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猫と横浜  作者: のらしろ
第一部 猫に引っかかれて明冶にまいる …

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第18話 拠点の始動



 なので翌朝の起床も早い。

 午前6時には置きている。

 なんだかんだと朝のルーティンをこなして7時には食堂で食事を取ってから、屋敷に向かう。


 ホテルから長い坂を登らないとつかないが、ゆっくり歩いても1時間もかからずに屋敷には到着する。

 すぐに、鍵を開け中に入り部屋の窓を開けていく。


 そんなことをしているとガス屋がここを訪ねてきた。

 ヨトレリヒ商店は仕事が早い。

 早速手続きを済ませてくれたようだ。


 俺はすぐにガス屋を屋敷の中に入れて、ガスが使えるようにしてもらった。

 この屋敷はガス灯が無いが、それでも色々と使っていたようで、あっちこっちにガス栓が作られている。

 それらガス栓の様子をガス屋と一緒に見て回り午前中は終わる。

 

 俺がガス屋の面倒を見ている時に明日香さんが鈴屋さんの若い衆を使って倉庫代わりの家から診療室で使われると思われる机や椅子、薬棚に簡易ベッドを運び出してくれた。

 その他に、二階の寝室のベッドなど大物家具を動かしていた。


 ガス屋も若い衆も昼前には帰っていった。

 彼らには後日お礼でも差し入れしないとまずいかな。


 午後には水道屋が来て、水回りの件を済ませた。

 結局この日には電気屋は来ず、電灯が使えない。

 まだここに住む訳でもないので、電気が通じていないことなど気にはしていない。

いつもように、日の沈む前にホテルにつけるよう夕方には戸締まりを済ませてから屋敷を後にした。


 翌日も昨日同様に朝から屋敷に向かい、早速ガスや水道を試してみた。

 あの見つけた煮沸消毒器にガスが通じたことで、使えるようになったので、俺は弄りたくて我慢ができなかった。

 

 屋敷の掃除の残りを明日香さんに頼み、俺は煮沸消毒機の手入れから始めた。

 説明書の類は見つからなかったが、それでも弄り回してみるとどうにかなりそうだ。

 

 まずは簡単に掃除から始めてから、ガス栓に繋ぎ、火を入れてみる。

 危なく空焚きになるところで俺は火を止めて、慌てて水道栓から水を持ってきた。

 これはいちいち自分たちで水をいれる必要があるようで、空焚きには気をつけないとまずい。

 

 煮沸消毒器の中にできた白く筋のある部分まで水を入れて、もう一度火を着けた。

 カルキなどまだこの時代では考えられないが、いつも同じところまで水を入れて沸かしていれば自ずと筋ができたのだろう。

 俺はそう考えて、前のご主人様と同じように筋の部分まで水を入れてみた。


 時間は想像よりもかかったが、中の水は沸騰し始め煮沸ができそうになる。

 こうなると実際に何かを消毒してみたくはなるが、あいにく俺の持っている医療道具はまだホテルにおいてある。

 俺は何かを探すために食堂に向かい、忘れ去られた茶碗を見つけて煮沸消毒してみた。


 中に茶碗をいれる時に問題はなかったが、茶碗を取り出す時に困った。

 そういえば、中に入れてあったハサミのような物のことを思い出し、それを使ってこの煮沸消毒器が使えることを試す事ができた。


 俺が喜んでいると外から声がかかる。


 やっと電気屋が来たようで、昨日のガス屋と同様に電気が使えるようにしてもらい、各部屋の電灯を電気屋と一緒に確認して回った。

 電球が2つほど切れていたので、電気屋に交換を依頼した。

 電球1つあたり一円も取られた。

 結構高い。


 この時代では電気を使う生活は贅沢だ。

 何せ電球を使うが、あれって蛍光灯よりも寿命が短い。

 それでいて一個あたりの値段が一円とは。

 まあ必要なのでこれからも使うが、元いた時代での生活レベルは無理だと諦めるしか無い。


 しかし、昨日今日で俺の必要としていたインフラは整った。

 これでやっと、ペニシリンの開発に入れる。


 この後どうしようかと考えていたら、俺は長野で買ったマンガ本を思い出した。

 あれにも、ペニシリンの開発について書かれていた。

 俺は、ここにホテルにおいてあるものを運ぼうかと考えては見たものの、夜には無人となるので正直不安があった。


 散々悩んだ挙げ句に、ヨトレリヒ商店電気などの件で相談した時にもらったメモと鍵のことを思い出す。

 あれ、どこにしまったけか……あ、そうだ、机の引き出しに入れておいたんだわ。

 

 俺は二階の書斎部屋に向かい、机の中にしまったメモと鍵を取り出した。

 次に問題なのが、肝心の金庫を俺は見たことがない。

 俺はこの後どうするかを考えながら部屋を見渡すと部屋の隅に押し入れのような小さな扉を見つけた。


 中の様子が気になりすぐに扉を開けると、大きな金庫がそこに鎮座していた。

 この扉は金庫を隠すためだけのもので、あらかじめこの金庫のためにこの部屋は設計されているようにピッタリとハマっている。


 俺はメモを頼りに金庫を開けると、無事に開くことができた。

 ドキドキしながら金庫の扉を開けて中を確認すると……何も入っていなかった。


 知っていたよ。

 テレビの企画でよくあるやつだ。

 しかし、大きな金庫だ。

 これなら俺の持ち込んだもの全てをこの中に仕舞える。


 そんなことをしていると下から明日香さんから声がかかる。

 もう夕方になっており、この後どうするかを聞いてきた。

 俺は金庫の扉を締めて鍵をかけ、その鍵を財布の中に大切に仕舞ってから、下にいる明日香さんのもとに向かった。


「一様。

 そろそろ昨日と同じ時間になりますが」


「ああ、今日のところも終わりにしよう。

 でも、今日でだいぶここも仕上がってきたし、予定通り明日は無理でも明後日辺りからここで生活をしていくか」


「明日は無理ですか」


「ああ、細々したものがないだろう。

 布団とか」

 

「あ、そうでしたね。

 明日は買い出しですか」


「そうなるね」



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