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第8話:Aランク冒険者レイルと、新たな依頼人

「――というわけで、君たちのAランク昇格が正式に決定したよ!」


ギルドマスターの朗らかな声が、朝のギルドに響き渡った。

机の上に置かれたのは、新調された『Aランク』のシルバープレート。重みのある輝きが、これまでの実績を物語っている。


周囲の冒険者からの目も、完全に「格上」を見るものへと変わっていた。

酒場には「あの二人は本物だ」という噂が広まり、一部の冒険者からはサインや握手を求められるほどだ。


「レイルくん、おめでとう! 私たち、ついにここまで来たわね」


フィリアが俺の肩にポンと手を置き、眩しいほどの笑顔を見せる。

彼女の手にある魔銀の長剣は、今や誰もが羨む神剣の気配を漂わせていた。


「ああ、ここまで来られたのもフィリアのおかげだよ」


俺たちが喜んでいると、ギルドの奥から、上品なドレスを着た美しい女性――王宮の騎士団長であるアイリスが足早に歩み寄ってきた。彼女の背後には、緊張した面持ちの騎士たちが数名控えている。


「あなたが、レイルさんですね?」


「ええ、はい。ですが、何かありましたか?」


俺が首をかしげると、アイリスは周囲を警戒するように声を潜めた。


「実は、王立研究所に保管されている『古代の魔導核』に異常が発生しましてね。いかなる付与術師も、その核にかけられた強力な封印を解くことができずにいるのです。どうか、あなたのその優れた技術で、この封印を解除していただけないでしょうか」


「古代の魔導核、ですか……」


【鑑定結果】

・名称:古代の魔導核(封印状態)

・状態:暴走寸前

・備考:高純度の魔力が内部で圧縮されている。


「わかったよ。困っているなら、引き受けよう」


「本当ですか! ありがとうございます。報酬は金貨500枚、ギルドを通さず即金でお支払いします」


ギルドマスターも「ぜひ頼む」と太鼓判を押す。

この依頼をこなせば、いよいよ王都でもトップクラスの付与術師として認知されることになる。


その時――ギルドの裏口が騒がしくなった

「ちょっと待て! 俺たちを外に出せ!」


衛兵の静止を振り切って入ってきたのは、見すぼらしい格好に変わり果てたゼクスたちだった。

彼らはギルド内の注目を浴びながら、俺たちの前へと転がり込んできた。衛兵に連行されそうになりながら、ゼクスは必死に叫ぶ。


「おい、レイル! お前、Aランクになったんだろ!? だったら俺たちに謝罪して、その地位を譲れ! 俺たちは勇者パーティなんだぞ!」


「まだそんなこと言ってるのか……」


俺はため息をついた。

彼らがそこまで落ちぶれたのは、俺のせいではない。自分たちの力を過信し、人を大切にしてこなかったからだ。


「ゼクスさん、もう終わりよ。私たちは、ただの冒険者に逆戻りなの」


エルナが涙を浮かべながらゼクスの袖を引く。

だが、ゼクスは完全に狂乱状態に陥り、俺に飛びかかろうとした。


「うるさい! 俺が、俺が王都で一番じゃないと駄目なんだ!」


――しかし、彼が俺に触れるよりも前に、アイリスが腰の剣に手をかけた。

冷徹な眼光がゼクスを射抜く。


「そこまでだ、無礼者。王国の重要依頼を受けようとしているAランク冒険者に手を出すなど、反逆罪に問われても文句は言えまい」


「ひっ……な、なんだお前は……!」


アイリスの放つ圧倒的な威圧感の前に、ゼクスは床にへたり込んだ。

王国最強の騎士団長を前にしては、Sランクだった頃のプライドなど何の役にも立たない。


「衛兵、彼らを地下牢へ連行しなさい。これ以上、冒険者ギルドの業務を妨害するな」


「いやだああああっ! 俺たちは勇者だぞおぉぉぉ!」


ゼクスたちの悲鳴が、ギルド内に空しく響き渡った。

かつて仲間だった彼らの末路に、同情する者は誰一人としていなかった。


新たなステージへ

「……見苦しいものを見せてしまい、申し訳ありませんでした」


アイリスが頭を下げる。

俺は首を横に振り、笑顔を見せた。


「いえ、大丈夫ですよ。それよりも、その魔導核の封印解除ですね。行きましょうか、フィリア」


「ええ、行きましょう!」


俺たちは王宮の研究所へと向かうため、ギルドを後にした。

自分を過信していた者たちは去り、俺たちの隣には、本当の意味での仲間と、新しい未来が待っている。

第8話・完

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