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悪女と謳われる王女は、国を滅ぼそうとした暗殺王子の愛に気づかない  作者: 凪塩 未来


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第5話:公式会談の罠と、王子の宣戦布告

第5話をお読みいただきありがとうございます!


ついに公式使節団としてロンファ王国の謁見の間に乗り込んできたミカエル。周囲の大臣たちが緊張に震える中、彼が繰り出したのはなんと「世界に響き渡る公開プロポーズ」でした。完璧な悪女を演じていたモナミが人生最大の動揺を見せるこの大波乱の展開、ぜひたっぷりとお楽しみください!

ロンファ王国の王宮、その最も格式高い大謁見の間には、両国の運命を左右する公式会談の席が設けられていた。天井から下がる巨大なシャンデリアの光が、磨き上げられた大理石の床に眩しく反射している。


上座の王座のすぐ脇に立つ第二王女モナミ・ロンファは、純白のドレスに身を包み、完璧なまでの「冷酷な悪女」の笑みを貼り付けていた。その視線の先では、大謁見の間の重厚な両開きの扉が、ゆっくりと音を立てて押し開かれようとしている。


「――ラザード王国第一王子、ミカエル・ラザード殿下の御一同様のご到着です!」


高らかな告げ声とともに足を踏み入れてきたのは、漆黒の軍服を隙なく着こなしたミカエルだった。その端正な顔立ちは冷ややかな気高さを湛え、一歩進むごとに周囲の空気がピリと引き締まる。かつての夜の侵入者としての面影を消し去り、彼は紛うことなき敵国の第一王子、そして恐るべき秘密組織の首領としての威圧感を纏っていた。


貴族たちや老練な大臣たちが息を呑む中、モナミの心臓はわずかに跳ねた。

(……ふん、相変わらずいい気なものだわ。今度は正面から堂々と、何のつもりで私を品定めしに来たのかしら)


ミカエルは謁見の間の中央まで進み出ると、国王に向かって深い一礼をした後、ゆっくりと顔を上げた。その深淵のような瞳がまっすぐ捉えたのは、王座の傍らに立つモナミの姿だった。


一瞬、ミカエルの唇の端が、誰にも気づかれないほど微かに、しかし確かに弧を描いた。


「ラザード王国第一王子、ミカエルだ。長きにわたり対立を続けてきた両国であるが、本日、我々は真の平和と、そして『新たな秩序』について話し合うために参った」


ミカエルの低く響く声が、広間にこだまする。

ロンファ王国の宰相をはじめとする大臣たちは、「新たな秩序」という不穏な言葉にざわめき立った。戦争の宣戦布告か、それとも屈服の要求か。緊張が最高潮に達したその時、モナミが冷徹に言い放った。


「新たな秩序、ですか。我が国の防衛力と政治の足元を侮った発言だわ、ミカエル殿。あなた方の裏でのコソコソとした動きについては、我が国もすべて把握しているのよ? ここをあなた方の都合の良いように変えられるなどと思わないことね。……お飾りの使節団としての戯言なら、今すぐ聞き飽きたわ」


モナミの容赦ない毒舌が、謁見の間に突き刺さる。

大臣たちは「さすがはモナミ様だ! 敵の王子に一歩も引かない!」と安堵の表情を浮かべ、彼女を称賛する視線を送った。女生たちからは毎日のように陰口を叩かれるモナミだが、こうした公の場における圧倒的な「悪女」としての気高さと知性は、誰もが認めざるを得ない彼女の武装だった。


しかし、モナミから向けられた鋭い敵意の刃を、ミカエルはまったく怯むことなく、むしろ愛おしそうに受け止めた。


「おや、相変わらず手厳しい歓迎だな、モナミ王女。だが、言葉の裏にあるその強がりも、今日で終わりにしていただこう」


ミカエルは一歩、また一歩と、謁見の間の規定の距離を無視して王座の方へと歩み寄った。あまりの堂々とした振る舞いに、近衛兵たちが一斉に剣の柄に手をかける。


「なっ……! 無礼者、そこまでだ!」

宰相が慌てて声を荒らげるが、ミカエルは振り返りもしない。彼はモナミのすぐ目の前まで歩み寄ると、周囲の視線などまるで気にする様子もなく、片膝をつき、モナミの白く細い手を取りその甲に熱い口づけを落とした。


謁見の間が、完全な静寂に包まれた。


「……っ! あなた、何を……!」

モナミの完璧な仮面が、初めて派手に音を立てて崩れ去った。冷徹な悪女を演じていた彼女の美しい顔が、一気に真っ赤に染まる。


「宣言したはずだ、モナミ。僕は君を討ち取るためでも、国を脅かすためでもない。この腐敗した二国の歴史を終わらせ、君という孤高の悪女を僕の妻に迎えるためにここへ来た」


ミカエルは顔を上げ、甘さと狂気を孕んだ真剣な瞳でモナミを見上げた。

周囲の大臣や貴族たちは、何が起きたのか理解できず、ただ口をぽかんと開けて固まっている。


モナミは心臓の音がうるさいほどの動揺を必死に押し隠し、震える声で精一杯の毒舌を絞り出した。


「……ふ、ふざけないで。誰があなたなんかのお嫁になど……!」

「嫌だとは言わせない。君の改革案も、君の孤独も、すべて僕が引き受けると言ったはずだ。――さあ、二つの国の未来を賭けて、僕と契約を結ぼう、愛しい人」


敵国の王子による前代未聞の公開プロポーズ。悪女と謳われた王女の計算は、この瞬間、完全にミカエルの熱情によって狂わされてしまうのだった。

第5話「公式会談の罠と、王子の宣戦布告」いかがでしたでしょうか?


敵国の王子が公式の場であんな大胆な行動に出たら、王国中が大パニックになること間違いなしですよね。いつもは鋭い毒舌で周囲を圧倒しているモナミが、ミカエルの直球すぎる愛の告白(公開処刑とも言う)にタジタジになってしまうギャップが、書いていてとても楽しいシーンでした。


呆然とする大臣たちや、これから巻き起こるであろう周囲の猛反対を、二人はどうやって乗り越えていくのか――? 次回も波乱万丈かつ胸キュンな展開をお届けしますので、引き続きどうぞお楽しみに!

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