最終章 秋桜に咲いた君達へ
~数年後~
「へー!一人暮らし続行?」
「うん…。普通に就職もしたし…。そのまま今のアパートに住むよ。」
「そっかぁ。」
レオと飲みながら、少し伸びた髪が目にかかって、俺は払いのけた。ビールは嫌いだから、カルピスサワーを少しずつ飲む。その甘さに少しだけ目を細めた。
「俺はまだ遊びたいから、大学残るんだよね~。」
「サークル活動?」
「それもだけど研究とかも、まだ終わってないしさ~。」
俺と違って、彼は大規模な研究をしていたから…。学部の卒論は書いても、まだプロジェクト自体は終わってないのだろう。少しだけ羨ましいと思ってしまう…。
「じゃあ…俺はこれで。」
「え~もう帰っちゃうのかよぉ~。」
相変わらず、付き合い悪いなぁと、レオが不満そうに言う。
「ごめん、また今度な。」
「はぁ~い。」
ちょっと酔っているのか、レオが気の抜けた返事をして、会計の為に席を立つ。俺はレオの後に続いて席を立つと、財布を取り出したのだった。
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「あ…ソラ。」
「…どうしたの?」
「ちょっと…お散歩したいなって。」
美しい夜桜が咲き誇る。川辺を散歩していたら、ソラと鉢合わせた。長い黒いコート、黒いシャツ…肩より伸びた黒髪が、まだ冷たい夜の香りを纏っていた。
「日本の景色を見ておかないとね。」
「ドイツだっけ…?大学に…行くって。」
通信制高校を中退し、高卒認定試験を受け、ママが長期出張で滞在しているドイツの美術大学へ通う…。結局、ママとは一緒に住まないけれど、これから見知らぬ世界を見て、その土地の光景を絵画に描き起こす。
「9月入学だけど…7月にはもう行くかな。」
「そっか…。」
ソラのどこを見てるか分からない視線…私が微笑みを浮かべると、彼は少しだけ赤くなった。
「それまでに料理、教えて。」
「…俺も、就職して忙しくなるんだけど。」
仄かなピンク色の花弁がヒラリと、ソラの方を選んで寄り添う。優しい色合いと、彼のアンニュイな表情が美しい構図になっていた。
「暇な時で良いよ。」
「…まあ…うん。」
今この瞬間を絵にしたら、きっと…勿体ない。ぼんやりと夜を覆う桜を見つめ続け、冷たい風を感じるソラは、その瞳を伏せて、笑ったのだった。
(完)
秋桜に咲いた君達へ、これにて完結です。ここまで、二人の物語を追ってくださった皆様、ありがとうございました!それでは、また次の小説でお会いしましょう。(Ps. 神楽鳴&青色矮星)




