1、すっぴんが異世界へ
『はぁ・・・、これは思ったより遠いな・・・』
一人の少年がぶつくさとぼやく。色白なその少年は髪を茶色に染め、俗に言う今風な服をコーディネートして着ていた。その姿はチャラいようにも見えるが、見方によっては好青年にも見えるかもしれない。
『ケータイは今だに圏外か・・・。山奥でもないのに繋がらないってことはいよいよ怪しいな』
今すぐツイートして情報を集めたい少年にとって、ケータイが使えないのは痛かった。
少年の名はシューゴ。
彼は今、右も左もわからない世界にいる。
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高校生活を快活に過ごしていたシューゴは、ある日、信号を無視してきた車に轢かれた。
シューゴは自分の身体が宙に浮くのを感じながら、声を聞いた。誰かが叫んだわけでも、自分が呻いたわけでもなく、頭の中に直接響いてきたのだ。
そして身体が地面にたたき付けられたが、そこはコンクリートの道路ではなく石畳の上で、周りの景色も違っていた。
『ここ・・・どこだ?』
訳もわからずしばらく呆けていると、変な服を着た壮年の男が近づいてきた。
『どうした小僧、こんなストリートにいたらカツアゲされちまうぞ。迷ってるんならとりあえず俺についてきな』
シューゴはとりあえずついていった。
アーチのようなものをくぐってしばらく歩くと、壮年の男が再び話しかけてきた。
『ここまでくれば安全だ。ここをまっすぐ行けば宿場街だからそこへ行きな』
シューゴは自分の置かれている状況を思いだし、男に尋ねた。
『ここ、どこですか??』
『なんだ、異国のものか?どうりで見慣れない服を着ていると思った。しかしどこと聞かれてもなぁ。なんせ俺は教養がないから。とりあえず街まで行けば誰かが教えてくれるだろ。じゃあな』
そう言って男は去ってしまった。
仕方なくシューゴは男の言った通り、まっすぐ街を目指すことにした。
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『あっ、見えてきた!』
かれこれ3時間歩き続けたシューゴは一目散に駆け出した。とにかく街で休みたかったのだ。
街に着いたシューゴは宿を見つけ、中に入る。入ってすぐのカウンターに人が立っていた。
『一泊10ベースになります』
『ベース??』
ウエストポーチをごそごそと漁ると、入れた覚えのない小さな巾着を見つけた。その中には十数枚の銅貨が入っていた。銅貨には「10」と書いてあったが、円とは絵柄が違っていた。
シューゴは銅貨を一枚渡し、宿の人に案内されて部屋へ。
部屋のベッドの上でシューゴは考えを巡らせていた。
『たしか・・・車に轢かれたんだよな。そしたら変なところに落ちて・・・。くそっ、情報がなさすぎだろ。そういえばあの声・・・』
轢かれたときに聞いた声は、『ギルドで待ってる』という一言だった。
『ギルド・・・ここにあるのかな?よしっ』
シューゴは街を探索することにした。
街にはビルのような高層のものはなく、背の低い建物がたくさん並んでいた。その中に、一際目立つ大きな建物があった。
『すみません、あの建物はなんですか?』
『あれかい?あれは冒険者ギルドの出張所だよ』
『ギルド・・・!』
どうやらギルドはあれで間違いないようだ。シューゴは足早にギルドと呼ばれる建物へと向かう。
建物正面の大扉の前には、少女が立っていた。少女はショートカットの茶髪にTシャツ、短パン、ニーソックスでボーイッシュな格好をしていた。今まで見た人達と違う感じがしたのは、シューゴと似たような性質の服だったからだ。
少女はシューゴに気づき、駆け寄ってきた。背はそんなに高くない。
『キミ、シューゴだよね?』
『・・・!』
シューゴは驚愕した。その少女の声は、まさに捜していたあの声そのものだったのだ。




