【第五話】恐怖を知るのか、理由を知るのか
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~童話に隠された“世界の滅び”の真実とは?少年が辿り着く先に待つものとは何か。誰もが知る物語の、誰も知らない謎を追うファンタジー譚、開幕!~
聖教会の馬車が街道をトコトコと進んでくる。
僕は無視して、横切ろうとした時だった。
「ぐぁあああああ!」
なんだ!?
聖教会の馬車から、絶叫と焦げた油の匂いが何の音もなく立ち込めた。
反射的に馬車の方に顔を向けると、馬車が炎に包まれていた。
火を纏う騎士が躍るように地面に体を擦り付けている。
「なんで……どうして」
ノタは冷汗を流し、鳥肌が立つ。
「僕は……この水晶を知っている」
ローブの内ポケットにしまっていた水晶を強く握りしめて、震える声色で唱える。
ここに火の気配は何もなかった。突然燃えたんだ。
「――知らないと」
ノタは小声で呟くと、地面を踏み抜く勢いで馬車へ走る。
体が熱い!
ノタに火の粉が降りかかる。
ノタは炎を手で掴みながら、焼け落ちる荷台に後方から飛び乗った。
「――誰だ?」
鉄の焼ける音がする荷台で、焦げる肉の匂いを嗅ぐ黒いローブを着た誰かが立っていた。
「何処の誰か知らないが、俺は今、実験してるんだ。この騎士が燃えカスになるまでは待ってくれるかな?」
ノタは遺体に目を向ける。荷台に乗っていたのは、三人。
こいつがやったなら、炎の魔術かスキルを使うのか?
「お前、何をしたんだ!」
ノタは燃え移るローブを気にせず、黒いローブの奴の肩をしっかりと掴む。
「なっ、!」
目を見開き、驚いた表情をしたのちに、ノタの腕を振りほどく。
「熱!」
ノタが振りほどかれた勢いで荷台に尻を突く。炎が瞬く間にノタへ迫る。
ノタが黒いローブの奴の方を見ると、手には石のようなものを持っていた。
「それが、原因か!」
ノタは吹っ切れたような、乾いた笑顔を薄く浮かべる。
ノタは燃えている荷台の破片をちぎり取り、黒いローブの奴へ投げる。
軽く背中に当たるだけで、有効打にはならない。
――ダメか。
ノタは荷台から飛び降り、近くの小さな湖に飛び込んだ。
湖の水面へ上がると、馬車は未だ、盛んに燃えていた。
突然馬車が燃えた理由は、あの黒いローブの奴が石で燃やしたのだろう。
燃える石……思い当たるのは魔石だ。
陸へ上がり、濡れた顔を冷たいローブで拭う。
実験とか言ってな……。
しばらくして、火の勢いも弱まり、馬車のほとんどが燃え、炭の匂いが漂い始める。
「何か分かるかもしれない」
ノタは馬車の残骸へ足を踏み入れると、燃えた遺体などを見て、触っていった。
「この騎士達……全員、喉の方が焼けている。内側から燃えたのか?」
あの魔石は、もしかして、人体の内側から燃やす魔石なのか?
それなら、水をあらかじめ飲んだりすれば対策にはなりそうだ。
「はぁ――怖かった」
魔石に注意すれば、もう大丈夫だな。村の外は危険が多いな。
火傷もしているし、早く次の街へ行こう。この人たちのことも、次の街で知らせないと……。
「俺としては無視したいんだけど、同業者だと困るな」
黒いローブの奴が、近くの林の中から影を潜め、覗き見ていた。
「まだバレる訳にはいかないんだよな、人体発火のことについて……」
そう言い残して、林の闇の中へ溶け込んでいった。




