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第8章.神器「月兎」と王の婚姻

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48.笑顔の二人

 壬生一族の秘密が分かったところで、アヤナとラウルは太郎を交えて話し合った。


「高校は毎日通わねば卒業出来ん」


 太郎はカレンダーを見せてラウルに説明する。


「アヤナがあっちの世界に転移している間、こちらで流れた時間は一日だ。今から日本に戻って、いつもの生活に戻れば高校は卒業出来るだろう」

「あと、コーコーとやらには何日通う必要がある?」

「今は三月だから……ちょうど、あと一年だな」

「一年……」


 ラウルは少し肩を落とす。彼にとって一年は、とてつもなく長く感じるようだ。


「大丈夫だよ、ラウル!」


 アヤナが取りなした。


「私、頑張って一年こっちでふんばるよ。ラウルも国を立て直すのは大変だろうけど、お互い頑張ろ」


 ラウルは真剣な顔で頷いて、太郎に問う。


「となると、私とアヤナは一度、離れなければならないな。私が向こうにあの白鴎に乗って帰った場合、アヤナを迎えに行くには一体どうしたら良いのだろうか」


 それを聞くや、アヤナが青くなる。そうだ。共にあちらへ戻らねば、共にこちらへ戻って来ることも出来ないのだ。


 二人の視線が太郎に注がれる。


 太郎は真面目な顔から一転、笑顔になる。


「安心しろ!わしがラウルと共にベリエへ戻るぞ!」


 ラウルが凍る。


「なるほど!じーちゃん、頭いい!」

「いや、アヤナ……ちょっとそれは」

「だってそれしか方法がなかろう?ラウルとやら」


 ラウルは頭を抱えた。


「アヤナ。お前、家事をしながら高校へ通えるか?」

「うん、出来るよ。私、ラウルのために卒業頑張る!」

「頼もしいな。とりあえず、絶対に赤点を取るんじゃないぞ。月に一度ラウルとお前の様子を見に来るから、何か困ったことがあったらその時に報告してくれ」

「うん、了解!」

「というわけで、頼むぞラウルとやら。我々はベリエに旅立とう」


 ラウルは少し寂しそうにうつむいたが、すぐに顔を上げた。


「結婚を許してくれてありがとう、太郎。必ずアヤナと一生添い遂げると約束する」


 太郎も寂しそうに頷いた。


「こちらこそ、孫を頼む」


 アヤナは胸がいっぱいになって、大きく息を吐いた。


 色々あったけれど、全てが丸く収まって良かった。


 壬生一族は実に様々な発明品でもって、長くベリエの王を助けて来た。


 でも、今度は発明品ではなく、王の人生の伴侶として──




 あれから一年が経過した。


 アヤナは王妃の衣裳部屋におり、コルセットをメイド二人がかりで引っ張り上げられていた。「ウェディングドレスを着用」というよりは、「窒息と格闘」していた。色気もへったくれもない。


 アヤナはこの一か月前に、無事に高校を卒業していた。卒業式の日は、太郎とラウルもやって来た。太郎とラウルは共に神器を元の場所に返す旅をしたということで、何だかんだ二人とも仲良くなっていた。アヤナはセーラー服、太郎とラウルはスーツ姿で卒業式を迎えた。アヤナはラウルのスーツ姿を今でもありありと思い出すことが出来る。


(あー、超かっこよかったなぁ)


 ベリエ王宮に戻って来てからは、現代の服とはお別れした。だから余計に、今となってはいい思い出だ。


 ドレスを着せられ、ティアラを乗せられたアヤナの元に、ラウルがやって来る。


「準備は出来たか?」


 そう声をかけられ、アヤナは新郎を笑顔で振り返る。メイドが忙しくレースの手袋を彼女につけると、ラウルはその手を取って軽くキスをした。


「綺麗だ」

「本当?」

「あの女海兵の服の次に似合う」

「またそうやってからかうんだから……」


 二人は笑い合った。


 そして、互いの婚礼衣装を見つめ合う。


 まさかこんな日が来るなど、夢にも思わなかった。出会った時は、お互いズタボロの状態だったのだから。


 同じ思いが胸を去来したらしく、二人は少しはにかんで鼻をすする。


 城内もあらかた片付き、婚礼行事の前に庭園も整備された。


 窓の外からは、大きな歓声が波のようにうねる。王の婚礼を見物に来た国民たちが、新しい王妃を待ちわびているのだ。


「では、行こうかアヤナ」


 王が、肘を差し出して来る。


「うわー、すごい緊張するなぁ」


 アヤナはその腕にしがみつくように寄り添う。


 二階のバルコニーに促され、アヤナはぎょっとする。


 バルコニーの下には大勢の見物客。


 それを見渡してようやく、王妃になってしまったのだという現実を実感する。足のすくむアヤナに何か感じたのか、ラウルが囁いた。


「大丈夫だ」


 アヤナはラウルを見上げる。


「何度も死にそうになったが、二人でくぐりぬけて来ただろう?」


 アヤナは前を向いた。


 そうだ、怖いものなんて何もない。


「ありがとう、ラウル」


 二人はバルコニーへ出た。湧き立つ嬌声、地響きのような歓迎。


 正直に言うと、ちょっと怖いし不安だった。


 だけど隣にラウルがいれば、いつだって大丈夫のはずだ。


 観衆を眺める。あ、タロウが正装。だいぶ酒を飲んだらしく、酔った顔してる。こっちの太郎もとっても嬉しそう。じーちゃん。また神器白鴎に乗って会いに行くからね。


 カイ、まだテオの所で暮らしているんだね。あ、シスター達ったら、まためっちゃ写真撮ってる。ニルダは急に痩せてイケオジになったイサクに寄り添って泣いてる。アニとセバの姿は、今日はないみたい。裏方に回されているんだ。


 アヤナの目の前が、急に熱い涙で曇る。冒険の不安な日々を思い出したけど、もう大丈夫。


 二人は観衆にはやし立てられ、軽くキスをする。


「ラウル。私……」

「話の続きは、式が終わってからにしよう。これからはずっと話が出来る。ずっと……」


 アヤナは声を詰まらせたラウルに寄り添う。


 二人は歓迎してくれる国民を眺めて黙し、恒久の平和を誓った。

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