強盗
想像してみてほしい。
もし自分が働いている時に強盗が襲撃してきたら、と。
拳銃を向けられた。
頭が真っ白になった。
昔からそれなりに喧嘩もしてきたし、腕には自信があるつもりだった。
強盗が来た時に返り討ちにして、店の英雄になるという妄想というか、シミュレーションを何度も脳内でやった。
でも、動くことが出来なかった。
命乞いをするしか無かった。
涙はすぐに出てきた。
必死に「お願いします! 殺さないで!」と繰り返した。そうする他なかった。
無様だったと思う。なりふり構わず命乞いしたから。鼻水も出ていたかもしれない。
死にたくない、というのが1番に浮かんだ。
拳銃なんて避けられるはずがないので、相手が引き金を引けば必ず殺されると分かっていた。
本当に恐ろしかった。自分の生死がこの覆面の男に懸かっていると思うと正気じゃいられなかった。
だってこの男とは会ったばかりで、どんな性格なのか、どんなことで喜ぶのか、どんなもので釣れるのかも何ひとつ分からない。
そんな相手が銃を手にしているんだ。怖くないわけがないだろ?
結局俺は殺された。
俺との結婚を来月に控えた婚約者を残して、ひとつなぎの大秘宝の正体を知ることも出来ず、漏れそうだった小便も出せずに、俺は死んだ。
俺にはなんの落ち度もなかった。
俺は何も悪くなかった。
なのに理不尽に殺された。
あの時が生涯で最も恐怖した瞬間だった。
結局人というのは、自分の生死に関わることが1番怖いんだ。俺はそれを身をもって知った。
なぁ、これを読んでる君。そう、君だ。こんな可哀想な俺にひとつ答えを恵んでくれないか?
ああ、聞きたいことがあるんだ。ひとつだけ、どうしても聞きたいことがあるんだ。
答えてくれるか、ありがとな。
じゃあ聞くぜ。
⋯⋯この話、どうやったらギャグに持っていけると思う?
え? 俺? 幽霊だけど? なに?