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そっちかよ! ユウリのドタバタ転生記 〜神様、『太さ』スキルって何!?〜  作者: エフピロ


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第12話 結界

 「サークル」という聖女の奇跡と呼ばれる魔法。

 ゲームみたいに言えば、職業専用魔法。


 欲しかったのこういうのだよ! と思ったものの、なかなかハードルが高い。

 まず詠唱が長い。しかも意味不明な言葉まで入る。


 どう覚えたものかとしばらく考えたけど、書いて、読んで、覚えるしかないという結論に至った。受験勉強と一緒。


「ユウリ、それは……文字なの?」


 別室に移りリリアの話す呪文を書き写していたら、クラウディアが怪訝そうに覗き込んできた。


「え? ああ、もしかして日本語読めない?」


「ニホンゴというのですか。全くわかりません。私たちの文字とは全然違いますわね」


 そう言って記号の羅列を書いてみせてくれる。

 なるほど、全く読めない。


 喋れるし聞き取れるけど、文字は別枠だったか!

 コミュニケーション取れてるし、全然文字を見かけない生活をしていたから気にしていなかった。というか神殿などで視界に入っていたかもしれないけれど、それが文字だと認識していなかったかもしれない。


「あー、ずっとこっちで生活していくなら読み書きは覚えないとだねえ。喋れるから油断してたわ」


「ユウリ、あなた、本当に違う世界の人なのですね……」


 クラウディアは、まじまじと私の顔を見ながら言う。

 確かに、全然違う言語を操るというのは、異邦人っぽさがある気がする。

 喋れているし、見た目も女版ユーリくんなので違和感が薄かったのだろう。


「そ。読み書き計算できるけど、あなたたちに見せられないわね」


「ユウリは高い教養を持っているのだな」


 ユーリくんが感心する。

 こっちの平均がわからないけど、現代日本ほどの教育水準はないんだろうなあ。


「向こうじゃ普通のレベルだけどね」


「……毎回思うけど、どんな世界なのよ」


「こことは全然違うってのだけは確かね。魔法なんて無いし。さて、それじゃ実践行ってみましょーか!」


 また王宮の中庭に移動する。


「詠唱中はこうで、終わりに手を広げて、こう。そして最後に、サークルと言いながら魔力を中心に集めて、天高く放ってください」


 リリアが段取りを改めて教えてくれる。


「わかった、やってみるわ」


 まだ暗記はできていないので、テーブルに置いたカンニングペーパーを見ながらやってみる。

 ちなみに、私が日本語で書かれた文を読むと自然なこちらの言葉で聞こえるらしい。不思議な能力である。文法の違いとかどうなってんねん。


「ええと、森羅万象に宿る聖なるマナよ……」


 ここで重大な事実が発覚。

 祈るポーズを取る時に目を閉じるからカンペが読めない。


「……目、開けてても大丈夫よ」


 詠唱が止まって口をパクパクさせている私を見かねて、リリアが助け船を出す。

 早く言ってよ。


「……博愛と信頼の使徒たる聖女にいくばくかの道を示せ――」


 こんなんじゃ無理だろうなと思いつつ続けると、意外にも光が集まってくる。

 三分の詠唱を終えた頃には、自分の身体を直視できないくらいに光っていた。


「サークル!」


 広げた両手を徐々に狭めていくと――


 ん? なんか大きくない?


 リリアがやってみせた時のものが野球のボールくらいで、私が作ったのはサッカーボールくらい? ある。


 んー、まあ、これも『太さ』のうち?

 一抹の不安を覚えつつ、仕上げをする。


「弾けよ!」


 私はその光のボールを上に投げる。


「……おっも!」


 ボウリングの球を投げてるのかと思うくらい重かった。

 なんというか、私の魔法って、大きく太くなるだけじゃなくて確実に質量あるよね? なんでなん?


 なんとか私の頭上くらいまで上がった光が弾け、ドーム状に結界が広がっていく!


 ……あらゆるものを押し除けながら。


「ちょっ、リリア! これどう止めんの!」


「知らねーよ! なんだよこれ!」


「ユウリ! 止めてくれ! 城が壊れる!」


 あーだこーだ言っている間にも、ものすごい音と共にあらゆるものを巻き込みながら広がっていく光のドーム。

 あっ、ガゼボが押し潰された。


 ええい!


 私は頭の上の光の玉をジャンプしてキャッチしてみる。

 魔法なのに普通に手が引っかかった。そのまま引き寄せる。


「デリート! イレーズ! ストップ!」


 しかし光の玉は止まらない。

 まずい。あと少しで王宮に到達する。


「ブレーク! サスペンション! インタラプション! 止まれー! この、ライトアロー!!」


 ビカッ!!!


「うわっ!?」


 ダメもとでツチノコライトアローを光の玉へ叩き込んでみたら、辺りがものすごい光に包まれた!


 光に眩んだ目が落ち着くまで、どれくらい経っただろうか。

 一分や二分くらいはかかったのではないだろうか。

 なんて強力な目潰し。


 視界が戻ると、光の玉も結界も消えていた。

 代わりに、何もなくなってしまった中庭と、庭園にあったモノたちの残骸が残されていた。残骸は敷地の端に綺麗な円を形作っている。


「あっはっは……なんじゃこりゃ」


 そこはかとない疲労感、というか徒労感に襲われ、思わず座り込んでしまう。


「……物にぶつかる結界とは。御使の聖女の魔術は毎回想像の上を行く」


 クラウディアが呆然と呟く。


「ユウリ、城に届く前に止めてくれてありがとう、助かった……」


「マジヤベー、なんだ今の……」


 ユーリくんもリリアも信じがたいものを見たという感じ。というか私も。


 一発で成功するとも思っていなかったし、結界が分厚くなるだろうなってくらいは思っていたけれど、まさか結界が当たり判定を持ってるなんて思わなかった。

 光の玉が重かった時点で怪しむべきだったのかもしれない。


「ごめんねーユーリくん。中庭めちゃくちゃにしちゃった」


「いや……御使の聖女様の奇跡を甘く見ていた僕がいけなかった。今後はちゃんと街を出て安全な場所でやろう」


「そうね、いやーライトアローが効いてよかったわほんと」


 効かなかったら今頃、決戦より早く王都が壊滅していたかもしれない。

 御使の聖女に関する不名誉なエピソードが増えるところだった……あぶないあぶない。

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