49.エピローグ
長い儀式や晩餐を終え、アヤナとラウルは共に寝室へと戻って来た。
「ふわーっ、疲れた!」
メイドがどやどやと入って来て、アヤナの、こんがらがった紐とリボンだらけの衣装を脱がしにかかる。一方のラウルは一人だけメイドがつき、さっさと普段の衣装に着替え終わっている。
「ね、いつものゆるいドレス持って来てよ。お願い!」
アヤナがメイドにそう頼み込むと、胸元で切り替えたシンプルなシルクのドレスがやって来た。それに着替え、ようやく彼女は一連の式から解放された。
アヤナが王のベッドに身を投げ出すと、ラウルがその隣に身を横たえる。まるでそれを合図にするかのように、メイド達はざざっと王の寝室から脱出して行った。
「ラウルも疲れたでしょ?」
「……そうだな」
アヤナがぼうっと天井を見上げていると、そっとラウルが身を起こした。
かと思うと王はアヤナに覆いかぶさるようにのしかかり、少し強引なキスをする。
「ちょっと、何……」
アヤナがベッドとラウルの間で少しの抵抗を見せると、ラウルは体を少し浮かせて彼女の体を解放した。
「……駄目か?」
「何が!」
叫んでから、アヤナはハッとする。
そうだ、私達はもう夫婦なんだ。
「正直に言おう」
急にラウルが独白を始める。
「なぜ私がこの城を取り戻そうと躍起になっていたのか、分かるか?」
アヤナは目を丸くした。
「へ?国を救うためでしょ?」
「それもあるが、実際のところは違う。生活するだけなら、あの鯨の中でアヤナと暮らしても良かったのだ」
「えっ、そうなの?」
「改めて伝えよう。私が城を取り戻した理由──」
王は威厳を持って言った。
「このベッドで、アヤナと寝たかったからだ」
アヤナは顔を赤くし、驚きに開いていた口をぎゅっと結ぶ。
「鯨の中のあんな薄くて固いベッドや、宿屋の古いベッドなんかでアヤナを抱く気にはなれない。そなたと初めて寝るなら、絶対この最高のベッドの上だと決めていた」
アヤナはあえて言う。
「ばーか」
「馬鹿で結構だ。もっと罵ってくれ」
「バーカ、バーカ!」
「……もう、いいか?」
それからアヤナはラウルにゆっくりと体重をかけられ、幸福の中に沈み込むように押し黙った。
二人で取り戻した白亜の城。
危険や死線を潜り抜けた分だけ、お互いの体温を尊いと思う。
「アヤナ」
ラウルはくぐもった声で呟いた。
「ありがとう」
ラウル王はその後七人の子をもうけたが、そのうち六人の子は電撃能力を持たなかった。
その代わりに子らは剣術と謀略に長け、広く試験によって平民から臣下を徴用し、電撃能力による貴族制を廃すことに成功した。
生まれ持った力だけでなく学ぶ大切さを教えたラウル王は、死後四百年経った今でも尊敬の念を集めている。
「……ふーん」
元の世界に帰って来たばかりのカイは、庭の片隅で本を閉じた。
「この書き方だと、電撃能力のあった俺の先祖がイマイチな奴みたいじゃん」
若きテオが農作業をしながら笑う。
「歴史を書きかえますか?また白鴎に乗って」
「それは勘弁して。あれはもう疲れた。不明になっていた神器の場所も分かったし、ルキア王子殺害の謎も解けたし、傾国の美女扱いされてた王妃の謎も解けて、歴史マニアの俺は激動の時代を体感出来たことに満足してるよ。俺の代はテオの力も借りて王政を存続させることに成功したから、もうあとはのんびりすることにして……」
その時だった。
空に光が満ちる。カイが空を眺めて口を開けていると、どしん!と少女が落ちて来る。
「きゃっ!」
カイとテオは走って行って、芝生に落下した少女を眺めた。
黒髪ショートカットの、弓道着を着た少女だ。
「こ、ここはどこ!?私は壬生真理亜といいます。あなたは……」
カイは頭を抱えて叫んだ。
「勘弁してくれ!!」
最後までお読みいただきありがとうございました!
感想や評価、レビューなどいただければこれほど嬉しいことはありません(評価欄はこのページの下部にございます)。それでは皆様、今度はまた違う物語でお会いしましょう☆




