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1話 あれから三年


そうして俺は三年間現世と異世界を交互に行き来した。


高校二年生になった俺は、未だに毎夜異世界に飛ばされているのだ。


といっても単に寝たら、異世界に飛ばされて戻るときも異世界で寝ればいいというだけの話なのだが。


ちなみにたまに昼寝したときでも異世界に飛ばされてしまうときもあったが、退屈な授業には丁度いい。


しかしおかげでせっかくの昼寝も、疲れがとれた気がしないというのはいかがなものかと思う。7



「らいと、おはよう」


レースのパジャマを着た可愛らしい顔と、たれた金髪が顔をくすぐる。


「ふふっ、やっとおきた。あっちの世界は楽しかった?」


もう定番とかしたセリフを俺に問いかける。


なので俺は、昨日というより、さっきまであった高校生活を話す。


「……それでな、友達と喋ってただけなのに佳穂が話に割り込んできて……」


「うんうん」


他愛のない俺の日常を話していると、ベッドに両肘をついて手に顔を乗せてニコニコしながら話を聞いてくれている。


話を聞いている時の様子は、いつも楽しそうな笑みを向けて早く続きを話してほしいと急かしてくるので、こちらもつい話に熱が入る。


(そんな愛らしい容姿で見つめられたら、話を続ける他ないじゃないか)


コンコン


「エメラルド様、小桜様、そろそろ朝食の時間でございます。エメラルド様も、朝の支度をしますので部屋にお戻りください」


ドア越しに俺とジュエルに向かって、問いかける。


今日の漫談は時間切れということだ。次はまた明日だ。こうして毎日少しづつ俺の世界のことを話していくのだ。


「じゃあ、私は部屋に戻るわ。また後でね」


上品な動作で立ち上がったかと思うと、ふわりと体を翻してドアに向かい小さく手を振って自室に戻っていった。


ジュエルとは寝室兼自室が隣の部屋なので、こうして内緒の漫談をしているのだ。このことはこのお屋敷でも俺たちと一部のお付きのメイドさんしか知られていない。


目覚めた瞬間に美少女!? 男子学生にとってこれ以上嬉しい瞬間があるだろうか。


しかし目覚めたうちの二分の一は幼馴染の佳穂の顔をみることになるのであまり期待してはいけない。


もっというと寝る前に、心の準備をして寝たほうがいい。


そんな事を考えながら、備え付けの豪勢な飾りのついているクローゼットから自分の着る服を取り出し手早く着替えていた。


今日は一日非番なので、ジュエルもといハリス=エメラルドと一日一緒に居れるわけだが。彼女は公務に忙しいため、その隣で呪いに関する情報収集をしたりこのセカイの文献を漁ったりしているのだ。


その間はメイドや執事などが横についているので、あまりイチャイチャとかはできないが……しかも、ジュエルにデレデレとしている姿を見られでもしたらどうなるかわかったもんじゃない。


いくら俺の立場は勇者だといえ、欲に走る行動は抑えたほうがいいだろう。


彼女はこのセカイで幽霊であった俺の存在確定をしてくれた恩人なのだ。


同じ呪いをかけられた者同士の縁なのか、唯一俺のことを認識してくれた。その瞬間から認識されたことにより、存在が確定した。


それから物に触れることができるようになったし、人と会話することもできるようになった。


しかし城に代々仕えているまじない師の婆さんによると、まだまだ俺の存在は不確定で意識がなくなっているとき、つまり寝ているときや気を失ってしまうと意識は元の世界に戻ってしまうというわけらしい。


呪いを解こうとしているのはここに理由がある。このセカイにつなぎとめている呪いを解くと、不確定な存在から確定的な存在に変わるため……どちらかのセカイに魂が定まるらしい。


それがどちらのセカイになるのかはわからない。らしい。


だからこの魂を引き剥がす呪いを解くことは当面の俺の目標なのだ。今はそうして三年が経ち、こちらのセカイにも守りたいという存在ができた。


俺の呪いを解く方法が見つかることで、ジュエルにもかかっている同じような呪いも解くことができるだろう。俺はそうして彼女を守るのだ。



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