第百二十二話◆剣編:犬を虐める者には裁きの鉄槌を
第百二十二話
そろそろ冬休みも終わる日数。朝のジョギングだかマラソンだかよくわからない特訓……ですらない何かも結構日数がたっているわけだ。
「じゃ、今日も行くか」
「ええ、今日もよろしくお願いします」
「こちらこそだな。準備体操はいいのか」
「自宅前でしてきました」
非日常が毎日続くとそれはもう、非日常ではなく日常である。つまり、空からロボットが落ちてきてそれに乗っている非日常がある一定の日数を過ぎるとそれはもう日常であるということだ。ちなみに、その一定の日数とは完全に自己判断でしか計ることが出来なかったりする。
そんな非日常が日常に変わろうとしていたある日、俺は面倒なことに巻き込まれた。いや、正確に言うのならば俺と剣が巻き込まれたのである。
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「今日もいい汗掻きましたね」
「……相変わらずタフだな」
きっと、一般的な女子中学生が走り終えたらばてて動かなくなるぐらいの距離を走破したのだ……今日はさすがに疲れた。
「帰るぜ、剣」
「ええ……ちょっと待ってください」
剣が止まった先には犬がおり、犬は高校生と思われる三人組にいじめられているようであった。
「ありゃ、あの人たちどこかで見たことあるな……何処だっけ」
「知り合いなのですか」
「いや、知り合いって言うか……ああ、以前俺を追い掛け回した三人組だ」
懐かしいなぁ、よくよく考えて見たらあの時助けてくれた人を俺は助けることが出来たんだっけ。
剣は俺が思案している間に三人組へと近づいていき、注意を始めているようだった。
「犬をいじめるなんて人間がする事じゃありませんよ」
「あぁ、うるせぇな」
「おいおい、よく見たらこの子可愛いじゃねぇか……どうだ、俺たちと一緒に遊ばないか」
肩に手を置こうとしたところでその手を剣が掴み、逆関節を決める。
「ぎゃっ」
「……気安く触らないでください」
恐ろしいほど冷たい声である。うわぁ、あれが剣の本性かぁ……。見る見るうちに男の腕は変な方向へと曲がっていく。気がつけば男は剣に馬乗りに乗られており、犬は逃げ去っていたりする。
「さっさと散ってください」
「調子に乗りやがってっ」
男の一人が剣の胸倉をつかもうとするがその手はすれすれで避けられた挙句、男の鳩尾に拳が叩き込まれた。
「うごっ」
男が倒れ付し、剣が馬乗りになっていた男は気絶しているようだった。つまり、必然的に残されたのはひとりだけとなる。
剣はまだ動くことの出来る男のほうへと視線を向けた。
「……」
「ひいっ」
そういって男は逃げ去り、後には動かない男二人と俺と剣が残される。
「剣、流石にこれはやりすぎだろ」
「やりすぎ……はたしてそうでしょうか」
「そうだよ」
改めて辺りを見渡す。どうみても死屍累々である。
「……じゃあ、雨乃零一先輩は私がやられてしまえばいいとでも言うのですか」
「いや、そうは言ってないぞ」
「それなら犬のいじめは見捨てろということでしょうか」
「それも違う。みろ、こっちの人は腕の関節がすごいことになってるだろ」
きっと、痛さで気絶したんだろうなぁ……肩をぐるぐる回していきなり逆方向に回そうとするとたまに外れそうになるのだがどちらのほうが痛いのだろう。
「私がやっていることは正しいことのはずです」
「そりゃそうかもしれねぇけど、後で面倒に巻き込まれても知らないぜ」
「別に、雨乃零一先輩に応援なんて頼みません。見るからに弱そうですし」
「まぁ、弱いけどな」
最近は少しばっかりがんばっているのだが剣から見れば弱そうに見えるだろう。あの笹川の兄である真先輩だって剣に負けているのだ。ストリートファイターとして生計を立てるといいさ。
そのときはそれ以上俺が何かを言うでもなく、収まったのだが問題が起こったのは冬休みが終わった後すぐだった。
特に後書きに書くことが無い…のはいつものことなので何かひねり出してでも後書きを書きたいと思います。後書きを大切にしている作者、雨月ですからね。犬か、猫か……どちらかといったら皆さんはどちらをとるのでしょうね。雨月は両方好きなのでなんともいえませんが、強いて言うなら猫でしょうか。放っておいても勝手に餌とか食べているし、構ってほしいときだけ帰ってくるという自己中っぷり。雨月の家に猫などいませんけどね。実は笹川兄妹は猫好きで、吉田兄妹は犬好きだったりします。後の話でわかることですが笹川兄は猫の耳が好きで妹は尻尾がすき、吉田兄は首輪が大好きで、妹は犬の従順さが好きという常人が聞いたらちょっと首をかしげる…いや、意外とそんなものなのかもしれませんね。さて、ストックもなくなってきたので今日は少しがんばって小説を書こうかなと思います。四月九日金曜、二十時五十七分雨月。