23(終)
――――はっ。
としてわたしは夢からさめた。
「なんだ、夢か……」
とつぶやいた。
それもそうだ。さすがに無理がありすぎる。
クーデターを起こして、
にもかかわらずほとんどお咎めなし、
起業してバカみたいに儲けて、
野田と結婚して、
みんなしあわせになって、
わたしもしあわせで、
しかも妊娠してて……とか……。
世の中そんなに甘くないって!
ていうか、これもう、わたしの願望だよ! 怖いよ! 夢見すぎだって!
「はあー……」
ため息をついた。
と同時に、頭が混乱した。
……あれ、どこからが夢だ?
というか、どれが現実だ……?
……。
マスターの店を深夜に逃げ出したところから?
いや……、
全国ニュースの家出少女になったところから?
それとも、
公園で野田と会ったところから……?
まさか、
売られようとしたことが、そもそも夢?
え……、
生まれてきたこと自体が!?
じゃあ、今いるこのわたしって一体……。
ちょ、ちょっとおちつこう。
きちんと目を開けて、周りの景色を見て、
耳をすませて……。
大勢のひとの声が聞こえてきた。
歓声だ。
数回まばたきをすると、目の焦点があってきた。
茶色の上質のカーテンが見えた。わたしは革張りのソファに寝ていた。ここは、内閣執務室……。
官邸を占拠して、
放送を行って、
ヒロセが裏切って、仲間には作戦のネタバラシをした。
そして明日、嘘を国中にも明かして、投降しようということになっていた。
カーテンの隙間から朝の光が漏れている。
歓声は、その向こうから聞こえる。
「おい、起きてるか!」
転がり込むようにヒロセが部屋に入ってきた。
「テレビつけろ、テレビを!」
そういって彼がテレビをつけると、官邸前の人だかりが映された。
『ちひろさん!』
『ちひろーーー!』
『おい国家元首!』
『助けてください! わたし、虐待をうけてます!』
『僕はっ、いじめでっ、こ、殺されそうに!』
『あんたなら助けてくれる! 救ってくれる! 頼む! 俺は親の介護でもう、生活がまともにできなくて……! おねがいだちひろさん!』
そんな、人々が口々に発する声が流れていた。
「これ……どうするんだよ……」
ヒロセがいった。
「それどころじゃないぞ」
とスガワラがスマホを片手に部屋に入ってきて、
「今、アメリカ大統領がコメントを出した。『日本の核武装を認めるわけにはいかない。彼らとの関係について、これから話し合うべきことが山ほどあるだろう。国家元首である彼女との会談を強く望んでいる』」
遅れてテレビにも、全く同じ速報のテロップが流れた。
スタジオのアナウンサーが、深刻な顔でいった。
『これは……阿左美ちひろ国家元首の判断を仰ぎたいところですね』
「は………?」
とわたし。
「は、じゃねえよ! おまえ、自分が始めたことだろ! 責任持てよ! ど、どうにかしろマジで!」
昨日は和解して落ち着いたはずのヒロセが、またパニックになっている。
それから、他の自殺志願者たちと、野田、メタルさんも部屋に入ってきた。
「メタルさんと少し話したんだけど……、策は……ないことはないよ」
野田はいった。
メタルさんがうなずいた。
野田はつづけた。
「あとは……君次第だ」
わたしは自分の頬をつねった。
夢じゃない。
覚悟を決め、
わたしは息をすった。
「や」
いいかけて、止めて、
あらためて、笑顔をつくってからいった。
「やる」
当たり前。
借金のカタに売られるくらいなら、――なんだってやってやる。
おわり。
ありがとうございました。




