表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と横浜  作者: のらしろ
第一部 猫に引っかかれて明冶にまいる …

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/75

第25話 足りない機材の購入




「どんな品をお求めですか」


「ああ、実験室でつか言うようなガラス器具類かな」


「あの、顕微鏡とかもお使いになる……」


 この時代ではまだ顕微鏡は大変珍しいもので、そもそも顕微鏡そのものを知らない方が普通だ。

 イルサさんは、顕微鏡を知っていて、なおかつ、顕微鏡がどんな場所で使われているかも知っているようだ。


 学があるようには、対話からは見えなかったし、何より俺が説明を受けたイルサさんの過去の様子からも接点が見当たらない。

 すると、イルサさんの方から説明してくれた。


「前の旦那様の店で扱っておりました。

 祖国ネザーランドでは学校の実験室に品を納めており、私もそこの先生方のパーティーに何度か参加させていただいたことがあります」


 イルサさんは俺の知りたいことを端的に教えてくれた。


 何でも、情けない男の性なのか、とにかく自慢したい男どもは、わかりそうにないことまで自慢げにパーティーの席でイルサさんに話していたようだ。


 実験室ではフラスコや試験管などのおなじみ科学実験に使われるガラス具に囲まれて顕微鏡を使って研究しているとかないとか。

 彼女からしたら、よくわからないことを長々と話されて退屈な上に、お客様に当たる人のようなので、終始愛想笑いを浮かべてい相槌を打っていたとか。


 うん、飲み屋での先輩たちの姿が思い浮かぶ。

 俺の何度か連れて行って貰ったキャバクラでのそのまんまやねとか思ったよ。

 俺も気をつけよう。


「横濱で、そううガラス具を扱う商人を知らないかな」


「でしたら、フランス人なのですが、一人」


 そう言われて連れて行かれたのは、俺の知るオランダ商人のヨトレリヒ商店からも近いドンペリオン商会という店だった。


 うん、気にはしないが、この時代にはすでにドンペリはあったよね。

 気にしないが、というか、気にしたら負けのような気がする。


 イルサさんはどんどん中にはいっていった。

 するとすぐに店主のフレディー・マイルズという方が出てきて相手をしてくれた。

 何でも昔の馴染だったとか。


 ちょっと恥ずかしくはあるが、今の自分の立ち位置ををイルサさんはフランス語で店主に説明しているようだ。


 これも後から聞いたことなのだが、横濱に一人放おり出されたときに何度か客として相手をしたのが店主で、現状は俺に身請けされたようなことを説明したとか。

 流石に病気のことは言い難いよな。


 でも、この店主は日本でも大学との取引があるようで、そういった実験器具類を一通り扱っており、更に幸運なことに在庫まで抱えているとか。


 何でも横濱に新たな研究室が作られるとかないとかで、早々と商品を取り寄せたは良かったが研究室の設立そのものが無くなったらしい。


 流石にからだの関係を持ったことのある男女だけあってか、かなり突っ込んだ話をどんどんしていたようで、持て余している実験器具類の話を俺に持ってきた。


 かなり、お安くしてくれるとかで、俺の屋敷に配達することを条件にすべて買い取ることにした。

 顕微鏡だけは扱っていなかったが、店主は顕微鏡まで扱っていれば正直資金がやばいことに成っていたとか。


 まさかそこまではとは思ったのだが、この時代の顕微鏡も良いものなるといい値段がつく。

 数百円単位にはなるとかないとか。


 とりあえず、今回の相談で五十円近くを支払いった。

 これでも、かなり値引きしていて、儲けなどほとんど無いと言っていたけど果たして本当かな。


 俺はリュックを背負ってきたので、その場で金を支払うことはできるが、手付金の5円だけその場で支払い、配達後に銀行でののりを支払うことで話をつけた。


 高額な現金を常に持って歩いて知られると正直怖い。

 治安だってこの時代では良いのか悪いのかはわからない。


 明治期と言うよりも江戸後期のヨーロッパ人の旅行記には自国と比べて遥かに良かったといくつも記載されて入るようなのだが、そもそもそこら中に植民地を奪いに喧嘩ばかりしているヨーロッパの祖国が治安が良いとは思えなかったので、この手記も俺は信じてはいない。


 いくら彼らが治安が良いと言っていても夜の歌舞伎町、いやここは横濱だから伊勢崎町よりも良いとは思えない。

 多分だが、今の治安を考えるに、令和での夜の伊勢崎町の独り歩きのほうがはるかに安全だろうとは思う。


 それた話を戻して、俺は一旦関内を出てから野毛山の方に向かい、足りない食器類などを買って屋敷に戻った。


  一通りの買い物を済ませて屋敷に戻り、二人の治療をした後で、書斎にこもる。

 書斎の扉には鍵を締めてから、PCの充電のためにこの前工夫した電球ソケットを使って充電を開始する。


 うん、ケーブル類がむき出しだし、本当に気を抜くと簡単に感電しそうだ。

 これをシュールと表現すれば良いのか、とにかく見た目が絵にならない。

 俺にはハードボイルドの世界は遠い。


 くだらないことを考えながらその日の作業を終える。

 翌日には頼んだ実験器具類が届き、いよいよペニシリンの製造作業にかかる。


 まずは、昨日買い込んだ雑貨から、すり鉢とすりこぎを取り出して炭を細かく砕いていく。

 学生時代に実験したときには、こういう作業は乳鉢が使われていたはずなのだが、あいにく昨日買い込んだ実験用具一式の中にはガラス製品しか入ってなく、乳鉢のような瀬戸物?は見当たらなかった。


 あのフランス人の店ではガラス品しか扱っていないのか。

 多分、違うのだろうが今回は無かった。

 まあ、すり鉢で代用が効くから問題はないが、流石に一度炭で使えば食べ物に使おうとは思わないわな。


 明日香さんなんかかなり嫌そうな顔をしていたことだし、これは実験専用としておく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ