THUTHES
2ヶ月後。
初めてのステージはあっという間にやってきた。
問題はこの時点でまだメンバーに会ったことがないって事。
ありえなくない⁉︎
サトツさんに聞いてものらりくらりとはぐらかされ、そうこうしているうちに当日なんですけどー⁉︎
朝、サトツさんは打ち合わせがあるとかで先に家を出た。
公園でやるイベントのステージで2曲だけの演奏。
初ステージにはそれくらいが良いのかな?
バンド自体が初めてなので基準がわからない。
とりあえず、待ち合わせ場所へ行く。
時間よりかなり早く着いてしまった。
まだまだ土地勘がないから迷ったりしたら大変だと思って早めに出たんだけど、意外に迷わず着けちゃった。
近くに時間潰せる場所あるかな…。
『りえ?』
突然、名前を呼ばれて振り返ると懐かしい顔がいた。
『え、えー!どうしたの⁉︎偶然⁇』
なんと、小中と同級生だったまなみ。
中学の時は結構仲が良くて、進学してからもちょくちょく会ってた。
社会人になってからは疎遠になりつつあったけれど、それでも年に数回は連絡を取り合っている。
『びっくりだよねー。地元じゃ全然会わないのに、こんなとこで会うなんてさ!』
まなみも同じ感想みたい。
『もっとびっくりなのがさ、あっちに啓太達もいるんだよ!』
啓太も中学の同級生。
『まじ⁉︎え?一緒にきたの?』
『いや、偶然なんだよね。ヤバくない⁉︎』
どんな偶然だよ。
まなみに連れられて行った先には同級生大集合。
えー⁉︎
まなみと一緒にきた、さやかちゃん、ともこ。
啓太と一緒にきた、まさき、さとし、ひでくん、それから、りょう。
実は、りょうは当時好きだった相手。
会ったのは卒業以来だから、10数年ぶり。
私が姿を見せると、皆んなも似た様な反応。
全員同じクラスだったメンバーだ。
こんな偶然ありえなくない⁉︎
と、大盛り上がり。
当然、何しにきたのー?って話になった。
私は、イベントに来て待ち合わせの相手待ってるーって軽く答えた。
男子達はステージで出るバンド目当て。
女子達も同じく、らしい。
あら。
私ってば一応出演者側なのに今日のステージに誰が出るのか全く知らないわ。
啓太がパンフレットを見せてくれた。
何組か名前が載っている中に『THUTHES』の文字もあった。
どうやら、バンドだけではないみたい。
りょうが横から会話に入ってくる。
『俺、ジーザス大好きなんだよ!』
ジーザス。
へぇ。
どれだろ………。
『ごめん、どれ?』
りょうが仕方ないなーって調子で指を刺す。
THUTHES
ジーザス…。
…。
……。
『えぇー⁉︎』
私の声に、周りにいたりょうや啓太、まなみがびっくりする。
りょうがおもむろにCDを差し出す。
見たことないジャケット。
『L.Cのリュウが新たに結成したバンドでさ、今結構人気あるんだけど、知らない?』
全然知らない。
そういえば、ここ暫くテレビなんてほとんど見てないや。
歌詞カードを見ると、知ってる曲ばかり。
待って。
CDデビューしてるの?
『リュウがさ、里津隆平っていうんだけど、今はサトツって名乗ってて、サトツ以外のメンバーが全員謎で、今日のステージが初ライブなんだよ!』
待って、待って。
確かに初ライブだし、メンバー全員謎だけど。
え?
私、ここのボーカル?
あれ?
どういうこと?
サトツさんて名字なの?
混乱していると、後ろから腕を引かれた。
バランスを崩して倒れかけたが、後ろにいた人物に支えられて腕の中に収まった。
振り返ると、サトツさんがいた。
『リュウ⁉︎』
りょうが叫び声を上げそうになって、サトツさんはシーっと自分の唇に指を当てた。
『今はサトツで売ってるんだけどね。ステージ前だから内緒にしておいて』
と言うと、同級生達が大興奮。
『りえとどう言う関係?』
と、みんな困惑している。
『ごめんね、そろそろ準備しないと。』
そう言ってサトツさんは呆然とする同級生達を尻目に私の手を引いて歩き出した。
訳がわからず、混乱したままサトツさんに連れられて大型のバンに乗せられた。
そのまま着替えを渡される。
白い皮製のパンツに、同生地のアシメデザインのワンピース?の様な衣装。
着替え終わると1人の女性が待っていてメイクを施され、髪をセットされる。
メイクが終わると目元以外にはベールを巻かれた。
そこでようやくサトツさんが入ってきた。
『携帯鳴らしても出ないから焦ったよ…。』
もう何が起きてるのか全くわからない。
『一緒にいたの、誰?』
なんだか、いつもと雰囲気が違う?
服装やメイクのせいもあるけれど、それとは違う、なんか怒っている様な…。
『地元の友達。偶然会って…。それより、サトツさんに聞きたいことが…』
『バンドの事?』
無言で頷くと、サトツさんは長いため息を吐いた。
『ライブが終わったら話すつもりだったんだ。とりあえず、今だけはライブに集中してくれないかな?メンバーも外で待ってる。』
混乱状態のまま、バンからおりると、黒い衣装に身を包んだ男性と思われる人物が3人。
私と同じく、目元以外は顔を隠している。
写真で見るメンバー達と同一人物かは分からない。
けれど、サトツさんに紹介されると、見た目とは裏腹に軽い感じで声をかけてくれた。
『初ライブ、キンチョーしてる?俺らが一緒だから大丈夫だよー!楽しんで来よう!』
目元が笑っている。
うん、とにかくライブを成功させよう。
たった2曲だけど、この日をとっても楽しみにしてたんだ。
ステージには発表会で2回立った。
とっても緊張したけれど、それでも人前で歌うことの快感も知っている。
サトツさんに目を向けると、いつもの穏やかな表情で頷いた。
大丈夫、1人じゃない。




