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第百二十話◆剣編:一月一日の剣

第百二十話

 一月一日、午前六時。携帯電話が鳴り響いた。

『……あぁ、ゼロワン様おはようございます。吉田満様からの着信です。ゼロワン様の反応が十秒以内に無ければ留守電にしますが……では、カウントを開始しま……』

「もしもし、満か…何か用か」

 いちいちゼロツーのアナウンスを聞いていると目が覚めちまう。しかも、カウントダウン移行までが長いためにこれまでカウントダウンを聞いたことはゼロだったりするわけだ。

『おはようございます、雨乃零一先輩』

「……やめろ、満。お前が妹の物まねをしても気持ち悪いぜ」

 前回は『雨乃零一先輩、夜、月が出ていないと外に出れないようにしてあげます』といわれて少々びびってしまった。声をそっくりに出来るんだからあいつも気持ち悪い特技を持っているよなぁ。

『いえ、本当に吉田剣です』

「まぁた、そうやって俺にウソをつこうとしても無駄だぜ。第一に、何で剣が満のケータイを使って俺に電話をかけてきてるんだよ」

『まだ私は携帯電話を持っていないんです』

「……なるほどな」

『それに、雨乃零一先輩の電話番号を知りませんから自宅電話からかけることができません』

「………なるほどな。けど、それなら満から番号を聞けばいいだろう」

『……兄はまだ寝ていますから』

「なるほど」

 一月一日。別に無理に早起きしなくてもいいだろう。夜遅くに寝たことだろうし、仕方のないことかもしれないな。

「なぁんて、納得すると思ったかっ。満め、いい加減本性を出しやがれっ」

『わかりました。そこまで疑うというのなら今から雨乃零一先輩の居候している家に行きますね』

「おう、いいだろう」



―――――――――



「あけましておめでとうございます、雨乃零一先輩」

「お、おお……って、本当に来たんだな」

「ええ、疑惑をもたれたままでは気持ち悪いですからね。さて、今日も行きましょう」

「……何処に」

「決まっているじゃないですか。朝のマラソンです」

 何を馬鹿なことを聞いているんだという顔だった。

「…てっきり、初詣かと思ったよ」

「そんなに行きたいんですか、初詣」

「いや、別に行きたいってわけじゃないんだけどな」

 勘弁してくれよ、正月早々マラソンなんてしたくないぜぇ……とは口が裂けてもいえなかったりするわけだ。

「じゃあ、一緒に初詣に行きましょう」

「え……」

「正月早々、マラソンというのも少し寂しい気がしますし、私、友達と一緒に初詣なんて初めてなんですよ」

「へ、へぇ、そうなんだ」

 心なしか、嬉しそうな表情がまぁ……可愛いと思わないでもなかったりする。

「……そういえば、初詣なんて行ってる場合じゃなかったんだよな」

「ん、何か言いましたか」

「いや、何も。さっさと行こうか」

 頭の片隅には昨日、いや、去年佳奈に言われたことが居座っている。俺は、どうすればいいのだろうか。



―――――――



「雨乃零一先輩は去年の初詣、誰かと一緒に行ったんですか」

 初詣、やはり人が沢山動いて……いや、蠢いており、すりや痴漢が横行してもばれないのではないかと思ってしまった。

「ん~……そうだな、去年は行ってないなぁ……爺ちゃんと一緒に家にいたぐらいか」

 去年何をしていたのか思い出せないが爺ちゃんと一緒にコタツに入っていたことぐらいか……特に気にしたことなんてなかったが今じゃそれも叶わない事なんだなぁ。

「ああ、そういえば兄が行っていた事なんですけどご両親が行方不明だというのは本当なのですか」

「……全く、満の口に鍵でも掛けておかないといけないな……まぁ、その通りだ。別に隠していることでもないんだけどな」

「寂しいとは思わないんですか」

「……率直に聞くなぁ……」

 この質問、以前誰かにされたことがある。誰だっただろう……う~ん、笹川あたりだったかな。前からやってきた小さな子どもを避けた後に答える。

「今は思わない」

「じゃあ、小さいころは寂しいって思っていたんですね」

「そりゃあな、友達が少なかったのも一つの原因だな。その数少ない友達の家に行くとよ、お母さんがいるんだよ。羨ましいとは思わなかったけど、何で俺にはお母さんがいないんだろうって考えたことはあったな」

 つまり、羨ましいという感情よりもいない理由が気になったというわけである。人ごみを形成している部分で俺はそんな事を考える。

「おじいさんには聞いたのですか」

「俺は聞かなかったよ。理由を聞いて納得できるほどまだ成長してなかったからな。どの道、聞くだけ無駄だぜ。うちの爺ちゃんは酔わない限り余計なことは喋らないからな。そういえば、友達の家にはそれ以降遊びに行くことはなかったなぁ」

「……」

 剣は黙り込み、俺を見上げていた。

「何だ、どうかしたのか」

「いえ、何も……」

 ともかく、その後は一緒に初詣をしたわけなのだが……お隣にいる剣が念仏でも唱えているかのような願い事を挙げていたのには驚いた。あれって口に出して言うものなのだろうか……


寝不足気味の雨月です。いや、眠い眠い。とりあえず、今後の予定をぱぱっと言っておきましょう。剣中心の話で三学期は進んでいきます。勿論、零一が今後どうなっていくのかも三学期で決着がつきます。デルタホースにのせられるのか、ロープで縛るのかは佳奈次第です……じゃないですけどね。そういえばこの前獄潰しシリーズの新しいのを書きました。いや、以前から考えていたことではあるんですけどね。思った以上に反応薄くて凹みました。まぁ、凹もうが凸ろうが関係ないのですがね……とりあえず、ハッピーエンドを書かないといけないことを忘れていました。反省。四月八日木曜、二十一時二十五分雨月。

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