ネサンスへの旅
久しぶりの更新です
せい君と久郎さんが帰ってこないまま、パーティーが始まった。
広い会場には赤、青、黄色、色取り取りのドレスに身を包んだ花が咲いている。
だけど、私は壁の花。
折角、素敵な真っ赤なドレスを貸してもらえたのに、一番見て欲しい人がいないから笑顔も曇ってしまう。
兄貴に誉めてもらうんだって、張り切っていた夏子ちゃんもつまらなそう。
黄色いドレスに身を包んだ向日葵も壁に寄り掛かって萎れている。
「あらあら、折角のパーティーなのにつまらなそうな顔をしてたら駄目よ」
ブリーゼさんのドレスは、髪の色と同じ緑色。
落ち着いた緑色のドレスが大人の魅力を引き立てていた。
「ブリーゼさんすいません、私パーティーとか苦手なんですよ…せい君もいないし…」
「紅葉、サクセスの時は大変だったんですよ。貴族や騎士が次々に口説きに来たんです。でも、不思議な事に、今日は誰も来ないんですよね」
夏子ちゃんの言う通り、あまりしつこいから思わずピシャリとやってしまったんだよね。
せい君に聞いたらかなり危険な行為だったみたい。
「そりゃそうさ。ジャスティスファングの女に手を出す命知らずなんていないさ。早い話がここの連中はアカイにビビってんだよ」
答えてくれたのはシェルムさん、シェルムさんは喪服を思わせる真っ黒なドレスを着ている。
深紅の髪に褐色な肌、痩せた体が黒いドレスに包まれて妖艶な色気を放っていた。
「せい君が何かしたんですか?」
魔王を倒した魔法使いが、ここまで怖がれるなんて考えにくい。
「アカイは一人で何千って魔族を一瞬にして屠ったんだ。炎で焼け爛れた死体、雷撃で黒こげに死体、冷気に包まれて粉々に砕け散った死体、爆発により四散した死体。そんなのを何百、何千と作り出した男を恐れるのは不思議じゃないだろ?ましてアカイは、命懸けで救った、この世界に裏切られたと言っても過言じゃないからな。復讐に走っても不思議には思われないんだよ」
「せい君はそんな人じゃありません!!」
私に怒られてショボンとする人が復讐なんて出来る訳がない…今のせい君は幸せなんだし。
「それはアカイを知ってる奴だからだよ…それにもしお前等の誰かが傷付きでもしたら、彼奴は怒り狂うだろ?だからだよ」
「アカイさんは感謝されている以上に畏怖されているんですよ。言い方は悪いですけど味方でも腫れ物に触れる扱いになると思いますよ」
… だからせい君はパーティーに出なかったのかな。
「夏子ちゃん、せい君達の陣中見舞いに行かない?」
ドレスを見に来ないなら見せに行ってやるんだから。
「そうだね、あの二人は放っておくとご飯も食べないで馬車を改造するだろうし。昔から二人で何かすると時間を忘れちゃうんだ」
夏子ちゃんの言った通り、せい君と久郎さんは子供が玩具で遊ぶ様に夢中で馬車を改造していた。
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改造が完成した馬車は、かなりのハイスペックになりました。
時空拡張により広くなった室内、重さを考慮して軽量魔法を掛けてあるのでレッドファング一頭で牽いても負担になりません。
そして久郎のアイディアでサスペンションに衝撃吸収の魔法を掛けました。
これで長時間の移動も苦にならなないでしょう。
ソヨカちゃん達の負担を考慮して内鍵のある隔壁を設置、これにより私とニアミスを防げます。
トイレ、水道、台所、冷暖房が完備のキャンピング馬車となりました。
マジックルームに行ける扉がありますから、何時でもお風呂に入れます。
これでカミカさんとブリーゼやシェルムが会う事を防げます。
「アカイ、凝りすぎなんだよ。馬車の中に部屋を作ってどうするんだ?」
「快適な旅を送る為です。本当は飛行機能とかも着けたかったんですよ」
魔力供給源のおりやんがいれば実現出来たんですけど。
「でもありがとうございます。この馬車ならソヨカ達も落ち着けると思います」
「オリヤンには何回も助けてもらいましたからね。紅葉、三米君は来た?」
三米君の荷物を積み込んだら、サクセスに向けて出発です。
しばらくすると、三米君がイッポと一緒にやって来ました。
「兄貴、俺はここに残ります。流夏達と一緒にいたら強くなれないと思うんです。だから俺はリヤンで修行をしていきます」
三米は何かが吹っ切れた様な良い顔で宣言をしました。
「そうか、イッポ頼んで良い?」
「任せて下さい。ミツマイ君は責任を持って一人前の戦士にしますよ」
何しろ、リヤンには近接攻撃の達人が何人もいるから大丈夫でしょう。
「せい君、カミカちゃんもネサンスに来るかな?」
「本人に任せるしかないよ。最悪、ナトゥーラ様が運営している魔法学校に通ってもらえば良いし」
多分、カミカさんはサクセスに居づらくなるでしょうから。
「…それでサクセスの餓鬼共はあんな軽装なのか。アカイ、ブリーゼ、久しぶりだけど頼むぜ」
「ええ、二人がいてくれれば長めの詠唱も問題がありませんね。三米君、この袋の中にマジックアイテムを入れてる。後悔しない様に修行を頑張って」
まぁ、これから何度もリヤンに通う事になるから修行の確認は出来ますし。
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リヤンを抜け、サクセまで後少しとなりました。
(ここから森になるな)
「紅葉、ブリーゼとシェルムに声を掛けてきて」
ちなみに新型馬車の御者台はベンチタイプになっていて、私の隣は紅葉の指定席になっています。
紅葉が馬車に入るのと入れ替わりでサクセスの騎士が近づいて来ました。
「すいません、前に賊が出たらしいので確認に行ってきます」
サクセスの騎士達はそう言い残すと、一気に走り去って行きました。
「馬に負担をかけない為に軽装備でいたんですね」
「行きと違ってガチガチに緊張していたから、丸分かりだったよ…賊のお出ましだ」
森から出てきたのは布の服に身を包んだ山賊もどき。
「動きは鍛練を受けた戦士のものだな。それに服の下に鎧を着込んでいる…サクセスの実働部隊ってとこか」
シェルムの言う通り、カミカさんと一緒に私達を始末するつもりなんでしょう。
「それでアカイさん何分稼げば良いですか?」
ブリーゼの手にあるのは鎖着きのモーニングスター。
「あれだぞ、俺とブリーゼで片付けても構わないぜ」
シェルムが持っているの分厚い片刃の剣。
「ブリーゼはカミカさんを保護して下さい。シェルム、五分頼む…
闇よ、我等の目を保護する壁となれ、ダークウォール。
大気に潜みし水滴よ、互いに擦り合い、氷晶に変われ。
氷晶よ擦り合い、霰となれ。
霰よ、擦り合い雷を生め。
負の雷よ、我が敵を包み込め。
正の雷よ、ここに集いて敵を撃て。
雷の枝!!」
なんとか噛まずに唱えられました。
耳をつんざく様な音が辺り一帯に響き渡り、雷が枝分かれしていき、賊もどきを次々に打ち据えていきます。
予めダークウォールを唱えておかなきゃ失明していた危険性があるんですよね。
やがて肉を焼き焦がした臭いが漂い始めました。
「負の雷をまとわせる事で、敵だけを倒す雷系の魔法サンダーブランチか。相変わらずえげつねえな」
「い、今の魔法は?ジャスティスファング様百のオリジナルスペルが一つサンダーブランチ!!あのウォルト高原戦役で使われたという幻の魔法?なんでアカイさんが使えるんですか?いつ、誰から習ったんです?教えて下さい!!」
カミカさん、これで気付きませんか?
後、シェルムとブリーゼは笑い過ぎだと思います。
それにオリジナルスペルは百もありません。
精々、三十です。
また新作を書いてます
良かったら読んで下さい




