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悪役令嬢は全能ですっ! ~前世は女傭兵!? 四季咲きのミア・ローズ、最強の領地を目指して~   作者: 葉月双
六章

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1話 絶望した少年


 ローズ公国首都ロージア、大公城の会議室。

 各大臣や長官たちが集まっている。

 コホン、と私こと大公のミア・ローズが咳払い。

 みんなの視線が私に集中する。

 口の字みたいにテーブルを並べていて、入り口のすぐ側が私の席。

 私の右隣に小公爵であり私の義妹のローレッタ、左隣に宰相のスヴェン。

 そしてローレッタの更に右に、遊びに来ていたノエルが座っている。


 ノエルは乙女ゲー『愛と革命のゆりかご』の攻略対象者で、すこぶるイケメン。

 ノエルの髪色はライムグリーンで、髪型はアシンメトリー。

 左より右の方が長い。

 出会った頃からずっと同じ髪型をキープしているので、お気に入りなのだろう。

 ノエルは9歳だけど、将来が本当に楽しみなイケメン。

 本当イケメン。

 ふへへ、私イケメンだーい好き。


「お姉様」ローレッタがツンとした声で言う。「会議中です」


 私は再び咳払い。


「今日、集まった理由はすでに述べた通り」


 私はもう用件を話している。

 あとは実践あるのみだ。

 テーブルの上には私が用意した刺身が並んでいる。

 一人に一皿、わさびと醤油も当然用意している。

 私は箸だけど、他の人たちにはフォークを用意した。

 なんて気遣いのできる大公なんだろうね、私は。


「本当に、生魚など食べても平気ですか?」


 そう言ったのは、農林水産大臣。

 私はローズ公国を食の大国にするという野望のために、今日の会議を準備した。


「もちろんだとも」私は大公スマイルを浮かべる。「まず私が食べるから、みんなはそれから食べたらいいよ」


 食べ方はすでに説明済み。

 私は早速、箸を持つ。


「いっただきまーす」とノリノリで言ってから、わさびを刺身に載せる。


 刺身を醤油に付け、そしてパクッと食べた。

 うーん、美味しい!!

 やっぱ刺身は最高だね!!

 私が食べたのを見て、ローレッタも刺身を食べる。

 ローレッタは事前に食べているので、特に抵抗はなさそう。


 次にスヴェン、ノエルも刺身を口にする。

 はっはー!

 これで大臣たちも食べざるを得ない。

 我が国のトップスリーとゲストのノエルが食べたのに、食べないという選択肢はない。

 大臣たちはおっかなビックリ、刺身を食す。

 そして。


「これはっ!!」

「美味いっ!」

「これが……刺身っ!?」


 評価は上々。

 ふふっ、我がローズ公国は海に面しているので、魚が沢山捕れる。

 私は数々の料理を広める予定だけど、まずは刺身から。

 すでに農業庁の長官にわさびの育成と大豆の育成を依頼している。

 どっちも近隣になかったので、私が【全能】で創造したものを育てている。


 更に料理庁には刺身のレシピを渡していた。

 まぁ、レシピって言えるのかは微妙だけども!

 刺身にできる魚の種類と、捌き方と食べ方を記しただけである。

 ちなみに、料理庁も農業庁も農林水産省の下部組織だね。


「さすがミアです!」ノエルが嬉しそうに言う。「こんな美味しいものを思い付くなんて! すごいです!」


 ふっふっふ。

 まぁ私が考えたわけではないけれど。

 褒められて悪い気はしないよねぇ!

 その後、会議は順調に進み、ローズ公国を食の大国にすることにみんな賛成してくれた。

 刺身を今後ピックアップし、広めていくことにも反対意見はなかった。

 まぁ、すでに根回しは済んでいて、今日は実食がメインだったけどね。


 とりあえず、なんだかんだで会議が終わったので、私は締めの挨拶をした。

 そうすると、大臣たちが次々に退室。

 私、ローレッタ、スヴェン、ノエルが最後まで残った。

 さて私たちも出ようか、と立ち上がった時。

 外務省の伝令係が走って来た。


「大公閣下、ハウザクト王国の神殿から司祭様と助祭様が到着しました」

「ほえ?」


 私はキョトーンと首を傾げた。


「ああ」スヴェンが手を叩く。「大公閣下、例の神殿を建設するか否かという話です」


「そういえば」ローレッタが頷く。「今日が期限でしたね。スッカリ忘れていました」


 私も!

 完全に!

 忘れていたぁ!

 なぜなら食の大国にする案が次から次に浮かぶから、忙しかったんだよね!

 しかも今日は午後から休むつもりだったんだよね!

 ノエルが遊びに来てるから!


「どうします?」ローレッタが立ち上がる。「電撃一発で追い返します?」


「神殿について」スヴェンも立ち上がる。「まったく議論していませんでしたな」


 優先順位が低かったからなぁ。

 仕方ないよねぇ。


「えっと、2人の考えは?」と私。


「あたしは却下です。神殿など不要です」

「私は建設に賛成ですな。消極的に、ですが。神聖連邦と無理に揉める必要もないでしょう」

「なるほど。参考にするよ」


 でも最終的には向こうの態度次第で決めよう。

 横暴で生意気だったら聖戦上等。


「それで? 司祭たちはどこ?」と私。

「はい、司祭様たちは外務省の客室でお待ちです」と伝令係。


「えっと、僕はどうすれば……?」


 ノエルがおっかなビックリ言った。

 ノエルはまだ椅子に座ったままだ。

 どうしよう?

 さすがに神殿との話し合いに参加させる理由は見当たらない。

 刺身に関しては、最初から一緒に食べさせるつもりだったから問題ないけど。

 この会議の来賓みたいなもん。


「あたしが一緒に屋敷まで戻ります」ローレッタが言う。「司祭たちのことはお姉様にお任せします」


「うん。その方向で行こう。スヴェンは同席するかい?」

「いえ、できれば仕事に戻りたいですな」

「オッケー。じゃあ私だけで話してくるよ。またあとでね」


 私は伝令係と一緒に、外務省の客室まで移動。

 各省庁は大公城の中にあるので、外に出る必要はない。

 そして。

 外務省の客室のソファに、司祭服を着た女性がふんぞり返っていた。

 足を組んでテーブルに乗せ、退屈そうに自分の髪の毛を弄っている。

 女性の髪色はラベンダー。


 髪型はロングのゆるふわパーマって感じ。

 ゆるふわな髪が巻いているのか天然なのかは不明。

 瞳の色も髪と同じくラベンダー。

 美人と言えばまぁ美人。

 私やローレッタ、クラリスなんかには劣る。

 いわゆる中の上的な?


 ギリ上の下?

 まぁどっちでもいいか。

 身体は細身だけど、おっぱいがばいんばいん。

 ばいん、ばいん。

 私は咄嗟に顔を埋めたくなった。

 けれどもちろん、そんなことはしない。


 ちなみに、この女性とは初対面だ。

 女性の隣に座っている助祭のお兄さんは、前にも会った。

 極めて普通のお兄さんで、特筆すべき点はない。

 ユグドラシル様を冒涜するのかっ! って怒って帰ったのがこのお兄さん。

 で。


 女性の斜め後ろに立っている少年が非常に気になる。

 服装は普通の平民っぽい感じで、年齢は13歳ぐらい?

 髪の色はサーモンピンクで、短く切り揃えている。

 顔はそこそこいい。

 でも目が死んでいる。

 まるで死んだ魚だ。

 私はこういう目を知っている。

 前世、紛争地帯で見たことがある。

 夢も希望もなく、世界に絶望した者の目。


「何よ?」


 司祭服の女性が私を見ながら言った。


「あ、ごめん。ローズ公国大公のミア・ローズだよ」


 言いながら、私はソファに腰掛ける。

 司祭服の女性の対面だ。

 で、私の背後には外務省の職員が2人立っている。

 話し合いの結果を見守るためである。


「……ガチィ?」司祭服の女性が表情を歪める。「子供が大公って聞いてたけど、本当に子供なのね。宰相の傀儡ってガチ?」


「無礼な!」外務省の職員が怒って言う。「大公閣下に名乗りもせず、なんという言い草!」


 私は右手を挙げて、職員に「問題ない」と伝える。


「ああ失礼」司祭服の女性がヘラヘラと言う。「わたしはオードリー・マクラグレン。ハウザクト王国、王都神殿の神殿主よ。ちなみに傀儡じゃないのよ」


 酷く嫌みな言い方だった。

 なんて性格の悪い奴!

 悪役令嬢になれるんじゃね!?


「私も傀儡じゃないがね。それで何の用?」

「はぁ? 神殿建てるかどうかの返事でしょ? お子様は記憶力が低いのかしらん? 大司祭様から今日必ず返事を貰うよう言われてるから、さっさと書類にサインして」


 オードリーが言うと、隣に座っている助祭が鞄から書類を出してテーブルに置いた。


「その前に」私は死んだ目の少年に視線を向ける。「その子は?」


「わたしの召使いだけど? なに? 気に入ったの? ガチ? 貸そうか? 上手よ?」


 オードリーはニヤニヤと言った。

 上手の意味を、私が理解できないとでも?

 性的虐待があることは明らかだった。

 このクソ女、殺そうかな?

  

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