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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
4章:女神様の道具 ~名前を広めるために~
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祭壇

--祭壇--


あらすじ:ホアード様にドヤ顔された。

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呆然(ほうぜん)とする私に、王様がニッコリと爽やかイケメン笑顔で挨拶してくれた。ナイスミドル。


この王様はホアード様の息子さんだと紹介されていた。ホアード様が王様の隣に立っているので、間違ってないんだろうけど。


最初に、お屋敷で会った時は『おじいちゃんの様子を見るついでに噂の聖女様を見に来ました。ついでにご飯でもどう?』みたいな感じだった。お貴族様ってコワイ。


ともあれ、息子さんが王様だとするとヴィッセル君は本物の王子様で、マリアナちゃんは本物の悪役令嬢…いや、未来の王妃様だったわけだ。ホアード様は元王様とかかな?


そうするとホアード様も、昔は俺様イケメン王子様だったのかな?今では『のじゃジジイ』になってしまっているのだから、時の流れは残酷だ。


まぁ、王様の発言からすると、今回は初対面を装って行くみたいだ。


「お会い出来て光栄です。アマネと申します。」


マナーの先生に教えて貰った通りに挨拶する。事前の打ち合わせで最低限で大丈夫だと言われてるので気は少し楽だ。マリアナちゃんも小さく手を振ってるし。ボロが出ても大丈夫な気がしてきた。


「うむ。ポール、説明を。」


王様の近くに居た立派な服を着た人が、謁見の趣旨の説明を始めた。


「事前に伝達しました通り、ここに居るアマネ嬢は魔道具の女神様によって、ユーハイムの街に連れてこられた異世界人です。そして、そこで女神様の導きによって新しく有用な魔道具を作ることに成功しました。こちらがその冷蔵の魔道具です。」


冷蔵庫の魔道具が持ってこられる。


駄菓子屋でアイスが入っているような箱で、二槽に分かれていて上部にハッチ式のフタが付いている。


木工屋のサイモンさんが2週間で綺麗な雪狼の彫刻を入れてくれた箱は、角の部分も彫金された金属で補強されていて、豪華な家具らしさと輸送でも使える賢強さを示してくれている。


さすがプロ。これでも時間の都合で妥協しているんだよね。


「箱の内部を冷却する事によって夏でも氷を作る事が出来るようになり、今までは傷んでしまった鮮魚や野菜なども運べるようになります。食料事情や輸送にかなりの効果があると考えられます。」


ポールさんが説明を続けてくれた。


自分でプレゼンをしなくて良いのは楽だ。マナーのボロが出ないで済む。


「では、中に冷やしたものがありますので出してみましょう。」


と、言って中に入れてあった柑橘系の果物と氷を取り出す。


ポールさんが立派な服を着て箱の底を漁る姿になってしまった。


これは、変えなきゃダメだね。


フタが確実に閉まるように、上下に開くようにしたんだけど、お貴族様にさせられるポーズじゃないよね。今度は普通の2ドアタイプの物を作ろう。


「氷が全然解けていないな。」


「魔法で出した冷水より良く冷やせるのだな。」


「魔法の冷水で冷やすと、常温に少し放置すればぬるくなっていたが、この魔道具なら入れなおせば済むわけだな。」


「温度変化はどのような感じですか?一定を保てるなら、ポーションの保管に役立ちます。」


集まったお貴族様たちは直接触れて感想を言い合っている。中には実際食べてみる人も出た。評判は悪くなさそうだ。


「このような新しい魔道具を作ってくれたアマネ嬢に、王より報奨と、ホアード卿の庇護が与えられる事になりました。」


ポールさんが締めくくった。


「ところでアマネ。ここに女神様をお呼びすることは出来ぬのかね?ぜひとも会ってお礼がしたいのだが。」


プログラムに従った謁見が、予定通りに終わりそうだと思っていた時、突然、王様がシナリオに無いことを言い出した。


会場のお貴族様の反応が予定通りだったことに、安心しきっていた私はビックリして固まってしまった。あとは王様から一言もらって終わりになるはずだったんだよね。


「アマネ嬢?」


ポールさんが事務的に呼び掛ける。


「ええ、やって見ないと判りませんが、なにぶん準備も何もしていませんし、それに女神様も突然このような場所に呼ばれてしまうと驚かれると思います。」


なんとか頭を回転させて言い訳を答える。


「何が必要じゃ?」


「女神様を(あが)める為の祭壇が必要です。」


「祭壇をこれへ。」


王様の言葉に控えていた側近の人が即座に祭壇を持ってきた。準備が良い。


まぁ、ホワード様も居るし、全部調査済みよね。王様からすれば最初っから予定通りだったんだね。


祭壇の上にはホアード様に贈ったクリスタルの女神像まである。


完全に逃げ場は塞がれていたようだ。


仕方無しに、王様と私の間に設置された祭壇に仰々(ぎょうぎょう)しくひざまずく。


こうなったら少しでも大げさにして、それでも出て来なければダメでしたって諦めてもらうしかない。


(女神様。)と心の中で呟くと、(はぁ~い。)とのんびりとした返事が来た。辺りを見回しても女神様は居ない。


(なんで今日は出てくるのよ!?)


心の中でツッコミを入れる。ちゃんと会話が出来るみたいだ。


(『女神の勇者』の祝福だって言ったじゃない。)


(いつも出てくれないじゃない。)


(ちゃんと見守ってはいるのよ。アニメが面白くて、見落としたりしているけど。)


(意味ないじゃん!)


(今日は予定されていたからね。アニメは我慢していたのよ。それじゃ、ポケットに入った魔晶石を祭壇に(ささ)げなさい。演出に使うわよ。)


女神様の言う通り、ポケットの中には、冷蔵庫の魔道具が不具合を起こしても対応できるように、魔晶石を入れてあった。


だけど、演出って、何を考えて居るんだろう?アニメを見ていたと言っていたのでイヤな予感しかしない


言われた通りに(うやうや)しく魔晶石を祭壇に捧げてもう一度祈った。


(これでどう?)


(ナイスよ。ありがとう。)


すると、魔晶石がぼんやりと光だし、その光が一本の(すじ)になって女神像に当たる。


内側からの光で虹色に彩られた女神像は、くるくるとゆっくりと回りはじめて、やがて(まばゆ)く光出した。


七色の光が()り成す不思議な光景。


どこからともなく(あふ)れ出す明るくポップな幾重(いくえ)もの重奏曲。


王様を始めとする周りの人も息を飲む。


それは女児向けのヒロインの変身シーンの様で…。あ、ハートが飛んでいった。



「愛と魔道具の美少女☆女神、ロッテンプッテル!ここに降臨!!」


眩い光とエコーのかかった声と共にオクサレ様がポーズを決めていた。



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次回:いい加減にしてほしい『女神様と王様』



オレ、今度の日曜日になったら、新作出すんだ。(フラグ)


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