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片翼の堕天使  作者: ハオ
3/12

第3話「共鳴」

戦闘は、いつも突然始まる。


そして同じように、終わる。


だがその日は、何かが違っていた。



敵部隊は予想より深く侵入していた。


通常なら前線で止まるはずの戦力が、

すでに後方域にまで達している。


警報は意味を持たない。


ここでは、警報が鳴る頃にはすでに遅い。



「散開。迎撃開始」


短い指示。


だが誰も慌てていない。


慣れているのではない。


慣れる前に終わるからだ。



彼女はすでに動いていた。


白い装甲が光を反射するたび、

戦場の“優先順位”が書き換えられていく。


敵の進行ルートが崩れる。


遮蔽物の意味が消える。


戦術が成立する前に、構造そのものが破綻する。



主人公は後方支援として配置されていた。


本来なら“戦闘に関与しないはずの位置”。


だが現実は違う。


戦場は、彼を無視してはくれなかった。



敵の一部が、こちらに向く。


偶然ではない。


戦場の中で“最も弱い点”を選び取っただけ。


そこにいたのが、彼だった。



「……来る」


声は出なかった。


体が先に理解する。


死が、こちらに向かっている。



その瞬間だった。


世界が“ずれた”。



視界が一瞬だけ切り替わる。


彼のものではない。


誰かの視点。


高すぎる俯瞰。


すべてが同時に見えている感覚。



敵の動きが、手に取るように分かる。


いや違う。


理解している。


予測ではない。


“確定した未来”が見えている。



銃撃。


回避。


反撃。


それらすべてが、思考より先に成立する。


彼の体が、戦場のルールに沿って動く。



——これは、自分じゃない。


そう理解した瞬間、感覚は途切れた。



膝をつく。


呼吸が乱れる。


周囲の音が戻ってくる。


銃声。


爆発。


指示。


現実。



「今の……何だ?」


呟きは誰にも届かない。



戦闘後。


敵部隊は殲滅されていた。


いや、“処理された”と言った方が正しい。


感情も抵抗も介在しない結果。



彼女は戦場の中心に立っている。


いつも通り。


何も変わらないように見える。



主人公は彼女を見つめる。


さっきの感覚が、まだ残っている。


あの“視点”。


あの“理解”。



(彼女の……視界だった?)


そんなはずはない。


だが、他に説明がつかない。



彼女は振り返らない。


ただ静かに言う。


「処理完了」


それだけ。



主人公は立ち上がる。


手が震えている。


恐怖ではない。


混乱でもない。



“自分の中に、他人の戦場が入ってきた”という違和感。


それだけが残っていた。



戦闘後、撤収命令。


部隊は移動する。


誰もその異常に気づいていない。



彼女も。


軍も。


誰も。



主人公だけが、その感覚を引きずっていた。


頭の奥に残る、他人の思考の残響。



(今のは何だった?)


答えはない。


だが確かに感じていた。



——これは偶然じゃない。


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