似ていない兄弟?
久しぶりの更新です
魔王カイラインを倒した英雄も、今では哀しき小市民。
イッポに宛てがれわれた部屋が豪華過ぎて身の置き所がありません。
身を休める為の部屋なのに、神経が休まらないとは情けない。
このフッカフッカな絨毯なんて一体いくらするんでしょうか?
もし、コーヒーなんかを溢したら…。
「せーい君、こっちでお話しよ」
紅葉がベッドで手招きをしていますが…しかし、今は涙を飲んで我慢をしなくてはいけません。
「今、行くよ。でも、今は話だけだよ」
「えー、折角こんな素敵なお部屋にいるのに?」
不満そうに頬を膨らませる紅葉…言っておきますが、私の方が紅葉の何倍も不満です。
「部屋の外に護衛が何人もいるんだよ」
国賓をもてなす為の部屋に護衛がいるのは当然、気配からすると四人はいるでしょう。
「ええっー!!やっと二人っきりになれたのにー。なんで護衛をつけるかなー」
「そりゃ自分の国に招いた相手が襲われでもしたら大変だからね。王族や貴族には年がら年中護衛が着いてるし」
私なら直ぐにストレスが溜まって出奔すると思います。
「偉い人は大変なんだね…聞かれたくないお話もあるし」
私も紅葉とのイチャイチャトークは人に聞かせたくないですし、紅葉の可愛い声は絶対に他の男に聞かせたくないです。
ジャスティスファングは魔法を唱えるのも速いが、夜も早かったなんて言われた泣きますよ。
「まぁ、王族ともなるとお風呂や服の着替えをメイドや執事に任せるから、羞恥心が薄いらしいよ」
そんな状況で英ちゃんは良く八人も奥さんを作れたと、変な感心をしてしまいます。
「せい君も着替えをさせてもらったりしたの?…フィルさんに」
「そんな事をしたら、ベルク公爵に叱られるって。”戦場では自分で自分の事をして当たり前、だから料理や裁縫を覚えておけ”何回もどやされたよ」
ちなみに、ベルクの男の料理教室は食材の調達から始まります。
戦場で塩は貴重品、焼いただけの肉にも慣れろって、獣臭い肉を食べさせられたのも今では良い思い出です。
慣れても不味い物は不味いから、塩を大量に購入したんですけどね。
「でも、せい君は何かに集中すると他の事が疎かになるでしょ。そんな所が母性本能をくすぐるから、フィルさんも放っておかなかったんじゃないの?」
年下の恋人に母性本能をくすぐるタイプ認定をされるとは。
「ナトゥーラ様が研究室に他人を入れるのを厳しく禁じていたから、魔法を作っている間はフィルと会う事がなかったし、研究が終わっても身なりを整えてからじゃなきゃナトゥーラ様は研究室から出るのを許さなかったから心配はしてないんじゃないかな」
考えれば考るほど、英ちゃんに乗り替えられて当たり前な気がします。
「してたと思うよ、せい君が鈍いから気づかないだけだよ。それにずっとナトゥーラ様と一緒じゃなかったんでしょ」
「だからマジックルームを作ったんだよ。一人でゆっくり研究をしたかったし。何より研究途中の魔法は人に見せないのが魔法使いの矜持なんだよ」
未完成の魔法は暴走して、思いもよらぬ被害をもたらす事があるんです。
旅をしている時に時間が出来ると、私は魔法の研究、オリやんは人々への癒しを、ソウ君はアーツを持続させる為の体力作りを…英ちゃんはディプル王女のお相手や領主や貴族とのお茶会とかに出てもらっていたんですよね。
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部屋に入って二時間が経った頃でしょうか、ブリーゼとシェルムが部屋にやって来ました。
「アカイ、お前の今後の予定を聞かせてくれないか?」
シェルムはソファーにドカリと座るなり、そう言ってきました。
対するブリーゼは音をたてずにゆったりとソファーに座ります。
「一度、サクセスに戻ってからネサンスに行こうと思います」
出来るだけ、早くネサンスに行かないとナトゥーラ様のご機嫌がヤバくなるんです。
「そこで相談なんですが、私とシェルムも一緒にネサンスに行って宜しいでしょうか?」
「ブリーゼ達も、ネサンスに用事があるんですか?」
ブリーゼとシェルムが同行する一番の利点は先ず戦力の増強。
一流の前衛職である二人がいてくれると、紅葉達の護衛も任せれますし、私も本気で戦えます。
次に前衛の戦い方を紅葉や久郎に教えてもらえる事。
そして、私の相談相手になってもらえる事。
難点としてはブリーゼに衆目が集まり、私の正体がばれる事。
「私は子供達をネサンスに避難させようと思います。どうしても猿人はリヤンにいると目立ちますから」
英ちゃんはオリやんを魔道具に組み込んだ事を国際的に隠したいでしょうし、戦争中ですから無限に魔力が回復出来る魔道具を壊す訳にはいきません。
つまり、英ちゃんがオリやんを人質にするのは不可能。
そんな事をしたら、リヤンやネサンスの第三国とも戦争になりかねません。
「ネサンスに話はいってるんですか?」
オリやんとブリーゼの子供を保護すると言う事は、キヨキ聖皇国との対立に繋がります。
「ええ、ナトゥーラ様もベルク様も歓迎の意をあらわしてくれました」
そりゃそうです。
シェルムとブリーゼ二人の護衛騎士がネサンスに加わると言う事は、政治的にも戦力的にも大きいんですから。
「そうですか。それとオリやんに弟がいたって話は聞いた事はありますか?」
「ええ、名前はフガク・リュウ。確かオリベの四才年下です」
「せい君、まさか…」
顔と雰囲気は似てませんが、やっぱりは冨楽先生はオリやんの弟でしたか。
オリやんが日本からいなくなったのは、私と同じ中学二年の時です。
優しいお兄さんが突然いなくなった事は、当事小学四年生だった冨楽先生にどんな影響を与えたんでしょうか?
感想お待ちしています




