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シンデレラにお願い  作者: 高遠 泉
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魔道士認定式

「セルフィス様ぁー!!」

遠くから魔道士の青い制服を煌めかせながら、部下の中でも少しお調子者のゼルが明るい茶色の髪をなびかせながら息を切らせながら走ってくる。

今日は月に一度、強力な魔法を得た者がまず迎える魔道式の日である。

強制的に魔道士として登録させられ、城に勤務させられる。というイメージだったが、どうやら城にて魔道士の基礎を学ばさせるとても良心的な制度らしい。

もちろん給料も支払われる。

で、先日行われた試験で無事に魔力ありと認められた者が魔道士見習いになれるという大事な式だ。

式というが、実際はその式の後に行われる実践訓練で半数が本場の魔道士との力の格差に驚き、魔道士になることを諦めて去っていくという日でもあった。

要は最終試験と言っても過言ではない。

もちろん、1日で辞めていくのだから給料などでない。だが、1日分のほんの少しの慰め程度の勤務であっても勤務は勤務。と、城の料理人たちが可愛そうだ、という理由で作られた美味しい御飯を持たせてさらせる日なので、お城から御飯が支給される有難い日と魔道士見習いを希望する者も後を絶たないのだが。


「どうした。」

濃紺の髪を風になびかせ城に勤務する大半の女性を虜にしているという噂のセルフィスが涼しい顔をして目の前の、もうすぐ死ぬんじゃなかろうかという部下を前に尋ねる。

「あ、・・・・あのっ!!」

「…水、いるか?」

「い、・・・いえっ!!」

今、この場でゼルの体力が回復するのを待つより自分が魔道士見習いの式場へ出向いた方が早いのではなかろうかと思いながら部下の息が整うのを待つ。

部下の様子から何やら式場で起こったらしい。

セルフィスの横ではこれまた魔道士にしておくには勿体ないと噂される整った筋肉の持ち主であるフォルガが未だ言葉も話せない状態のゼルを呆れた顔で見つめていた。

「…。第一会場で何かあったのか?」

今月は年の初めと二か月後に行われる舞踏会への足掛かりとしてなのか、応募者が全国から多く、会場も通常ならば一つで行われていた所が今日は3つの場所に分かれて初日の実践訓練が行われている。

「あ!はい!フォルガ様!」

「どうした。」

「あのっ、一人の魔道士見習いが、訓練の岩を壊すどころかその先の森まで一気に破壊させてしまいまして!!!」

「何?!」

冷静沈着で有名なセルフィスの眼がほんの少し見開かれる。

どんなに力の強い魔道士でも一人で森まで破壊出来るものではない。

ましてや訓練を受けていない、魔導の基礎を理解していない訓練生に出来る技ではないはずだ。

今いる魔道士の中でもそのような膨大な力を持った者など目の前にいるフォルガぐらいなもので…。

どういうことか、さっぱり訳が解らないと思いながらもただ事ではない事態に魔道士隊長であるセルフィスと副長のフォルガはゼル先導の元、その第一会場に足を向けたのだった。


*************************************


よーっしゃ!やったるで!!!

私は気合いを胸に目の前のこの岩を砕け。という命令を実行するために腕をまくっていた。

今日は大切な魔道士になる初日。

ここで認められなければ、お給料の前借が認められないかもしれないと思ったら胸がドキドキしてきた。

魔法は使える。

という事が解っていたものの、どのくらい自分に力があるのか思いっきり試した事はない

魔道士になる前の試験だってただ、ほんの少しの風を起こしたり火を起こしたりしただけだ。

…多分、この初日の試験で配属先等が振り分けられるに違いない。

話に聞いた所によると、2年間は魔道士見習いとして魔道士の基礎を徹底的に学べるらしい。

そのクラス分けも兼ねていると聞く。

ここでいい成績を目指さないと我がクラリスとソフィーの華々しい未来がない!!


腕をまくる。


あー!!もう、メイド服とはいえ、この服じゃまだな。

フリルいらねえな!!!


試験官が「始め!」と号令をかける。


今までの皆さんの結果を見ているに、岩をほんの少し押せたもの。

ひびを入れられたもの。

変化すらつけられなかったもの。

様々だが、砕いたものはいない。

砕くなら私だ!


脳裏には某漫画のかめはめ○が浮かぶ。

力を込めて私は叫ぶ。

「かーめーはーめー・・・・そいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

どこおおお!!!!!

という音と共に自分でも驚くほどの空気砲が手のひらから出て岩を砕くというより、目の前に聳え立っていた山までの森の木々たちをずどんと粉々にしていた。

地鳴りと共に破壊された森林の土煙で周辺一帯が爆破されてしまったのような土煙と立ってはいられない爆風が吹き荒れた。

立っていられない爆風に必死に踏ん張りながら土煙が収まるのを待つ。


「…。」


え、どうしよう。

げほげほと砂煙をすった幾人かの声が聞こえるものの、辺りは静まりかえっている。

違った意味で。

目の前にはやはり、自分のいる所から山の麓まで一直線に綺麗に破壊された道筋が残っている。

…誰もいなかったでしょうね…森の中…。

少し心配になりながら、後ろを振り返る。


顔面蒼白の魔道士見習いたちが静止している。

ですよねー。

ははっ。


や、やりすぎ、ですよねー。

青い顔をした試験官にてへっと頭を下げた。

号令をだした試験官の横にいた明るい茶色をした髪の青年が、はっ!と我に返り試験官に何やらを呟くと青い顔のままその場を後にした。



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