武道会、もとい舞踏会
元の世界に戻るなんて事をすっかりそっちのけで自給自足かつ魔法の世界になじんできた頃、忘れていた舞踏会のチラシが舞い込んできた。
もちろん、なじむ前に母上様やらソフィーやらがお姉さまが変!と話題になったが、そこはそれ。巧みな会話術で丸め込んだ。
よくよく我が家の事情を調べてみると、やはり赤字だった事も解り、どうやら私が知っているシンデレラの童話の通りとはいかない事が解った。
母上様と一つ下のソフィーも別に意地悪をしているわけでもなかった。
まぁ、ちょっと嫉妬してた所はあるみたいだけど。
嫉妬する気持ちもわかる。
なんたって可愛いし性格もいいし、それに声も可愛いとくれば。
嫉妬しない女性がいるだろうか。いや、いまい。
とりあえず、お父様が生きていた頃は羽振りもよかったが、亡くなり収入源が亡くなりメイドに退職金の様なモノを支給していたら、そりゃあ、金銭的に苦しくなるというもの。
裁縫の仕事をコツコツと家事は全て一番下の妹に任せて日々の暮らしに当てていたというのだから、もうシンデレラの物語ではなさそうだ。
ということで、私もこの世界に来たからには稼がなくてはならないと思い立った所、幸運にも魔法に恵まれていた。
うふふのふ。である。
とりあえず、シンデレラの物語ではなくなったものの、クラリスを王子に売り込む。という目標は変わらない。
強力な魔力を手に本日、やっと城への勤務が認められた次第である。
そんなスキルを着々と進めていたある日、そう、舞踏会のチラシが舞い込んできたのだった。
「二か月後かぁ・・・・。」
「どうしたの?お姉さま。」
「これ。」
「あぁ、舞踏会!」
「舞踏会といえば?」
「王子様!!」
そうね、王子様よね。ええ。それよりもね。
「…お金よ。」
遠い目をして答えたのだった。
舞踏会。
よく解らないけど、綺麗なドレスと靴が必要。
という事は知っている。
だってシンデレラの童話では、魔法使いのビッグマザー。ゴッドマザー?だか何だかが、それは見事なドレスとガラスの靴を着せ、みすぼらしい格好をした少女が一夜にして王子に見初められる、大事なイベントなのだ。
そう!
要はお見合いイベント!
この大事なお見合いイベントを逃してはいけないのである。
この家計を助けるためにも、クラリスには王子様のハートをゲットしてもらわなければならない。
ならないのに。
しくしくしく。
私の勤務は明日からなのよねぇ。
ドレスの仕立てに何日必要なのかしら。
それにクラリスだけって訳にもいかないわよね。
ソフィーだって立派な娘だ。
髪の色は金色でないにしても。
王子に見初められるほどの美人じゃないにしても。
舞踏会に出席するのは王子だけではないのである!
なんたってお見合いイベント。
見かけはしっかりとさせてあげたいのが姉心。うん。
なのに。
あー。前借、させてくれないかなー。
お給料。
じたばたしてもしょうがない。
明日、お城で聞いてこよう。




