【第一話】何故、世界は一度滅んだのか
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~童話に隠された“世界の滅び”の真実とは?少年が辿り着く先に待つものとは何か。誰もが知る物語の、誰も知らない謎を追うファンタジー譚、開幕!~
『そして、世界は一度滅びましたとさ』
ある童話に登場する何の変哲もない一節。
幼い頃、子守唄代わりに母から聞いた物語で、突然飛び込んでくるこの言葉が昔から頭にこびりついていた。
「ねぇ、お母さん、なんで世界は無くなっちゃったの?」
いつもの夜に僕はお母さんにどうしても聞きたいことを言った。
母は少し口を開いて、童話の本をめくる手を止めた。
「それはね――きっと、悪いことをしたから神さまが怒ったのよ」
幼かった僕は妙な納得感で、その夜は聞いたことを鮮明に覚えたまま夜に沈んだ。
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その日から村の様々な人に同じことを聞いた。
「それは、神さまが――」
司祭も騎士も、誰もが口々に同じことを言う。
「神さま、か――。みんな同じことしか言わない……」
心に抱えたモヤモヤを撫でる。
土と小石を踏む音と涼しい牛の糞の匂いが通り抜ける。
僕は俯いたまま、家の玄関へ歩みを独りでに進んでいた。
「よぉ、坊主。大事なおもちゃでも失くしちまったか?」
帰り道に中年の冒険者のような恰好で、塀によりかかっていた。
「おじさん誰?」
「俺はモートゥス、冒険者で、最近帰ってきたんだが、自由すぎて金だけが出てくばかりで……」
「モートゥスおじさんは暇なの?」
モートゥスが目線を合わせようと屈む。
少し酒臭く、土の匂いがした。
「坊主、おもちゃを失くしたんなら、モートゥスおじさんが探してあげるよ」
「おもちゃは無くしてない。僕はノタ、6歳だ」
「ノタ坊は、なんで下向いて歩いてたんだ?」
僕はモートゥスおじさんに童話のことを打ち明けた。
どうせ同じことを言われるだろうけど、僕はずっと疑問だったことだ。
何故、世界は一度滅んだのか?
「みんな神さまが怒ったから滅んだって言うんだ。ねぇ、どうやって、滅んだの?」
「……どうやって滅んだ、か」
「おじさんなら、分かるよね!?」
ノタは目を輝かせてながら、モートゥスの泳ぐ瞳を見つめる。
「わりぃな、ノタ。その答えは誰も答えられねぇ」
「どうして!みんなどうやって滅んだか教えてくれないの?!」
今にも泣きそうな顔でモートゥスの薄汚れた服を引っ張る。
「本当の所は誰にも分からないんだ、何故、世界は一度滅んだのか」
「……分からない?」
モートゥスがノタの両肩をしっかりと掴む。
優しくも強い力で掴んだその手は少し冷たかった。
モートゥスが視線を落とす。
「その童話は本当に起きたこと書いているが、どうやって、いつ、滅んだのか分からないんだ。誰も調べてないんだ」
「なら――僕が、見つける」
誰も知っている童話の知らないこと。
何故、世界は一度滅んだのか。
分からないなら、僕がどうやって滅んだのか見つける!
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それが、暴いてはいけない世界の真実への一歩だとは、この時の僕は、知らなかった。




