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世界に一つの魔宝石を ~ハンドメイド作家と異世界の魔法使い~  作者: 采火
ドッグ・ドリームブレイク

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ハンドメイド作家と恋する親友

 つやつやしてて、きらきらしてて、彩り豊かな宝石たちは、磨けばまるで鏡のようにファンタジーな景色を映し出す。


 世間は絶賛、クリスマスムード。街の街灯にはきらきらしたイルミネーションが飾られてとってもにぎやかになっております。


 だけど私の心はちょっとブルー。もう少ししたらクリスマスがきて冬休みもくるっていうのに、その前には最難関、後期中間考査が。範囲が広くて大変なんだよね。


「うあー、さぶい! 麻理子、早く帰ろ!」

「う、うん。ちょっと待ってね」


 放課後のショートホームルームが終わると、先生が教室の暖房をパチンと切って出ていってしまう。あ〜、もう少しぬくぬくしていたかったのに……。


 私は親友の席に駆け寄ると、帰ろう帰ろうと急かす。

 でも麻理子の動作はちょっと緩慢で。

 うーん、やっぱり麻理子の元気がちょっとないなぁ。


 この間、麻理子が出品していた秋のコンクールの結果発表があった。結果は佳作。十分だと思うけど、先生たちが残念がっていた。


 あっちのドレスを出していたら。

 もっと時間をかけていたら。

 金賞や銀賞をもらえたかもしれないのに、って。


 そういう声が麻理子の心に棘のように刺さっているようで、ずっと落ちこんでいる。

 しかもそれに拍車をかけるように。


「今日もジロー、来なかったね」

「そう、だね……お家の事情だって言っていたから、仕方ないよ」


 月曜からずっと欠席しているジロー・山田・バルテレミー。


 ちょっと訳アリな麻理子の彼氏は、家の事情だとか言って、溺愛している恋人を放っておいてる。それがもうギルティだよね。いつもあんなにベタベタいちゃいちゃしてるなら、肝心なときに麻理子の支えになってあげるべきだと思わない?


「連絡、来てないの?」

「ジローのお家、電波が届かないって聞いてるから」


 あー、そうですねそうですね!

 ジローの実家は異世界にあるもんね。しかたないよね。電波なんて届かない山ん中にあるご実家ですもんねー!


「それでもさー。こんな可愛い麻理子をほっぽいてるのって彼氏としてどうなのさ。テストが終わればすぐ冬休みも始まっちゃうし」

「そうだねぇ」


 麻理子は相槌を打ってくれるけど、やっぱり元気がないんだよねぇ。


 コートに袖を通す麻理子を見ながら、私はマフラーに顔を埋める。なにか、なにか麻理子を元気づけられること、ないかなぁ。


 うーん、と考えながら、あっと思いつく。


「ねねね、麻理子。今日ちょっと手芸屋さん寄ってもいい?」


 手芸屋さんなら麻理子も一緒に行くかなー、とお誘い。この時期はクリスマスセールもあるし、クリスマス限定のアイテムとかも売ってるだから、お店は見るだけで楽しいんだよね。


 どう? どう? と麻理子にお伺いを立てると、こてんと首をかしげられる。


「珍しいね。最近は智華ちゃん、コンドラチイさんから材料譲って貰ってたのに」

「あれはバイト用! 部活用のが欲しくてさっ」


 私も高校生。自分のお小遣いは自分で稼ぎたいお年頃!

 だけどやっているアルバイトがちょぉっと特殊で……なんと、魔法のアクセサリーを作るハンドメイド作家なのです。ファンタジーすぎて、麻理子にはちゃんと話してないけど!


 なのでアルバイト先であるコンドラチイさんこと、通称ラチイさんからもらう材料っていうのはちょぉっと特殊すぎて、普段は使えないからね。嫌でしょ、普通に身に着けたら燃えたり水が出たり目が回ったりするアクセサリーなんて。


 そういうわけで材料はもったいないし、試作とかお遊びとか手慰みとか部活用とかは普通に買った材料が必要なんだけど。


 麻理子はふるふると首を振る。


「そっか……でも、ごめんね。今はあんまり手芸屋さん、行きたくなくて」

「あ〜……」


 私は馬鹿! やらかした! 手芸関係で傷心中の麻理子に一番誘っちゃいけないところ誘ったね!?


 私はしょんぼりと肩を落とす。

 んもー、すごい自己嫌悪。考えなしー。


「コンクール、残念だったね」

「ううん。もともと出たかったわけじゃないから。作ってたドレスも、私の腕が未熟だったからだよ」


 そんなことない。

 麻理子が一生懸命作ってたのは知ってるもん。


 大人たちが好き勝手に言って、勝手に評価して……麻理子のためだとかいって、本当の気持ちなんて気づきやしない。


 麻理子は誰かと比べるようなドレスを作りたいんじゃない。自分にとって、誰かにとって、笑顔になれるようなドレスを作りたかっただけなのに。


 大人たちは評価ばかりで、麻理子の気持ちを見てくれない。


「私は麻理子のドレス、好きだよ」

「ありがとう。私も智華ちゃんのアクセサリー好き」


 ふんわりと笑ってくれる麻理子。

 あー、もう可愛い。こんな健気なこと言ってくれるの嬉しい。ジローのやつじゃなくても麻理子に惚れちゃう。親友で良かった!


 でもそんな麻理子がずっと落ちこんでるのは悲しい。

 何か元気づけられるようなこと、ないかなぁ。


 麻理子と一緒に教室を出る。

 ざわざわと放課後の生徒たちの合間をぬって移動していく。

 下駄箱まで来て、ハッと思いついた。


「そうだ、麻理子。クリスマスパーティしよう!」


 そうだよ。今は絶賛クリスマスムードじゃないですかー!


 それならね。やるっきゃないでしょう、クリスマスパーティ。やりたいって思ったら、なんだかわくわくしてきたー!


「クリスマスパーティ?」

「そうそう! 絶対楽しいよ!」


 中間考査が終われば冬休みだし。テスト期間の鬱憤もいっしょに晴らせるし。


 麻理子はちょっと考える素振りを見せると、うん、と頷いてくれて。

 やったー! 決まりで!


 靴を履き替えて校門まで歩きながら、麻理子とクリスマスパーティについて話し合う。


「どこでする?」

「うちでやろうよ。お母さんにも言っておくし、ラチイさんも呼んであげたいし!」


 ラチイさん、クリスマスパーティしたことないと思うんだよね〜。誘ったら来てくれないかな?


 私がラチイさんを誘いたいように、麻理子にも当然誘いたい人がいて。


「ジローも来てくれるかな……」


 麻理子がぽつりとつぶやく。

 家の事情で欠席中のジロー。さすがにテスト期間には戻って来るよね?


「あの顔だけ男を呼ぶのはちょっと癪だけど……麻理子の彼氏だし? 引きずってでも呼んであげるし!」

「智華ちゃんったら。喧嘩はしないでね?」

「麻理子を寂しがらせるなんて言語道断パンチはいい?」

「だめですー」


 麻理子がふふって笑いながら止めてくる。ざんねん。麻理子の代わりに一発くらいお見舞いしたかったんだけどな。


「クリスマスパーティ、何しようかな〜」

「ケーキはどうする? 手作りする?」


 麻理子の名案に、ぴこんと脳内で電球が光る。

 クリスマスだし……ショートケーキにチョコケーキ、ブッシュ・ド・ノエルも捨てがたい。フルーツいっぱい載せるのも好きだし……やだ、わくわくしちゃう!


「いいね! 麻理子と一緒にケーキを作るの楽しそう〜! あ、プレゼント交換会もしなくちゃ!」

「智華ちゃんは何が欲しい?」

「それ言っちゃったら面白くないでしょ」

「そうだね」


 クリスマスって言ったらプレゼントだもんね。

 せっかくだからサンタさんの帽子とかコスチュームとか買って見るのも面白そう。どうも智華サンタです! みたいな。


 テスト前の憂鬱さが吹き飛んでいく。

 クリスマス、楽しみだなー。


お読みくださり、ありがとうございます。

大変お待たせしました、新章スタートです。

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