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はるうた 3 真白の雪  作者: 夏衣一衣(なつい・かさね)
第一話 葉月りこ 高校一年生
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第一話 葉月りこ、高校一年生 (1)

第一部、第二部に続く作品となります。

そちらからお読みいただければ幸いです。

 入学。それは学校生活の新しいスタート。

 たとえ、新たな生活の場である青陵学園が、緑生学園中学の反対側の丘の上にあるだけで、登る坂道が変わるだけであっても、油断してはならない。

 新しい教室に、新しい顔ぶれ。

 入学式の初登校の日。指定の教室に入る。失敗はしたくないところ。

 私は高校デビューとか考えてないので、とにかく無難な滑り出しだけ気にしておけばいいのだけど。

 緊張して席に着く。ありがたいのは……

「とみちゃん」

 私の肩に手を乗せて、そう呼んでくれる友人が同じクラスだったこと。

 自称『葉月家の特派員』の私、富田祐子。無事りこと同じ青陵学園に入学しました。

「りこ~。あんたがいてほっとするよ」

 一年五組で同じクラス。奇跡だ。ほんと良かった。

 りこは二つ後ろの席に座った。入学初日の席順は男女に分かれてあいうえお順で指定されていた。

 私『富田』の「と」の席のふたつ後ろに、「は」の『葉月』で、りこがいた。

 りこは、きれいに伸びた髪を、今日はさらりとそのまま流している。肩に余裕でかかるくらい伸びていた。

 我が推しこと、葉月りこがいれば、ひとまず一年間の癒しは確保されたも同然。

「私もいるんだけど」

 私たちの間に割って座ってきたのは、「な」の『成宮』志穂だ。

「あれっ? 志穂、同じクラスだっけ?」

「お邪魔しますねすみませんね」

「じゃ、邪魔じゃないよ。ねっ、とみちゃん!」

 私との間を志穂に譲るりこ。

「そうよ、やだなあ。いっしょに勉強した仲じゃない。あはは」

 そう、葉月家の居間での勉強会をはじめ、帰り道に公共施設で一緒に勉強会をしてきたのだ。

 というか、入学案内の郵便でクラスの記載があったので、お互いがどのクラスか確認しあったのは、りことだけ。志穂のことはさっぱり頭になかった……なんかごめん。

 成宮志穂は、長い髪を重くならない感じにカットして、色をちょっと抜いている。なんだかすっかりスポ根バレー部じゃなくなっていた。

 バレー部生活のおかげですらりと伸びた手足に、最近ついてきた凹凸が、ちょっと男子の目を引いている気がする。

「志穂って……」

 私が口を開こうとしたところで、担任の先生がやってきたので、私らは切り上げて席に着いた。

 私らの担任は真面目そうだが、適度にゆるそうな顔。頼りなさそうな印象だけど、あたりさわりなさそう。先生は黒板に自分の名前を書いて自己紹介した。

「一年間、君らの担任を務めます。よろしく。みんなの自己紹介は入学式のあとゆっくり聞かせてもらいます。まずは点呼を取ったら、そのまま廊下に出て整列してください。そろったら体育館へ移動します」

 では、と、男子のあ行から名前が呼ばれていく。

 いよいよ入学式。

 ああ、高校生が始まるんだ。




 入学式を終えて、窓からの風で余韻を感じる。窓の端にまとめられたカーテンが、もどかしそうに揺れている。暑い日差しの夏の出番は、まだ少し先だ。

 教室での自己紹介や、担任の先生の連絡事項を聞いて今日は終わり。

 新しいクラスメイトたちと、なんとなく輪になって会話したあと、今日はそこそこに別れる。

 ちょっと男子との雑談につかまっているのは志穂。

 入学式に入場する列で歩いている間も、品定めされるような視線がもぞかゆかったけど、今なんとなく話題なのは志穂だった。

 なんか綺麗な女子がいるよなって、同じ新一年生男子の噂話も()()()()

 志穂が、目配せするのを見届ける。

「先に帰ってOK、か」

 目配せの意を察した、という目線を私は志穂に返した。

 桐原理々香先輩に付けてもらった胸の赤いリボンを外して大切にしまうと、私はりこと一緒に下校した。

「ねえりこ、部活どうする?」

 校門からの坂道で、私はりこに聞いた。もちろん、バレー部に入るかどうか、という話なんだけど。

 りこは、うーんと考えるそぶりをしたけど、少し予想はついていた。

「んーとね、高校では部活はひとまずいいかなって思ってるんだよね」

 ほら、予想通り。

 とみちゃんは? と聞かれたので、私も同じと答えた。だって、中学に入学した時はともかく、高校でりこのいないバレー部って、がんばる気が起きない。

 りこがバレーを続けないのは、やっぱり身長のことかなあ……。高校になると、やっぱり真剣度合いも増すと思うし。背が伸びなくなったのは悔しかったんだろうなって思う。

 私はりこの肩をたたいて明るい未来を示すように、空と行く手を指さした。




 ◆◇◆◇◆




「今年かわいい子いた?」

「どうかなあ」

「どうかねえ」

「あのロングの子とか」

「ちょっと派手じゃね?」

「高校デビューでがんばってる感?」

「もうちょっとしたら、落ち着いてくるんじゃない?」

 ……えーっと。ここはミスコンの審査会場なのか?

 新一年生の下校する人波を、二階の三年教室の窓から見送る男子。

 まあ、かわいい女の子を見たいのは、男子の性か。

 特に鼻息の荒いメガネがいたけど、まあ同じ類だろう。

 ちなみに、俺たち三年一組の教室からだと、登下校に通る坂道、通称『校門坂』とグラウンドへの通路がよく見える。

 俺? 俺は妹とわが家の特派員の背中を見送る兄の視線で見ていただけ。

「はーるし! 今日はなんか用事あんの?」

 肩を組んでくるのは竹内丈生。

「ない。生徒会室でスケジュール確認したら終わり、だっ」

 重苦しい竹内の腕を払って生徒会室に向かう。同じ生徒会の竹内も、予定なんて大して変わらないはずだ。分かってるだけに、扱いがぞんざいになる。

「帰りにお好み焼きでも食って帰ろうぜ?」

 めずらしい。普段は、俺がまっすぐ帰るものだから、あまり誘わないくせに。

 難しい顔をする俺に竹内はせがんだ。

「なー、いいだろぉー、何なら莉緒くんも一緒に誘っていいからさあ。たまにはオレをねぎらってくれよう~」

 ぐむ。まあ、昨年度はいろいろ騒がせて、フォローしてもらったしな。

 竹内を伴って生徒会室へ。がらりと生徒会室の扉を開けるが中には誰もいない。そこに真白の姿の幻を見たなんて、竹内には絶対言わない。

 真白とは、恋人同士の関係を解消したのだ。

 予定表になっているホワイトボードの今日の欄は空欄で、書き足された様子はなかった。

 それにしても、俺と竹内が生徒会か。悪の組織に傾きつつあるな。

「んだよ?」

 俺の目線に竹内が疑問を返す。

「お好み焼きの道連れがいなくて残念だったな」

 竹内は昨年から、生徒会でも一緒の小倉美帆に絶賛アプローチ中なのだ。

「ちっ。勘のいい子は好きじゃないね。べつに男二人でいいんだよ。リオくんも誘うだろ?」

「いや、部活だと思う。いいぜ、二人で行こう。お好み焼き。俺は店の良し悪し分からんから、お前案内しろよ?」

「いいともよ。うまいお好み焼き食わせてやんぜ!」


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