怪談師・六勝喜太郎②
※必ず先に第4部分『怪談師・六勝喜太郎①』をお読みくだちゃい。
みなさんこんにちは、六勝 喜太郎と申します。
今日はみなさんにある男性のお話をしたいと思いましてね、参上した次第でございます。
これも確か半年ほど前のこと。
実は私、女性だった時期がありましてね、その週はずっと女性だったんですけど、まぁそれはそれは美人だったんですよ。
美人はいいですよ。何をやっても様になるし、周りからはチヤホヤされるし、チラホラ雪も降ってくるし、ムキホヤ買ってもらえるし。
でもね、いいことばかりってワケでもないんです。
その時私はひとり暮らしだったんですけどね、ふと思ったんです。「トイレットペーパーの減りが早い気がするな」って。
最初の方は自分がけっこう使ってたのかなって思ってたんですけど、気にしだしてからすぐに確信しました。
この家に私以外の人間がいる、って。
思い返してみればおかしなことは他にもあったんです。
仕事の帰り道で視線を感じたり、鍵を閉め忘れたとは思えない時に家の鍵が開いていたり、家におっさんがいたり。
これって、ストーカーですよね。
私怖くなっちゃって、すぐに警察に行ったんです。
「実害は?」
「トイレットペーパーが減ってました」
「そんだけ?」
「トイレットペーパーを使ってるってことは、おそらく水も流しているので水道代もです」
「それだけじゃちょっと難しいなぁ⋯⋯犯人の顔って分かる?」
「おっさんでした」
「おっさんなんてこの世にろくまんといるからねぇ」
「なんというかこう、顔があって、体があって、服は着てなくて⋯⋯」
「ごめんね、もうちょっと情報集めてからまた相談しに来てくれるかな」
って感じで結局動いてくれなくて、とりあえず今はストーカーの人に水道代を半分負担してもらってます。
でもやっぱり家に自分以外の誰かがいるっていうのが気持ち悪くて、もう1回相談したんです。
「またあなた? 進展は?」
「あいつ、お風呂にも入ってるみたいなんです」
「そうなの? じゃあガス代も請求しとく?」
「もちろんするんですけど、それよりも早く追い出したいです」
「顔はどう? あれから見た?」
「それが、見れたのは結局あの1回だけで⋯⋯その記憶もどんどん薄れていっていて、今ではなんとなくしか思い出せません。ピッコロ大魔王みたいな感じだった気がします」
「緑なんだ」
「うち1畳1間の1Lなんで、ストーカーがいると暑いんですよね。なので絶対に夏までには追い出したいんです」
「監視カメラ設置してみるのはどう?」
「家狭いって言いましたよね? それでそんなお金あると思います?」
「そっか、ないよね。ごめん」
「ありますよ。今日買って帰りますね。助言ありがとうございます」
「なんなのお前、怖」
って感じでやっぱり犯人の顔が分からないと動けないらしく、自分で対処することになりました。
帰りにコンビニで買った監視カメラを家中に設置して、その日は寝ました。
朝起きて見てみたらビックリしました。写ってたおっさんが全然緑色じゃなくて、真っピンクだったんです。自分の記憶力が心配になりました。
おっさんは私が寝ている間にお風呂に入っていました。
そして、お風呂上がりに冷蔵庫からキンキンに冷えたスーパードライを取り出して、ぐびぐびと飲み始めました。
私はムカつきました。
隣にストロングゼロと知らんメーカーのやっすいハイボールがあったはずなのに、1番高いスーパードライを飲むなんて許せません。
次の日私は毒を買ってきて、スーパードライに仕込みました。何も知らないおっさんはまたお風呂上がりに冷蔵庫を開けました。
銀色に光る缶を取り出し、飲み口を開けます。
そしてついに、口をつけました。
その瞬間、私の身体は軽くなり、なくなったはずの髪の毛がどこからか頭に戻ってきて、母も生き返り、人形をくれた女性と、妻の不倫相手が死にました。
やっぱり神様は正しいものの味方なんだなと、しみじみ思いましたね。
さて、今日のお話はここまでです。またお会いしましょう。それではごきげんよう。




