の説明を終わります!皆さん、先程言った通りにグループを作ってください」
そう言われて、生徒達は一斉に立ち上がった。これから俺達はグループを作らなければならないのだ。
まず、班分けのルールを簡潔に説明しよう。
まず同じ学科内で、出席番号が前後二人の者を1ペアとする。そして、次に他学科のペアとグループを作り完成だ。
佐々木綴の"さ"と白雪琴葉の"し"、気づいた人も多いだろう。
そう俺達、出席番号が前後しているんですよ!この"奇跡"は神様からの贈り物であろうか。俺は、その運命の素晴らしさをしっかりと噛み締めた。
それから数分後。俺達はグループを作るべく他学科ペアを探していた。
「綴君、他学科の方とグループを組むみたいですが、当てはありますか?」
そう琴葉に聞かれた俺は、勢いよく答える。
「当てはない、俺に必要なのは琴葉、君だけだよ」
「良くそんな馬鹿げた台詞、恥ずかしげもなく言えますね……」
琴葉は呆れたように呟いた。まあ、冗談はさておき、だ。
「実際に組むとして、琴葉はどんな人達が良い?」
俺が聞くと、琴葉は答える。
「うーん……。なるべく大人しい人達と言いますか。少なくとも私に対して、不必要に絡んでこない人間を望みますね」
おぉ……。流石は琴葉、これからも"俺以外の"近付いてくる男子全員を、その態度で撃退してほしい。
「あー、俺としても琴葉が野郎に話し掛けられているのを見ちゃうと嫉妬してしまうしな」
琴葉は世界一の美少女といっても過言ではないから、色恋沙汰が起きることも大いに考えられる。勿論、そんな状況に陥ったら俺は一切譲らないが。だけど、折角の合宿だから揉め事は起こしたくない。
なるべく平和な林間合宿を送りたいな。そう思っていると、
「お、そこの二人!俺達と一緒にグループ作ろうぜ!」
「てかてか、横の子めっちゃ可愛くね?」
……スポーツ科の野郎二人組が馴れ馴れしく声を掛けてきた。下心丸出しの、醜い表情で。
「……どうする、琴葉?」
また面倒な事になりそうだ。そう思いながら俺は牽制の意味も込めて、琴葉を庇うように前に立った。
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