第58話
「…………」
「おい!……あれ?」
「…………」
「おわっ!俺……女になってやがる!!」
「…………」
「見ろよ、これ!このデカいオッパイ!お前の姉ちゃんより凄えぞ!」
「…………」
「与?おい……」
*******
「それで、次は女体化したと……」
「面白い変化ね……」
「…………」
「「…………」」
放課後の部室。
本来ならば、すぐにでも練習に入るべきなのだろうが、今はこの現状を二人に話したかった。
沈黙が訪れた部室に、グラウンドから野球部やサッカー部のかけ声がやけに大きく聞こえてくる。
ちなみにオッサ……オッサンはドヤ顔で浮いている。やはりまだ女性と見るには抵抗がある。
二人はしばし瞑目し、部室内を緊張で満たした後、何も言わないまま立ち上がった。
「さて、練習を始めるか」
「そうね」
「おいいぃぃぃぃぃっ!?」
「どうした、与」
「どうしたじゃないですよ!どうにもできないのはわかってますけど、いよいよコイツといるのが嫌になったんですけど!」
「さすがにこのオッパイは童貞には……」
「シャラップ!腐れビッチ!」
「まあ、慣れる事だな。それに慣れれば天国かも……」
「ならないですよ!だってさっきまでオッサンだった奴ですよ!?むしろ変なもんが目について、気まずいだけですよ!」
俺のやり場のない叫びに対し、先輩は「ふぅ……」と溜息を吐き、肩に手を置いてきた。そして、窓から射し込む夕陽の赤い光で眼鏡の縁を輝かせながら、厳かに告げた。
「与、それはな…………恋だ」
「違うわ!!」
「まあ、今は練習に集中しよう」
「…………」
とりあえずセッションが始まったが、予定通りに俺がもたつき、初めてのセッションらしくグダグダ感満載の、それでいて妙に心地よい爆音まみれの時間となった。
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