第6話
6月突入!
今、何て?
俺は慌ててその女子の顔を見る。別に疚しい事など何もないので、慌てる必要はないのだが。
とは言っても今、この女子は『憑いてる』と確かに言った。だとしたら霊感が強いらしい。そして、初対面の相手にそれを指摘してくるくらいには、コミュニケーションが上手いらしい。
「あの……」
「…………」
こちらの発言を遮り、彼女は髪をかき上げた。その仕草はやけに演技じみていて、その辺の人がやると、滑稽なものに思えそうだが、その美貌はそんなことを欠片も感じさせなかった。
「お、おい。メッチャいい女じゃねえか!」
オッサン、テンション上がりすぎ。いや、俺も少しばかり上がっているけど。……いや、もうちょい上がっているけど。どうやら、悪いことばかりではないようだ。
すると彼女は、何かに気づいたようにあとずさった。
「ああ……違うのよ?」
「な、何が?」
「別にあなたが私のような美少女と話せてツイてるわね、という意味で言ったわけではないの」
「……は?」
思いもよらぬ発言に固まってしまう。急に沈黙が訪れ、冷たい風が吹き抜けたような気がした。
しかし、彼女はこちらの冷めた視線などお構いなしに、淡々とした調子で話を続けた。
「もちろん、あなたの下半身にアレがついてるという意味でもないわ」
「…………」
「どうかした?」
はあ……。
思わず溜息を吐いてしまう。
幽霊の次は頭のおかしな女か。
見た目がいいだけまだマシだが。
やはり今日はどう転んでも厄日のようだ。俺自身をお祓いしてもらった方がいいのかもしれない。
「じゃあ、俺は先を急ぐので……」
「待って。話はこれからよ」
「いや、危ない人の話は聞いちゃいけないってお母さんに教わってるもので」
「危ない人?自分のことをそこまで卑下するものではないわ」
「ツッコまない。ツッコまないぞ、俺は。じゃあ、行くからな」
「待ちなさい。逆立ちなんかしてどこへ行くの?」
「してねーよ!文字だけならわからないとおもってんじゃねーよ!何なんだよ一体」
「落ち着きなさい。少し……うざい。いえ……馬鹿みたいに見えるわ」
「今の言い直す意味があったのか!?」
「うるさいわね。潰すわよ」
「い、いきなり物騒だな。つーか、何か用なの?」
「ええ。まあ、本当に用があるのは……」
彼女は、足元にいたオッサン(いつの間に移動していたんだ)を…………思いきり踏みつけた。
「こっちの幽霊さんの方ね」
「いててててっ!?」
彼女の足元では、オッサンがじたばた藻掻いていた。あれ?それじゃあ……
「じゃあ、後は任せた!」
「待ちなさい」
「おい、逃げんのかよ兄弟!」
何だよ。このまま問題解決だと思ったのに。
あと、兄弟じゃねえよ。
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