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10、侍の成長

長い間休止してましたがこのたび再開いたしました!

相変わらずの亀更新ですし、また途切れてしまうこともあるかもしれませんが、これからもシューゴたちをよろしくお願いします><

『てぃっ!やぁ!うぉっあぶねっ!』



最前線の手前あたりで交戦中のシューゴは、修行で思い出した剣道の身のこなしを活かして順調に敵を倒していた。

基本的には自分は動かず、次々と襲い来るゴブリンの攻撃を避けつつ切り付ける戦法だ。磨きあげられた動体視力は武器の軌道をしっかりと見切っていた為、シューゴの身体には未だ傷一つなかった。



不意にシューゴは敵の勢いが弱まったことに気付き、これはチャンスだと言わんばかりに猛進し、ゴブリンの一団を切り捨てていく。



『これで・・・100人目っ!!』



周りにいたゴブリンを全て切り伏せ、満足げに辺りを見渡す。

・・・しかし、シューゴは違和感を覚えた。



『なんか静か過ぎるような・・・』



そう、シューゴの周りには味方はおろか敵の一人さえいなかったのだ。いつの間にか戦いの喧騒は遠くなり、彼は完全に孤立状態にあった。

さっきまで自信満々で戦っていたが、一度冷静に周りを見るとさすがに不安感が募る。戦場の最前線辺りを見ると、火柱が上がったりゴブリンが宙を舞っていたり、とにかく混乱していることには間違い無かった。そんなところに飛び込んでいって生きて帰れるだけの実力は無いと思ったシューゴは町の防衛に回ろうと戦場に背を向けた。

が、そのときシューゴは見た。



『・・・なんだ、あれ?もしかして・・・』



少数のゴブリン隊が木陰に隠れて何か輸送しているのだ。それは巨大な鉄球のようなもので、ゴブリンが作ったにしては表面の粗が少なく、精錬されていた。しかも綺麗な球の形をしていた。

恐らく作ったのはゴブリンではなく人間。それも正確な機械だろう。しかし、この世界ではシューゴのいた世界ほど化学や機械の技術は進歩している様子は見られない。これはどういうことなのか。



シューゴは身を隠しながらひっそりと輸送隊を尾行する。

突然、一匹のゴブリンが木の根につまづき転んだ。それと同時に支えを一つ失った球体はバランスを崩してドスンと地面に落ちる。



『バカヤロー!魔法爆弾が爆発したらどうするんだ?!』



チーフと思われるゴブリンが下っ端を小声だが強く叱った。

そいつが言った「魔法爆弾」という言葉で球体の謎は解けた。あれは魔法で作られたものなのだ。

しかしシューゴは「魔法」よりも「爆弾」という単語の方に気を取られていた。



『(あいつら、あの爆弾を町にこっそり持って行くつもりか!)』



このままでは町が直接爆破されてしまい、拠点が無くなってしまう。もはや、寄せ集めの傭兵軍には戦う理由が無くなってしまうのだ。そうなってしまってはシューゴたちに勝ち目は無い。なんとしても起爆は阻止しなければならないのだ。



シューゴは尾行を続けながら、どうやって阻止するのかをひたすら考えていた。

もちろん、自分一人の力でなんとかできるわけがないから、味方に状況を知らせるのが得策だ。

ならばどうやって知らせるか・・・。そこまで考えたところで、シューゴはポーチの中に開戦前にラマから渡された小さな箱があったことを思い出した。もし危険な状況に陥った場合、迷わず開けるように、と持たされていたのだ。



『・・・開けてみるか』



シューゴはそっと蓋に手をかけ、箱を開けた。

すると、箱から赤い閃光が飛び出し、「パーン!」と音をたてて上空で炸裂した。

どうやら危険時の発光信号だったらしい。だが、それを使ったことで、状況は一変した。



『なんだあれは・・・っ!あいつは?!くそっ、尾行(つけ)られてるぞ!急いで運べ!』



発光信号は敵味方関係なく感知することができる故、それに気づいた輸送隊に尾行していたシューゴが見つかってしまったのだ。

ゴブリンは慎重さを忘れ、一気に走って町を目指す。こうなったらもう尾行なんて意味がない。なんとかして爆弾を止めなければいけない。



『まてよ!くっそー、早く来てくれ!』



増援を待つ暇はない。シューゴは走るゴブリン達を追いかけ、とりあえず動きを止めることにした。

巨大な爆弾を持ったゴブリンに追いつくのは造作もないことだが、もちろん向こうも黙ってやられる訳にはいかない。少人数だが護衛の兵が追いかけるシューゴを止めようとピッタリ横に張り付き、武器で攻撃を仕掛けてくる。



『邪魔すんな!この!』



シューゴは攻撃を走りながら刀でいなし、反撃する。が、相手も精鋭らしく、シューゴの攻撃も軽々と避けられてしまう。



『ふん!小僧ごときにやられる我輩ではないわ!さっさと死ねぇ!』


『俺だってお前にやられるつもりはないぜ!おっさん!』



ゴブリンの攻撃はシューゴの脚を狙った。シューゴはそれを跳んでかわすが、実は誘いだった。



『(甘いわ小僧!これが実力の差だ!身動きできまい?)』



ゴブリンはしたり顔で空中のシューゴを狙い、渾身の一撃を繰り出した。



『死ねっ、小僧!・・・ぐぉおっ?!』



しかしシューゴはすかさず空中から刀を地面に突き刺し、それを踏み台にして動きの自由を得た。そして一瞬の差のカウンターで蹴りを入れたのだ。

シューゴの蹴りをまともに食らったゴブリンは激しく後ろに吹っ飛び、目を回して気絶した。

だが、護衛ゴブリンを相手にしている間に輸送隊からはずいぶん離れてしまった。シューゴは再び爆弾の後を追う。



『くそっ、追いつかれてたまるか!てめぇら死ぬ気で走れ!!』



チーフゴブリンが叫んだそのとき、輸送隊の行く手を蒼い影が阻んだ。



『遅くなって申し訳ありません、シューゴさん。ところで、さっきの信号はこれのことですか?』



ラマは長槍で爆弾を示す。



『ったく、面倒かけないでよね!いいとこだったのにさ!』



木陰からリアが顔をだす。



『マスター、なにかあったのかにゃん?』



風と共にミズにゃんが現れる。



『いやぁ偶然にも危ないもん見つけちゃってさ。これ、やばいんだろ?』


『そうですね。町が一つ跡形もなくなります』



さらっと恐ろしいことを言うラマ。だが皆して同じく、少しの焦りもなかった。全員が仲間を信用しているからこそ、冷静に事を運ぶことができるのだ。



『とりあえずこいつを破壊するのが最優先ね』


『護衛はどうするにゃん?』


『破壊対象が爆弾である以上、あまり大技を使う訳にはいきませんね』


『一人ずつ倒していくか?』


『いえ、それでは取り逃がす恐れがあるので破壊役を決めましょう』


『あたしとラマは攻撃が広範囲で派手過ぎるから除外ね。にゃんでは火力不足だし残りは・・・』


『えっ、俺か?!』


『あたいの爪ではあんな大きなのは無理だにゃ。マスターにお願いするにゃん』


『そうですね。シューゴさんなら誘爆の可能性が一番少ないですから』


『・・・わかった、やってみる!』



相手に筒抜けの作戦会議が一段落ついたところで、最初に動いたのはミズにゃんだった。鋭い爪が護衛ゴブリンの喉元に深々と突き刺さり、抵抗する暇もなくゴブリンは動かなくなった。

それに続き、リアとラマも戦闘に加わった。シューゴは爆弾を斬るチャンスを窺いながら輸送隊が前に進まないように足止めする。

が、気がつくとどこからともなくゴブリンが湧いてきていた。先程の発光信号は味方だけでなく、もちろん敵にも見えるものだ。敵は裏の作戦を知っているわけだから、信号の位置を見て、発見されたことに気づいたのだ。



『くそっ、敵が多くて近づけないじゃないか!』



シューゴは行く手を邪魔するゴブリンを次々に切り伏せながら爆弾に近寄ろうとするが、集まってきたゴブリンが多過ぎて戦場は混乱し、近づくどころか目視することも難しい。

そんな中、輸送隊は着々と逃げ道を確保し、町へ向かって動いていた。



『シューゴさん!敵が逃げます、追ってください!!』



上方からラマの声が聞こえたかと思えば、シューゴの前方の地面を砕いて一時的にゴブリンを一掃していた。



『雑魚はすぐに集まります。その前に早く!』



ラマに促されたシューゴは全速力で輸送隊を追って走った。町はもうすぐそこまで近づいていた。これ以上の接近は危険だ。

しかも、ラマの言った通り敵の増援は止まらず、シューゴに纏わり付いてくる。その勢いはどんどん増していき、ついにシューゴは倒れ込んでしまった。

このままでは町に爆弾が・・・!



『・・・?』



そのとき、シューゴは不思議と身体が軽く感じた。

纏わり付くゴブリンは何かに驚いたようにシューゴから離れた。その隙を見てシューゴは一気に駆け抜けた!周りのゴブリンはなんとかシューゴを止めようと飛び掛かるが、彼の無駄のない動きと早過ぎる反応速度の前では動いていないようなものだった。



『いける・・・!邪魔だぁっ!!』



目の前に現れたゴブリンを拳で圧倒したシューゴは、刀を鞘に納め、修行で身につけたことを思い出す。

ほとんど無意識に走り、ついには輸送隊に追いついた。


『はあああああっっ!!』



シューゴは一気に地面を蹴り、輸送隊を追い越すと同時に刀を振り抜いた!

・・・その刹那の後、シューゴの背後には真っ二つに割れた魔法爆弾が転がっていた。一瞬の静寂が戦場を包む。それを破ったのはリアの歓声だった。



『やったあぁーー!!』



作戦が失敗し逃げ出すゴブリンには見向きもせず、リアは一直線に駆け出してシューゴに飛び付いた。



『やった!やった!勝ったよー!』


『わわっ、リア!危ないって・・・うわっ』



あまりの勢いに耐え切れず二人して倒れ込む。

仰向けに倒れ空とリアを見上げるシューゴの目線にラマとミズにゃんも加わった。二人ともホッとしたような顔をしていた。



『お疲れ様だにゃん、マスター!』


『これでこの戦場も収束するでしょう。残っていたゴブリンの大半がこちらに来ていましたから、今頃は本隊が敵地を占拠しています』



お疲れ様です、とラマが右手をシューゴに差し出す。それを掴み立ち上がったシューゴが一番ホッとしているようだった。



『あ゛ーーっ、疲れたー、帰りたいー!』


『あたしも帰って寝たい!』


『それでは後は任せて町に帰りましょうか』


−−−−−−−−−−−−−−−


宿にたどり着きベッドに飛び込んだシューゴは翌朝になってやっと目を覚ました。



『うわっ・・・髪ボサボサだよ・・・そういえば風呂にも入ってないな』



シューゴは汚れた服を着替えた後、部屋に備え付けの洗面所へ行って顔を洗い、髪をセット(といっても整髪料もなにもないから洗って乾かすだけだが)する。

大きなあくびを噛み殺し、階段を下りた先の食堂へ出向くと、すでに3人の仲間が食事をしていた。



『おはようございます、シューゴさん。よく眠れましたか?』



いち早くシューゴに気付いたラマが未だ眠たそうに席についた彼に声をかけた。



『爆睡だったけど疲れはとれなかったよ』


『しかたないわね、何たって昨日はシューゴの初陣だったんだから』



ミズにゃんと並んで何人前かわからない程の朝食を掻き込んでいたリアが顔を上げ、ラマの隣に座ったシューゴに一瞥する。

ミズにゃんは食べ続けている。



『そういえば、ギルドからの報酬で一人あたり十万ベース支給されましたよ。これはシューゴさんの分です』



どさっ、とテーブルに袋が置かれた。シューゴが中を見ると、金貨がたくさん入っていた。これでしばらくは食糧に困ることはないだろう。

そもそもシューゴたちが戦いに参加した理由は、すられた分の金をとりかえすためだったが、シューゴ自身はそのことをすっかり忘れていた。



『さてと。お金も手に入ったことだし、次の町に向かうか?』


『シューゴさん達はどちらへ向かうのですか?できれば私もご一緒させていただきたいのですが・・・』


『ほんと?!もちろん大歓迎だよ!シューゴじゃ頼りないしね。あたし達はずーっと東にある辺境の村に向かってる。あまりにも遠いから町を中継していってるの』


『そうですか。では途中にあるゲールの町に寄っていきませんか?』


『ゲール?!あたし一度行ってみたかったんだ!』



ゲールとはシンフォック地方で最大級の大都市で、シューゴのいた世界で言う東京のように、田舎に住む人が一度は訪れたい場所なのだ。


『じゃあ次の目的地はゲールに決定!出発は今日の昼ね!』


『あ、あぁ。わかった』



シューゴが全く話についていけない中、リアは相変わらずの勢いで勝手に話を進めていったのだった。

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