シーズン2 第8話:迎賓館の夜陰と、密かなる侵入者
シーズン2第8話「迎賓館の夜陰と、密かなる侵入者」をお読みいただきありがとうございます!
オルトリア王国の使節団が迎賓館で企んでいた「技術提携」という名の裏の陰謀を、ミカエルが夜陰に乗じて鮮やかに暴くスリリングな潜入劇を描きました。証拠を完璧に押さえ、翌日の謁見室での圧倒的な反撃へと繋がる緊迫の展開をぜひお楽しみください!
王都の夜空には、静かに星々が瞬いていた。
王宮の西側に位置する豪華な迎賓館――その一室で、オルトリア王国の特命全権大使レイヴン・フォックスは、窓の外の夜景を眺めながらグラスを傾けていた。
部屋の明かりは控えめに落とされ、テーブルの上には分厚い航海日誌や、東方海域の極秘の海図が広げられている。
レイヴンは満足げに鼻で笑うと、部下に声をかけた。
「昼間のモナミ王妃の反応は流石だったが、結局のところ、彼女たちも陸の上の覇権争いに夢中で、海の向こうの脅威までは見えていない。このまま巧みに交渉を進めれば、我が国の軍事拠点用の鉱石は確保できるはずだ」
「流石でございます、大使。ロンファ王国を出し抜けば、我が国の海上覇権は絶対のものになりますね」
部下が恭しく頷いたその瞬間――。
部屋の明かりが、一瞬にして消え失せた。
「……なっ!?」
驚愕の声をあげる暇すらなかった。
部屋の隅に漂っていたはずの影が、まるで生き物のようにうねり、一瞬にしてレイヴンの背後へとすべり込んだ。冷たく凍てつくような殺気が部屋の空気を支配し、レイヴンの首筋にピタリと鋭い短剣の刃が当てられる。
「……お喋りはそこまでだ。君たちが描いている甘い夢の設計図、もう少し詳しく聞かせてもらおうか」
それは、闇に溶け込んだ死神の如き低い囁き声だった。
漆黒の軍服を纏ったミカエルは、音もなく影から現れ、レイヴンたちの動きを完全に封じ込めていた。王国の精鋭警備網をあざ笑うかのように、迎賓館の内部へいとも簡単に侵入していたのだ。
レイヴンは冷や汗を流しながら、恐怖で震える声を絞り出した。
「き、貴様は……ラザード閣下……! ここは王国の迎賓館だぞ、大使である私に手を出す気か……!」
「大使? どの口がそれを言うのかい」
ミカエルは冷ややかに笑い、空いた方の手でテーブルの上に広げられていた極秘の海図をひょいと掴み上げた。
一瞥しただけで、その内容がただの「技術提携」などではなく、ロンファ王国の沿岸部にオルトリアの軍事用魔導艦隊を配備するための「侵略の布石」であることが露わになる。
「ほう……。技術提携の裏で、我が国の海域を我が物顔で封鎖し、背後から奇襲をかけるつもりだったわけだ。……ふん、自由都市連合の愚か者たちといい、どうしてこうも僕たちの機嫌を損ねる虫けらが次から次へと湧いて出てくるのかね」
ミカエルの琥珀色の瞳に宿る殺気は、獲物をいたぶる猛獣のように冷酷だった。
レイヴンは短剣の冷たさと圧倒的な死の気配に耐えきれず、その場で崩れ落ちそうになった。
「ま、待ってくれ……! これは交渉の布石であって……!」
「交渉? 残念ながら、君たちに弁明の機会を与えるのは僕の妻じゃない。彼女なら、明日のお昼の謁見室で、君たちのその浅ましい野望を音を立てて粉々に砕き散らすだろうさ」
ミカエルは冷たく言い放つと、海図をひらりと放り投げ、一瞬にして再び闇の中へと溶け込んで消え去った。
部屋に残されたのは、恐怖で全身を震わせ、冷や汗にまみれたオルトリアの使節団だけだった。
翌日の昼。
王宮の謁見室には、昨日とは打って変わって、冷徹な死の静寂が満ちていた。
玉座に腰掛けるモナミ・フォン・ラザードは、昨夜ミカエルが持ち帰った極秘の海図のコピーを優雅に指先で叩きながら、顔面蒼白で震えるレイヴンを氷のような瞳で見据えていたのだった。
シーズン2第8話「迎賓館の夜陰と、密かなる侵入者」いかがでしたでしょうか?
穏やかな外交の裏で、ミカエルが圧倒的な暗殺者のスキルを発揮して敵の極秘海図を奪い取るという、夫婦の圧倒的な連携プレーが光るエピソードでした。すべてを握られたオルトリア使節団が、昼の謁見室でモナミの容赦ない追及をどう受けるのか――。次なるスカッとする展開を迎える、シーズン2第9話もお楽しみに!




