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第18話 メイside

セラフィーナが断罪された事件後から一週間以上が経過していた。

王宮のとある一室で…、一人の黒髪の少女が上機嫌な様子で笑っていた。


「フフッ…!邪魔な悪役令嬢はざまあしたし、これで逆ハーエンドはクリアできたわ!」


黒髪の少女…、メイは高らかに笑った。

メイは普通の女子高生だった。その日もいつものように下校していると、急に誰かに呼ばれた声がしたのだ。

何だろうと思った時、急に足元の感覚がなくなり、そのまま真っ逆さまに落ちていったのだ。

そして、気が付いたら、異世界にいた。そして、目の前に現れた美形の男達の姿を見て、衝撃を受けた。知っている。あたしはこの世界を知っている。


見たことのある光景、見たことのあるタイプの違うイケメン達。ブワッと波のように押し寄せるかのように記憶が甦る。そして、思い出した。ここは、乙女ゲームの世界であると。どうして、今まで気付かなかったのだろう。

現実世界にいる時は全く気付きもしなかった。メイという名前も黒髪黒目のお人形のようなこの可愛い顔もあのゲームのヒロインと瓜二つだというのに。

初めは夢かとも思ったがこれは現実であると気が付き、歓喜した。

ここでは、私がヒロインだ。異世界に聖女として召喚されたヒロインが王子様やその側近達と恋をするという王道ストーリー。


ゲームでは王宮で召喚の儀式が成功してヒロインが異世界に現れるという話だったのに何故か自分が立っていたのは王宮ではなく、教会だった。でも、王族や貴族も参加する大事な儀式の途中だったからか攻略対象者達も全員いたし、顔ぶれも出会いのシチュエーションも変わっていない。場所と状況が違うだけ。違和感を抱いたが攻略対象達を前にしたら、すぐにそんな事は忘れてしまった。

メイは確信した。私はヒロインでこの世界のお姫様だ。この世界で私は王子様やその他のイケメン達に愛されて一生幸せに贅沢して暮らせるのだ。

王子様達もその側近達も皆、美形でそれぞれタイプの違う魅力的なキャラクターだし、すぐに私に夢中になってくれた。元いた世界に未練もなく、帰りたいとすら思わなかった。あんな退屈な日常に戻る位なら、この世界でイケメンの王子達に溺愛されて一生贅沢して楽に過ごす方がよっぽどいい。ここで自分はヒロインとして幸せになるんだ。そんな薔薇色の未来に胸を弾ませた。


やっぱり、ここは王子と結婚するのが王道だろう。そうすれば、私は将来の王妃様だ。王妃になれば、可愛いドレスにアクセサエリーに囲まれ、美味しい物をたくさん食べて、一生贅沢ができるのだ。勿論、王妃になっても他のイケメン達を手放したりはしない。私は皆に愛されるヒロインなんだから。

けれど、その為には邪魔者を排除しないといけない。それが王太子の婚約者であり、悪役令嬢セラフィーナだった。悪役令嬢とのイベントは攻略対象達の好感度を上げる為に重要なイベントだ。悪役令嬢がヒロインに嫉妬し、嫌がらせをすることで王太子や攻略対象者との仲は深まるのだから。

それに、悪役令嬢のイベントをこなさないと逆ハーエンドは迎えられない。ずっとヒロインに嫌がらせをした悪役令嬢を断罪することで逆ハーエンドに突入するのだから。

だから、何が何でも悪役令嬢には破滅してもらわないと。

そう思って、悪役令嬢のイベントを心待ちにしていた。なのに、あの悪役令嬢は幾ら待っても姿を現さないし、何も仕掛けてこない。


おかしいのは何もそれだけじゃない。ゲームの序盤ではヒロインは聖女として認められていた。ヒロインは聖女として召喚され、莫大な魔力と光の魔力持ちであることからそのまま聖女として迎えられた。

あの悪役令嬢はこの国の聖女候補という立場で聖女ではなかったはずだ。それなのに、あの悪役令嬢が聖女であるという。

どういう事!?それを知った時、メイは目の前が怒りに染まった。何よ、それ…。ヒロインである自分を差し置いて生意気な…!

そんな女より、聖女にはヒロインである自分がふさわしい。ヒロインではない女が聖女だなんて有り得ない!

聖女にふさわしいのはヒロインの私しかいないのに…!


メイは確信した。あの女はきっと、転生者だ。そうだ。そうに違いない。そうでなければ、この展開はおかしい。

きっと、あの悪役令嬢は破滅エンドを回避するためにヒロインの座を奪おうとしているんだわ。

そうはさせないわ!ヒロインの座はあたしの物よ!あたしの幸せの邪魔をするなんて許さない!

この世界のお姫様はあたし!あたしが幸せになる世界なの!悪役令嬢何てお呼びじゃないのよ!

悪役令嬢は悪役令嬢らしくざまあされればいいのに…!それなのに…、あたしに取って代わろうとするなんてそんな事、絶対に許さない…!

いいわ。そっちがその気なら、あたしも徹底的にやってやる!


悪役令嬢が何もしてこないのならこっちが無理矢理イベントを起こせばいい。だから、メイは自作自演した。

王太子達はメイの言葉を疑うことなく、信じてくれたし、セラフィーナの仕業だと言えば簡単に騙されてくれた。

セラフィーナが王宮に来た時も階段から落ちて、駆けつけた王子達に青い髪の女の後姿を見たと言えば彼らはすぐに犯人はセラフィーナに違いないと怒り狂っていた。そして、あの悪役令嬢は断罪された。あの女の顔は見物だった。王太子達から突き付けられる罪状に困惑した表情を浮かべ、必死に自分は知らない。やっていないと身の潔白を主張していた。なのに、証人まで呼ばれ、セラフィーナがやったと言われ、ショックを受けたように言葉を失っていた。顔を青褪め、絶望した表情を浮かべる悪役令嬢を見るのはひどく気分が良かった。心の中でざまあみろと言い、笑い出しそうになる口元を隠すのが大変だった。


「あの悪役令嬢が転生者だったのは計算外だったけど…、まあ、無事に断罪イベントは終わったんだし、結果オーライよね!」


ルンルンとメイは鼻歌を歌いながら、砂糖菓子を摘んだ。


「悪役令嬢は追放したし、聖女の地位も王太子の婚約者の座もあたしの物!フフッ…、ああ!最高の気分だわ!」


そもそも、あの悪役令嬢は初めて見た時から気に食わなかったのだ。

メイはセラフィーナの姿を思い出し、イライラした。


「大体、何よ!悪役令嬢の癖にあのスペックの高さは!本当、ムカつく!」


悪役令嬢だから仕方ないとはいえ、無駄に顔はいいし、手足や腰は細いのに胸は大きいなんて、見ているだけでムカついた。だから、あの悪役令嬢は男好きの淫乱女だと噂を流してやった。


「何で男っていうのはどいつもこいつも巨乳が好きなのかしら!あんな牛みたいな胸のどこがいいのよ!」


前いた世界もそうだったがこの世界の男達も大概、胸の大きい女が好きだ。

実際、あの悪役令嬢を見て、頬を赤くしたり、喉を鳴らしている男達もいた程だ。

ムカつく。あんなのただの脂肪の塊じゃない!

だから、セラフィーナが黒の森に追放された時はこっそりと兵士達に金を渡してお願いしたのだ。セラフィーナを犯すようにと。悪役令嬢にはモブに辱められるのがお似合いだ。


「あの女はボロボロに壊れただろうし、生きていても廃人になっている筈。フフッ…、いい気味だわ。っていうか、死んでいるかもしれないけど。」


そう言って、メイは楽しそうに笑った。

あの女がどうなったのかは王子達が調べてくれているだろうから、あたしはここで気長に待てばいい。どちらにしろ、セラフィーナの末路は悲惨なものだろう。

ああ。楽しみだ。あの女がどうなったのか想像するだけで笑いがこみ上げる。歪んだ笑みを浮かべるメイの姿を窓の外から見つめていた鴉がバサッと翼を広げて飛び立った。


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