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冥府の剣(改訂後版)  作者: 梅院 暁
第二章 ~覚醒編~
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第二十話~接戦~

 明智あけち勇海ゆうみ、ルナ、くすのの四人はようやくMDSIの輸送トラックまで辿り着いた。トラックの正面部は激突で拉げており、ガラスは罅だらけで、膨らんだエアバッグが見える。中にいた人間の安否は分からない。

 そして、周りには武装した男達が固まっている。

「このぉ!」

 ルナが吼えながら仕掛けた。G36Kをフルオートで男達に撃ち、5.56NATO弾を浴びせかける。鮮血が飛び、トラックの荷台やアスファルトに赤く不規則な模様を描く。

 生き残っていた男に向け、今度は勇海がM870ショットガンを撃った。一射で九粒のペレットが吐き出され、相手を穴だらけにする。フォアエンドを引いて排筴し、次弾を別の敵に撃ち込む。ほとんど一方的に敵を片付け、トラックの運転席を確認しようとする。

「ルナ、ユーミさん、上!」

 楠が警告を送る。

 見れば、トラックのコンテナの上に新たな敵が立っている。その数四人。

 明智はG36Kを向け発砲するが、その時には敵は跳躍していた。そのうち一人の手から、こちらに向け投擲物があった。咄嗟に地面を転がって避けるが、そのうちの一つが袖に掠って切り裂く。

「気をつけろ! 奴ら、黄麟会の精鋭だ!」

 勇海から警告が飛んだ。

 一人が、着地すると真っ直ぐ明智へ向かって駆けた。明智は銃口を向けようとして、危ういところで止めた。このまま発砲すれば、味方に流れ弾が当たる。

 自分に向かってくる男は素手のまま、手刀を振りかぶった。明智はG36Kを盾にして受け止めようとする。

 男の腕が振り下ろされた。

 G36Kで受けた瞬間、ただの手刀とは思えない程の衝撃が銃から伝わってきた。思わず明智の身体が後方に泳ぐ。

 今度は男が逆の腕を水平に振り回してきた。横殴りの掌底波か。

 明智は嫌な予感がし、今度は受け止めるのを止めて、わざと地面に身を投げた。顔面すれすれを腕が通過するが、恐ろしい程の風圧を感じる。背中から受け身を取りつつ、男に蹴りを放った。男は腕でその蹴りを受けながら後方に跳ぶ。

 そいつにG36Kを向け直そうとしたところで、持っているライフルが変形していることに気付く。まるで巨大な金槌で殴ったように、ポリマー製のボディが歪んでいる。

「キェッ!」

 ここで別の男が明智に仕掛けた。男の手から放たれたのは、先端に錘の付いた縄だった。その縄は蛇のように明智の右腕に巻き付く。G36Kの銃床を巻き込み、銃を手放せなくなってしまう。

 男が縄を引っ張ってきた。明智は姿勢が崩されないように踏ん張るので精一杯だ。

 そして、再び男が駆け寄ってくる。その男の腕に、鉄製のリングがはめられている。中国武術の暗器の一つ、鉄環手だ。これをはめた状態で打撃を繰り出せば、リングの重さで威力が倍増する。

 ――くそっ、どうする?

 相手は中国武術の達人だ。左手一本の状態で適うわけがない。

 何か武器はないか、と考えたとき、直前に勇海から渡されたリボルバーの存在を思い出す。右手が使えないため、左手で抜いた。

 利き手と逆の手だが、さすがにこの距離では外さないだろう。

 そんな希望的な思いを込め、明智はM649を左手のみで構えると、男が接近する前に引き金を引く。銃自体が小型なこともあり、左手に激しい反動を感じる。

 放たれた.38スペシャル弾が、振りかぶった左腕の鉄環手に命中した。火花と共に腕輪が砕ける。男が撃たれた腕を押さえ、動きが鈍る。そこへさらに二度撃つが、男が伏せ、当たらなかった。

 明智は舌打ちしたい衝動を押さえ込む。腕を狙いはしたが、狙った場所に、命中しなかった。自分の射撃技術の低さが憎らしい。

 明智はM649を今度は自身の右腕に巻き付いた縄に向けた。ほぼゼロ距離から撃って、切り離す。さすがにこの距離で外すことはなかった。

「おらぁっ!」

 縄が巻き付いたままの右腕を、鉄環手の男に向けて振るった。まだ鉄環手が残っていた右手が迫っていたが、右腕に持ったままのG36Kの方がリーチが長い。一瞬早く振り回したライフルが顔面に届き、男を殴り倒した。

 明智は周りの状況を確認する。

 見れば、一人は勇海に襲いかかった瞬間、至近距離からの散弾をまとめて喰った。もう一人は短刀のような暗器でルナに襲いかかったが、斬撃をG36Kで防御され、刃がポリマーに食い込んで止まった。そこを狙ってルナが拳銃で頭を吹き飛ばした。

 残っているのは、先程錘付の縄を投げてきた男だけだ。

 男は千切れた縄を捨て、別の武器を取り出す。今度の武器も縄だが、先端に付いているのは錘ではなく金属製の爪だ。男が縄を振り回すと、まずはルナに襲いかかった。投擲された爪が、ルナの腕を掠る。袖が破け、血飛沫が飛んだ。ルナが銃を落とす。

 男は一度爪の付いた縄ーー飛爪を手元に手繰り寄せると、再び投擲の構えに移る。

 勇海がショットガンから拳銃に持ち替えようとするが、間に合いそうにない。

 明智は咄嗟に左手のM649を向けた。

 射撃技術に自信があるわけではない。

 だが、ここで撃たねばいつ撃つのか。

 明智は引き金を絞った。

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